「昨日はどうも」

「そんな嬉しそうにされても困るね」

「もし今私の顔が嬉しそうにみえるのならリドルの目はイカレてるよ」

アズミは顔をしかめてリドルを見る。しかし、リドルは小声ながら楽しそうな声色で笑い返すだけだ。

ちなみに現在はDADAの授業中である。熱心に決闘について語ってくれる教授には申し訳ないが、今は決闘の礼儀作法より大切なことがある。

アズミは何事もなかったかのように隣に座ってきたリドルを横目に睨んだ。今にも吹き出しそうな顔をしているリドルを、失神呪文で思い切り吹っ飛ばしてしまいたい衝動に駆られる。朝からあからさまなほどにずっとリドルが話しかけてくることも、頭に来る原因の一つだった。

昨日の名前呼びと笑顔のことが学校中に知れ渡るのには半日もかからなかった。

廊下を歩けば今まで優しげに笑ってくれた女子生徒の視線が刺さる。ずっと行動を共にしていた頃は教育係として一緒にいると知られていたために何もなかったが、休暇前に別行動をし始めたためリドルが教育係を終えたと彼女たちに判断されていたらしい。これまでは教育係と編入生という関係であったため一緒にいても気にしていなかったようだが、休暇をあけてまた共に過ごしていることが気に食わないようだ。

それに加えて昨日、今日のことだ。これはもうしょうがないとしか言えない。

そしてあからさまに変わった態度や、ずっとうまく生きてきたぶん向けられなかった敵意や嫌悪などの黒い感情がアズミにはなかなかこたえた。

「面倒なことは全部私に丸投げしてお気楽気分ってわけね、いいご身分なことで」

恨みがましく刺々しい口調でそう吐き捨てると、リドルは楽しそうに笑った。

「まさか、アズミには感謝してもしきれないよ。クリスマス休暇明けの、1年の中で最も多く溜まる僕の苦労を半分もらってくれた君にはね」

「やっぱり話題を私に向けて自分は楽する作戦だったわけね」

「まあね。」

あっさりと肯定の意を示して笑う様子に思わずアズミはローブの中の杖に手を伸ばす。その瞬間、壇上で話をしていた教授がこちらを見た。

「そうだ、Mr.リドル。実践のお手本もかねてここで誰かと決闘をしてみてくれないか?」

勿論リドルはこう答える。

「わかりました。皆の手本になれるかは心配ですが、頑張ります」

その言葉に教室内が様々な言葉で溢れかえる。リドルの魔法が間近でじっくり見れる!とか、相手は誰だとか、まあその他似通ったもの。

しかしアズミは眉がぴくぴくしそうになるのを堪えて何も言わずに座るだけだ。何故ならば、この先の展開がわかってしまったからである。

DADA教授は待ってましたと言わんばかりの顔で、教卓前の壇上までやってきたリドルの肩を叩く。

「さて、じゃあ相手だが…」

「すみません教授。よければ僕が指名してもいいですか?」

「え、ああ…いいけれど」

「ありがとうございます」

リドルがすっと顔をあげる。

「アズミ、お願いしてもいいかい?」

予想通りの問に教室中の視線が集まるのを感じながらも、アズミは笑顔ではい、と答えることしかできなかった。

背中にひしひしと伝わる黒いものを無視して壇上にのぼる。先にいたリドルはまた笑った。

「それじゃあ、始めてくれ!」

教授が出したその合図で、互いに杖を出して射抜くように視線を向ける。休暇中に何度も繰り返した光景。ぎゅっと杖を握った。

礼をして歩き、振り返る。そうして、全く同じタイミングで紅の光を放った。

「「エクスペリアームス!」」

昨日の仕返しにぼこぼこにしてやる、と心に誓ってアズミは攻撃呪文を放ち続けた。それでも力及ばず結果負けてしまったわけだが、スリザリンには10点が与えられた。

汗をうっすらかきながら楽しそうに笑うリドルのおかげでまた女子の視線が厳しくなったことは言うまでもない。

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