21.An innocent boy.

今日は、日曜。

昨日、玉狛支部に行ったお土産に貰った桐ちゃんの作ったカレーを食堂で食べている。

「はあ、美味しい…。」

まだ朝の八時なので周りにはまばらにしか人が居ない。

この味が落ち着くのである。

「お、名前。この匂いは桐絵の作ったカレーか?」

「げ、嵐山!」

隊員はほぼ居ないのに、なんでこんなに朝から来てんだこいつ。

と、顔に出ていたようで、嵐山は困ったような顔をした。

「相変わらず名前は俺を邪険に扱うな。」

「…だって、迅にそっくりで苦手だし、さりげなく桐ちゃんの従兄弟をアピールしてくるのはぶっちゃけ嫌いなんだもん。」

「アピールしているつもりは無いんだが…」

全部本音である。

初めて嵐山を見た時は、視力のせいもあって迅が髪色を黒くしたようにしか見えず、眼鏡をかけている今も苦手なままなのだ。

こればかりは体が拒否反応を示すので仕方が無い。

「そう言えば、桐絵とは仲直り出来たのか?」

「は?仲直りも何も、喧嘩してないよ?」

何言ってんだこいつと言う思いを込めて嵐山を見るが、あまりに澄んだ目でこっちを見てくるので逸らしてしまった。

「そうか、それは良かった。」

「…。」

「…俺の事嫌いか?」

「えっ、」

いつもならこんな扱いをしていても、特に気にすること無く明るく振舞っているのに、今日は少し落ち込んでいる。

その表情に良心が痛む。

「…嫌いでは、無い。んだけど、、その、どうしても苦手というか、」

「苦手という事は、克服出来るという事だな。」

私の歯切れの悪い返答に何故か純度100%の明るさで返してくる。

なんなんだ、こいつ。

「それなら良かった。克服して貰えるように、今度からも話しかけるな!」

「…え、ええ〜。」

嵐山との長話のせいで美味しい桐ちゃんのカレーがすっかり冷めてしまった。
まあ、冷めても美味しいてけど。

「今日は、本部長に呼ばれているんだ。じゃあな!」

そう言って颯爽と去っていく嵐山の後ろ姿は、どう見たって黒髪の迅にしか見えない。

「…そういうとこが苦手なんだけど。」

「どゆとこ?」

「ん?邪気がない所。こっちが隠してる汚いもん全部見透かしてそうに思える、、って、迅!?」

ナチュラルに会話していたのは、気づかない間に近付いて来ていた迅だった。

「おはよう。」

「…人混みに紛れてきたな、私のサイドエフェクトが集団に弱い事を知ってるくせに、」

「いやいや、だから紛れたんでしょ。」

悪びれる事無くヘラヘラしている奴に苛つく。

「…嵐山に言わないでよ。」

「俺そんなに言いふらすタイプに見える?」

「うん。」

「そっか、それじゃあ期待に答えなきゃ、」

「迅はボーダー一口が硬そうな男のだよ。うん。木戸司令より!」

わかりやすいお世辞を並べれば満足したのか、誰にも言わないよ。と言って迅もどこかに去って行った。

「…迅は何しに来たんだ?」

モヤッとしたまま休日が始まった。