04.Form of love.

「当真っ、」

そう言いながら手招きされて、腕を掴まれ連れてこられたのは屋上手前の踊り場だった。

屋上へ入るための扉には立入禁止の紙が貼られている。

屋上へは入っていないので、セーフだろう。もう授業はとっくに始まっているので、出欠はアウトだろうが。

「…おい、名前。どうした…」

「…すう、…すう、」

隣に座っていた名前はいつの間にか寝ていて、俺の方に倒れ込んできた。

「…また変な男引っ掛けたのかよ。」

名前の左目には眼帯がされている。中二病は卒業しているはずなので、怪我でもしたのだろう。珍しくつけているマスクもきっと何かを隠すためだろう。

気になってマスクの下を覗いて見て、後悔した。


高二で転入して来た名前は、見た目が綺麗で生徒の目を惹いていた。

男でも女でも来る者拒まず去るもの追わずと言った感じで、広く浅く友好関係を築いていた。


そんな名前とここまで仲良くなったのは、高二の冬。

防衛任務の帰りに警戒区域で会ったのがきっかけだった。

フラフラしながら歩いていた名前は、学校で見るのとは印象が全く違っていた。

顔に酷い怪我をしていのも印象が違く見えた原因のひとつだろうが、どこを見ているのか分からないような虚ろな表情の方が大きい。


目が合って、俺が同じ学校の奴だと気づいたのか、その表情は一瞬で俺の知っている顔に変わった。

「こんな時間に何してんの?」

「…それを言うならそっちもじゃない?」

何を考えているのか全く読めない顔で答えになってない言葉に少しだけ意地悪をしたくなった。

「俺はボーダーの防衛任務帰り。苗字さんは?優等生だと思ってたけど、警戒区域で非行でもしてた?」

「…ふふ、君ボーダーだったの、意外ね。私は、青姦してたの。」


皮肉のつもりで言った言葉はあながち間違っていなくて、むしろ予想よりも斜め上の回答に興味が湧いてしまった。

「っははは、何、みんな大好きな高嶺の花って感じなのに、遊びまくってんだな。」

「…何それ。高嶺の花とか冗談でしょ。」

「意外と毒舌なの?いいね、苗字さん。そっちのが自然で、仲良くなれそう。」


そう言った俺の顔をマジマジと見つめて、笑いながら私も。なんて言うから不覚にもときめいたのを今でも覚えている。

翌日マスクをつけている名前に声をかけたら、安心したような表情で青姦好きの暴力男の愚痴を聞かされて、軽口を言い合ったのだった。

やっていることは今と変わっていないのに、最近の名前はセフレと会う頻度が以前より多くなっている気がする。

「…ふふ、」

「っくりしたー、寝言かよ。」

実は起きていて、心配している俺を馬鹿にしたのかと思ってしまった。

艶のある綺麗な髪に手を伸ばし、指を通すと、どこか嬉しそうな寝顔に変わった気がした。

「程々にしとけよ…名前。」

そう呟いて俺も一眠りすることにした。

起きた時、また笑って名前と軽口を言い合うのだ。


自分の気持ちに蓋をして。