先日、正式入隊日が終わった。
「二宮さんより凄い人入ったってほんとー!?」
東さんと加古さんと三輪くんがいる所へと声をかける。もちろん二宮さんもいる。
「…喧嘩売ってんのか?」
「あはっ、機嫌悪ーい!って事はほんとだね!」
そう言って煽ると二宮さんのほっぺがぴくぴく痙攣している。わお、相当怒だ。
「…苗字、その、あまり歳上の人をからかうのはやめろ。」
「あはっ、三輪くんそれじゃ二宮くんがからかわれてるように見えたって言ってるようなものよ。」
「…秀次?」
「あ、いやっ、その、」
「まあ、まあ。名前、凄い新人なら今模擬戦ブースにいるから、行っておいで。」
私のせいで三輪くんが二宮さんに怒られそうになっていた所を東さんが宥めてくれた。さすが。
私に飛び火しなくて良かった。
「おい、苗字後で模擬戦付き合えよ。」
背後に蜂の巣にしてやる。という文字が見えそうな程、怒っているのがよく分かった。
「…あはっ、楽しみにしてまーす。」
「…苗字、明るくなりましたね。」
「ええ。初めてあった時は物凄く警戒してたものね。」
「ふっ、生意気になりやがって。」
「まあ、いい事だろ。」
模擬戦ブースに到着すると、そこそこ賑わっていた。
「あ、諏訪さーん!」
「お、苗字じゃねえか。どした?模擬戦でもするか?」
「いや、今日の目当ては諏訪さんじゃなくて、」
「なあにぃ?あ、もしかして出水か?」
生意気なやつ目、と頭を雑に撫でられたが、その途中で何かに気づいた様子だった。
「誰それ。」
「あれ、違ったか?こないだ入隊した二宮よりすげえ奴だよ。」
「それだ。二宮さんより凄い新人!その人どこに居るの〜?」
キョロキョロと辺りを見回して見るも、新人ばかりで誰が誰だかよく分からない。
すると、誰かが私の後ろで足を止めた。
振り返ってみると、やっぱり知らない人で、私が振り返ったのに驚いたのか少しびっくりしている。
「…誰?」
「おいおい、俺の後ろに隠れんなよ。それに、こいつだぞ。二宮よりすげえ新人。」
ふわふわしてそうな髪にぱっちり二重の三白眼。
歳上から好かれそうな顔だな…。
「え、誰ですか?諏訪さん、この眼鏡っ娘。」
「…そっちが先に名乗れよう、私の方が先輩だぞ。ボーダーの。」
諏訪さんの後ろからそう言うと、その少年はええー、と言いながら自己紹介を始めた。
「えと、出水公平です。この前入隊しました。中二です。よろしく?」
「…苗字名前です。中一です。よろしく、お願いします。」
「…悪ぃな、出水。こいつ人見知りなんだ。」
私が警戒しているせいで変な空気感の私達に絶妙なフォローを入れてくれる諏訪さん。
さすが歳上だ。
「全然。それより、えと、」
「好きなように呼んでください。私は出水くんって呼ぶんで。」
「…そうか、じゃ、苗字って呼ぶわ。で、俺に何か用?」
「……別に、模擬戦でもどうかなって思っただけです。」
「おい、苗字、そんなに警戒してないで普通に話せよ。出水は別に良い奴だぞ。」
私の警戒があまりに酷かったので諏訪さんが気を配ってくれる。
諏訪さんって見た目に反して気遣い屋だな。
そんな事を考えながらも、どうにも警戒してしまう。
とりあえずこいやという意味を込めて顎でブースに連れ込んだ。
「…なんか、俺の事嫌いなのか?」
私の態度に焦っているが、私の方が焦っている。
どうしよう。勢いで模擬戦してもらうことにしたけど、二宮さんより凄い新人なのに、私、今のところ二宮さんにまぐれ勝ちしかした事ないよ。
そんな事を思っていても、模擬戦開始の合図が鳴り戦いが始まってしまった。
「…なんだ、今回は孤月でやんのか。」
二宮さんより凄いという事はシューターだろうと踏んで、久しぶりに孤月にシールドの戦闘スタイルで挑む。
「っはー、さすがに強えな。」
「…出水くん!強いね!ビックリした〜!!」
結果は私の五本勝ちだったが、出水くんは才能の塊だった。
ついこの前入隊したのに、才能開花の片鱗が見えている。
開花すれば天才に化ける。そういうタイプだ。
「凄いねえ!バイパー!私一番使いづらいから苦手なんだけど、出水くんの弾道は綺麗で見とれちゃったよ!」
「お、おう。なんか、模擬戦前とキャラが…」
「お、警戒解けたみたいだな。良かったな出水。そいつ孤月の実力はボーダー三番目だから、いい経験になったな。」
興奮して出水くんに話しかけまくる私と、私の急変した態度にただただ戸惑う出水くん、そしてケラケラ笑っている諏訪さん。
異様な空間が出来上がっていた。
「凄いね、二宮さんより凄いってほんとだね!」
「っくし!、」
「あら、二宮くん風邪?移さないでね、迷惑だから。」
「っち、」