窓から入る朝日が眩しくて目が覚めた。
昨日、迅くんが帰ったあとバイトを休む事を決めた。
バイト先に連絡を入れて、風呂に入って眠りについた。
今日はじっくりと考えたかったのだ。
昨日の迅くんの言葉の意味を。
昨日、迅くんは言った。
「…俺、未来がわかるんだ。」
「…は?」
前にも言っていた冗談をまた言われて、若干イラついた。今言う必要があったのだろうか。
私は真剣に迅くんに質問したのに、その答えではなく冗談で返してきたのだ。
でも、迅くんの顔は至って真剣で、私は訳が分からなくなった。
「俺には見えてるんだよ。さっきの奴に苗字さんが殺される未来が。」
「…何それ、冗談にしては不謹慎過ぎない?」
私の問いかけには答えず、私の頭を何回か撫でて迅くんは帰って行った。
「…っはあー、意味分からん。」
昨日迅くんに撫でられた所を自分の手で確かめるみたいに触りながら、迅くんの言葉を反芻する。
もし仮に、迅くんに未来が見えていたとして、いや、ありえないんだけど、もしもそうだったとして。
迅くんが私に怒りを抱いていたのは何故なのだろうか?
内心では少し怒っていたと言った。
そもそも迅くんと再開したのなんて偶然で、最近の事だ。
ある日突然私があの人に殺される未来が見えたのだろうか?
いや、そもそもなんで昨日会ったばかりの人に殺されるんだ。私が。
謎が多すぎて頭がこんがらがってくる。
第一、どれが本当の事なのかも分からない。
もしかしたら怒っていたのも嘘なのかも。
「…本人に聞いたら、教えてくれるかな…?」
ポツリと呟いたが、昨日面倒な事を言ったのを思い出した。
ただのセフレの癖に、いちいち言葉の意味を確認するなんて重すぎる。
「……なんで私、迅くんにどう思われるかで悩んでるんだろ。」
今日はせっかくバイトを休んで一日オフなのに、どうしてこんなに悩まなくてはいけないんだ。
そもそも、迅くんの言葉の意味を考える為だけにバイトを休むのもおかしい話だ。
私はどうかしてしまったのだろうか。
ピンポーン
思考がぐるぐるしていた所に家のインターホンが鳴った。
「…宅配便?おかしいな、なにか送ってくれる人なんて居ないはずなんだけど…」
少しだけ不思議に思いながらも、玄関に行きドアスコープを覗いた。
そこに居たのは昨日知り合った人だった。
「…どうしたんだろ、」
ドアを開けようとした時に昨日迅くんに言われた事を思い出した。
「…いや、まさかね、」
「苗字さん?」
「あ、はい。今開けま…」
ガチャガチャガチャッ
私の言葉の途中でドアノブがものすごい勢いで回り出した。
外から回しているのだろう。彼が。
「…苗字さん、早く開けてください。」
「え、あの、何か用ですか?」
何だか怖くなってドアを開けるのを辞めて聞いてみる。
「話があるんです。ゆっくり話したいので、家に入れて欲しくって、」
そう言ってまだドアノブを回している。
「…話?」
「はい。あっ、怖いですよね、急に来たのにこんなに必死で。」
「…や、いえ、」
彼の声音が優しくなって、少しだけ安心した。
「いや、早く苗字さんとお話したくて、焦ってしまいました。」
「…そうですか、」
少しだけ不安は残っているが、ずっと家の前に居られるのも困るので、とりあえず部屋へ入れようとドアの鍵を開けた。
「…遅ぇんだよ、」
「…え?」
ガチャッ
私が開けるよりも先にドアが開き、ものすごい目つきの男がドアの隙間から見えた。
その人は確かに昨日会った人なのだが、表情が物凄く怖い。
そこでようやく違和感に気づいた。
彼はどうやって私の家まで辿り着いたのだろか。