10.Those who believe will be saved.

ガキィン

勢いよく開けられたドアは、私が外し忘れたキーチェーンのおかげで開ききることはなかった。

それに少しだけ安心したが、ドアの隙間から見えたのもに迅くんの言葉が正しかったのだと理解した。

ドアの向こうにいた彼は手に刃物を持っていた。

私がキーチェーンを外していたら私は彼に刺殺されていたのだろうか。

それを想像してしまい、血の気が引いていくのがわかった。

「…苗字さん、これ、外してください。」

「え、いや、嫌です。」

彼は頭がおかしいのか、丁寧にキーチェーンを外すように言ってきた。

「大丈夫です。何もしませんよ?話をしたいだけです。」

「嫌です、私は何も話すことありません、それにどうして私の家知ってるんですか?」

足はすくんでしまい、体は小刻みに震える。彼はそんな私を見てとても嬉しそうに笑っている。

「好きだからですよ。苗字さんの事が。だから調べたんです。気づかれないように後ろを尾行してね。」

「っ、ストーカーしてたんですか?」

「ストーカーだなんて酷いなあ、僕は仲良くなりたくてその為の努力をしただけです。」

そう言ってにっこりと笑った。

狂っているのだろうか?どうすればいいのか分からず、震えることしか出来ない。その上目から涙まで溢れてきてしまった。

「っ、帰って、帰ってください!」

「嫌ですよ。せっかく来たのに、それに今帰ったら、またあいつを家に呼ぶんでしょう?」

「…あいつ?」

「迅とか言う男です。」

迅くんの事まで知っていた。
このまま彼を帰してしまえば、迅くんに危害を加えるかもしれない。かといって家にあげても私が殺されてしまうかもしれない。

どんどんと思考が固まってしまって、彼を家に上げれば何もかも上手くいくような気がしてきてしまった。

震える手でキーチェーンを外そうと手を伸ばした時、遠くてサイレンの音が聞こえた。

「…え?」

「っち、誰か通報しやがった。」

音はどんどん近づいてきて、彼が何処かに走って行ってしまった。

「…何?どういう事?」

「はあ、本当に苗字さんは馬鹿だよね。」

家の外で警察に取り押さえられている人を見ながら、状況が理解出来ないでいると、聞き覚えのある声が聞こえた。

「迅、くん?」

「普通、刃物持ってる男を家に入れようとか思わないでしょ。」

やれやれと言いたそうに笑って、驚いている私の頭をポンポンと撫でた。

「怖かったでしょ?大丈夫?」

「…っ、死ぬかと思ったぁ、」

そう言って思わず迅くんに抱きついてしまった。

うおっと驚いていたが、拒否することなく迅くんは私を抱きしめてくれて、それが嬉しくて大泣きしてしまった。

その後、捕まった彼の発言のせいで私にも事情聴取の要請が来て、その日私に休みなどなかった。