19.One and only.

青い空、白い雲。

今日はいい天気なのに、それを教室から眺める事しか出来ない。

ああ、なんて哀れな私。

「…じゃあ、次の文から苗字、読んで。」

脳内で自分を哀れんでいたら、退屈な授業に巻き戻された。

「…はい。」

返事をして教科書を持つが、如何せん聞いていなかったので次の文が分からん。

「…125ページの十三行目から、」

「…冬は務めて、」

隣の席の佐鳥が小さな声で教えてくれた。

「はい、よろしい。では、次は、」

読み終わって席に着く。

いつも佐鳥を小馬鹿にしていたので、何だか申し訳なくなり、小声で話しかける。

「さっきはありがと。」

「どういたしまして、変わりに後で相談乗って。」

「…交換条件かよ。」

しかも後出し。

じとっと佐鳥を見るが、それに気付かず珍しく悩んでいるようだった。

喋らなきゃイケメンなんだな。

佐鳥の意外な一面に気づき、板書を写そうとペンを持った所で終業のチャイムが鳴った。

「佐鳥ー、ノート見せてー。」

「…うん、いいよ。」

「…ありがと。」

いつもならまたかよー、とか言ってくるのに今日はやけに大人しい。

本気で何か悩んでいるのか?

先程言っていた相談というのを聞くのが何だか怖くなってきた。

結局、昼休みに話すことになり、人気のない廊下で二人して立ち止まった。

「…佐鳥、相談って重い系?」

「俺にとっては充分に重い話だけど、名前にとっては分からない。」

「…なんか怖いな。まあいいや、聞こう。」

ゴクリと唾を飲み込んで、佐鳥と見つめ合う。一体どんな相談をされるのか。

「…実は、」

「実は…?」

「俺、必殺技を身につけたくて、」

「…………、必殺技?」

「そう。」

思っていたような話では無くて拍子抜けする。

まあ、重い系の悩みじゃなかったのはいい事なのだが。

「…えと、狙撃手の必殺技?」

「そう。」

佐鳥は狙撃の腕前が悪い訳では無かったはず。いや、私と比べたらそりゃもう達者なもんだろうよ。

だが、狙撃手の必殺技とはなんだ?

「えと、蜂の巣狙撃とか?」

「…何それ、いいじゃん。」

「いいのかよ。」

「でも、俺のトリオン量ではそんなに出来ないよな、」

私は適当に言っただけなのに、現実的に考慮しているところを見ると本気で悩んでいるらしい。

この様子だと、軽い気持ち言ったことを極めそうだな。

そんなことを考えながらも、軽い気持ちで言う。

「そんなら、双狙撃とかどうよ。一回で二発出てきたらビビるよー。」

この時の私は絶対出来ないからこそ言ったのだが、男の本気と言うのは怖いものだ。

「…それだ!」

「…は?」

佐鳥は目をキラキラと輝かせ、さっきまで悩んでいたのが嘘のように笑顔で私にお礼を言った。

その後、佐鳥はボーダー内唯一の双狙撃の使い手になるのだが、ぶっちゃけあいつ馬鹿だろ。


と、今でも私は思う。