「腕が疲れる〜!」
精密検査の結果、私のトリオン量が多かったらしいので、私はボーダー隊員になる事になった。
一人猛反対していた忍田さんだったが、城戸司令がトリオン量が多い場合近界民に襲われる危険性がある事、そしてその場合に自分で身を守れた方が良いということを力説してくれたお陰で、忍田さんの弟子になるという条件付きで折れてくれた。
というか、そこまで話をされたのに条件付きで折れるのはちょっと、いやかなり大人気ない。
まあ、忍田さんが私の事を心配してくれているのだと、無理やり納得したが。
そんなこんなで、私は忍田さんに弟子入りした。それと同時に太刀川さんが兄弟子になった。
太刀川さんは、妹分が出来て嬉しいのか、名前で呼べよ〜と言ってくるが、規律があるから苗字で呼びなさい。と忍田さんストップが入った。
そして、稽古が始まって思った事。
「腕が疲れる〜!」
これである。元々腕力に自信があるわけでは無いので、竹刀を持たされて素振りを始めて五回。
もう疲れた。
「…トリオン体で訓練した方がいいと思うんですけどー、」
「…あのな、トリオン体になっても孤月は重さがあるブレードだから、ある程度重さのある物に慣れておかないとだろう?」
「忍田さん、俺が文句言った時と対応違すぎっ、名前に甘いんじゃないのー?」
隣で素振りをしていた太刀川さんが野次を飛ばすと、忍田さんに拳骨を貰っていた。
いてっ、と言っていたがケロッとしているので大して痛くないのだろう。
忍田さんの愛を感じるが、そんなのどうでもいいほどに腕が疲れる。
「…名前、もう少し頑張れ。継続すれば、絶対に強くなれるから。」
「…ん、はい。」
優しく頭を撫でられ、少しだけ流された感があったがまあ、頑張ることにする。
隣の太刀川さんは素振りを終えて忍田さんと手合わせをしていた。
いつか私も手合わせする日が来るのか…。
その前に眼鏡が届くといいけど。
先日作りに行って、まだ届かない眼鏡。
届いたら毎日活躍するのだろうな。とぼんやり考えながら素振りをする。
明日絶対筋肉痛だわ。
今日の稽古が終わって、忍田さんは会議がある為急いで去っていった。
「そう言えば、名前サイドエフェクトあるんだって?」
「そうですよ。たしか、えと、強化触覚?」
「なんだそれ。てか、稽古終わったから敬語じゃなくていいぞ。」
「…ん、医師が言うには、えと、空気中の動きが肌を通じて、敏感に反応出来るとか何とか、」
「…本当になんだそれ。」
理解出来ないでいる太刀川さんに苦笑いしか出来ないでいると、わかりやすい例えを思いついた。
「んとね、動物並の反応?が出来る。みたいな?」
「…おお、何となくわかった。だから、名前の事驚かそうと思っても、声かける前に振り向くんだな。」
なるほどと顎に手を当てわかった素振りを見せる。
そろそろ近づいて来るのはそういう意図があったのか。
「うん、だから近づいて来る人には気付くし、殺気とかも解るよ〜。」
「お、それ凄いな。今誰かこっち来てるか?」
面白そう!とワクワク顔で聞いてくるので、こちらまで楽しくなって、集中してみる。
「…うげ、迅が来てる。」
そう言った途端に、訓練室の扉が開いて、私の苦手な迅が現れた。
「ども〜!二人とも稽古頑張ってる?」
「おお!すげ、本当に迅だ!」
「もう稽古終わってるから、帰りなよ。」
「え、何、太刀川さんは驚いてるし、名前ちゃんは相変わらず邪険だし、どうゆうリアクションとればいいの?」
そんな事を言って近づいて来る迅を太刀川さんの後ろに隠れてガードする。
私が迅を警戒するのは、玉狛支部で出会い頭にセクハラされたからだ。
なんか後ろに回り込んできたな?と思ったら尻を撫でてきたのだ。許せん。
「いやいや、名前ちゃんもボーダー隊員になったんだから、俺ら市民のために戦う仲間じゃん。邪険にしないで。」
「仲間以前に女の敵だよ。」
私は心の底からそう吐き捨てた。