07.The future you will die.

彼女はクラスの男子から大人っぽいと、密かに人気があった。



苗字名前、成績優秀な優等生。

特に仲がいい友人が居るようには見えなかったが、ずっと一人でいるわけでもなかった。

俺と彼女の接点なんて、クラスメイトという所しかなくて、どちらかと言えば興味は無かった。


その日、彼女が笑顔で声をかけてくるまでは。

「ねえ、迅くん。今日一日私と付き合ってくれない?」

明るい笑顔とは裏腹に、見えた未来は彼女が自殺するという最悪なものだった。

見えてしまった以上、知人の死ぬかもしれない状況を放っておく訳にもいかず、その誘いに乗った。

一体何に付き合わされるのやらと身構えていたが、特に目的がある訳では無く、目につく店に適当に入って時間を潰しているだけだった。

時折見せる悟ったような表情はどんどんと最悪の未来へと引き寄せるようで、俺は必死に楽しませた。

日も落ちて、結局橋の下で休憩することになり彼女を見るが、未来は最悪なままで、どうすれば回避できのかと思考を巡らせていたら、彼女が会話を切り出してきた。

それに答えていくうちに、おかしな方へと流されてしまった。

ほぼ賭けに近かったが、男子高校生の性欲を抑えられるはずも無く、体を重ねる事になり、何の因果か行為が終わった後の彼女の未来は最悪じゃ無くなっていた。

結果オーライ。彼女を救えて万々歳。その後彼女とは特に仲良くな訳でもなく、以前のただのクラスメイトのまま卒業した。


高校を出てから一年。

道端で偶然見かけた彼女に、目を疑った。

彼女と言うより、彼女の未来にだ。

今度は誰かに殺される未来だった。

何故こうも彼女の未来は閉鎖的なのか。

道端で通帳を眺めだした所で声をかけて、連絡先を交換した。


彼女に連絡する前に、町中を歩き回って彼女を殺す未来の持ち主を探すが、見つからなかった。

そして、彼女と連絡をとって犯人が狙いそうな最寄り駅から家までの区間を送ることにした。

今回もあの時同様、見えてしまった以上放っておくわけにはいかないから動いていた。

なのに、彼女といる時間は少しだけな筈なのに充実していた。

彼女もそう思っていたのか、帰り際引き留められ、家に上がってしまえばそういう事になってもおかしくはない。

まさか自分がここまで節操無しだとは思っていなかったが、どうにも彼女を相手にしているとペースが乱されているような気になる。

ぐったりと眠っている彼女に寝巻きを着せて布団をかける。

少しだけ幼く見える寝顔を眺めていても、未来は変わらず最悪なままだ。

さすがに付き合っている訳でもない彼女と一緒に眠るのは良くないと思い、俺はソファで寝た。

起きて、昨日のお詫びも兼ねてご飯を用意しながらどうにか彼女の最悪の未来を回避できないか考えていると、彼女が起きてきた。

一緒に食事をしているとボソリと彼女が喋った。

「…今日はバイト休もうかな。」

その発言に彼女の未来が変わった。

悪い方に。

いつか誰かに殺される未来から、今日誰かに殺される未来が増えたのだ。

今日彼女がバイトを休んで一人で居たら、彼女は今日誰かに殺される。

彼女を何とか一人にしないために、バイトを休ませて一緒にいることにする。

「…死なないでよ。」

零れた本音はあまりに小さくて彼女には届かなかったみたいだ。

とにかく彼女を一人にしないように買い物に付き合うことにした。

荷物持ちをかって出れば、彼女は申し訳なさそうに頼ってくれた。その態度がなんともいじらしくて頬が緩むのが分かった。

アイスを食べたいと言った彼女と一緒にコンビニに入り、彼女が選んだアイスを入口前で食べる。

薄々思っていたが、彼女は育ちがいいのか行儀が悪い事はしない。

口にものが入っている時は喋らないし、肘もつかない。今だって、歩きながらものを食べるのはいけないと言って、微妙な段差に腰をかけてアイスを食べている。

このまま何も起きないんじゃないか?と思えるほど平和である。

「…迅、何してるんだ?」

そんな事も無かったみたいで、何故か犬の散歩をしている嵐山に出会し、面倒な事になる前に強引に別れた。

律儀なのか正直なのか、俺たちの背中に向かって思ったことを大声で叫ぶので、思わず言い返してしまう。

「違うよ!俺たちはただの友達!じゃなー!」

その発言のおかげか、嵐山に遭遇したおかげか、今日苗字さんが殺される未来が消えた。

その時の安堵がほかの感情を含んでいたことを、この時の俺は知らなかった。