青い空、白い雲。
今日はいい天気なのに、それを教室から眺める事しか出来ない。
ああ、なんて哀れな私。
「…じゃあ、次の文から苗字、読んで。」
脳内で自分を哀れんでいたら、退屈な授業に巻き戻された。
「…はい。」
返事をして教科書を持つが、如何せん聞いていなかったので次の文が分からん。
「…125ページの十三行目から、」
「…冬は務めて、」
隣の席の佐鳥が小さな声で教えてくれた。
「はい、よろしい。では、次は、」
読み終わって席に着く。
いつも佐鳥を小馬鹿にしていたので、何だか申し訳なくなり、小声で話しかける。
「さっきはありがと。」
「どういたしまして、変わりに後で相談乗って。」
「…交換条件かよ。」
しかも後出し。
じとっと佐鳥を見るが、それに気付かず珍しく悩んでいるようだった。
喋らなきゃイケメンなんだな。
佐鳥の意外な一面に気づき、板書を写そうとペンを持った所で終業のチャイムが鳴った。
「佐鳥ー、ノート見せてー。」
「…うん、いいよ。」
「…ありがと。」
いつもならまたかよー、とか言ってくるのに今日はやけに大人しい。
本気で何か悩んでいるのか?
先程言っていた相談というのを聞くのが何だか怖くなってきた。
結局、昼休みに話すことになり、人気のない廊下で二人して立ち止まった。
「…佐鳥、相談って重い系?」
「俺にとっては充分に重い話だけど、名前にとっては分からない。」
「…なんか怖いな。まあいいや、聞こう。」
ゴクリと唾を飲み込んで、佐鳥と見つめ合う。一体どんな相談をされるのか。
「…実は、」
「実は…?」
「俺、必殺技を身につけたくて、」
「…………、必殺技?」
「そう。」
思っていたような話では無くて拍子抜けする。
まあ、重い系の悩みじゃなかったのはいい事なのだが。
「…えと、狙撃手の必殺技?」
「そう。」
佐鳥は狙撃の腕前が悪い訳では無かったはず。いや、私と比べたらそりゃもう達者なもんだろうよ。
だが、狙撃手の必殺技とはなんだ?
「えと、蜂の巣狙撃とか?」
「…何それ、いいじゃん。」
「いいのかよ。」
「でも、俺のトリオン量ではそんなに出来ないよな、」
私は適当に言っただけなのに、現実的に考慮しているところを見ると本気で悩んでいるらしい。
この様子だと、軽い気持ち言ったことを極めそうだな。
そんなことを考えながらも、軽い気持ちで言う。
「そんなら、双狙撃とかどうよ。一回で二発出てきたらビビるよー。」
この時の私は絶対出来ないからこそ言ったのだが、男の本気と言うのは怖いものだ。
「…それだ!」
「…は?」
佐鳥は目をキラキラと輝かせ、さっきまで悩んでいたのが嘘のように笑顔で私にお礼を言った。
その後、佐鳥はボーダー内唯一の双狙撃の使い手になるのだが、ぶっちゃけあいつ馬鹿だろ。
と、今でも私は思う。