トリガーのプログラミングが終わり、新しいトリガーは生身と全く遜色ない感覚だった。
今日は太刀川さんと出水くんと佐鳥で防衛任務だ。オペレーターは宇佐美が担当することになった。
「名前、なんか分かるか?」
「んー、あ、来ますよ。五体。」
「名前ちゃんのすぐ近くに二体、東に一体、北側に二体です。」
「こちら佐鳥。あー、どこも射線通らないです〜、」
「こちら出水。東は俺が近いんで行きます。」
「んじゃ、俺と名前が二体ずつな。佐鳥は良さげな狙撃ポイントで援護してくれ。」
「佐鳥了か…」
「私はいい。太刀川さんの方援護して。」
「え、あー、佐鳥了解。」
私はとりあえず真っ黒なゲートから出てきた近界民を眺めた。
肌を伝ってくる無機質な感覚にどこかおかしくなってしまって笑ってしまった。
「あはっ、みじん切りにしてやる。」
近界民が警戒区域に降り立つ前に一体を細切れにする。
もう一体がこちらを攻撃しようと体制を取り直したところをアステロイドで撃ち抜く。
「こちら苗字、終わりました。」
「え、早っ!」
「…あー、わかった。近界民が来たら教えてくれ。」
「…苗字、了解。」
結局その後、私の近くには現れず、私はただ近界民が出たポイントを教えるだけの事をしていた。
防衛任務が終わり、出水くんと佐鳥が帰って行った。
宇佐美は鬼怒田さんに呼ばれたらしく、そっちへ行ってしまった。
私は自分の部屋へ戻ろうとしたが、太刀川さんに腕を掴まれて引き留められた。
自分の体がビクついたのがわかった。
「…名前、ちょっと話そうぜ。」
「…いいよ。ゆっくり話したいから、私の部屋にしよ。」
そう言って二人で私の部屋へ行く。
私のサイドエフェクトの試用から太刀川さんとはあまり上手く話せていなかった。
太刀川さんだけじゃない。忍田さんとも宇佐美ともだ。
あの日、私は忍田さんの役に立てると思った。三門市を守るのに貢献できると思っていた。
でも、試用のせいで太刀川さんは医務室にまで運ばれてしまったし、忍田さんはあの後トイレで吐いていたらしい。
私のサイドエフェクトは二人を苦しめて傷つけた。
そのせいで私はなんて話しかけていいのか分からないでいる。
「…どうぞ。」
「おう、お邪魔します。」
部屋に着いたので、とりあえず私が先に入って太刀川さんを部屋に迎え入れる。
「なんか、ごめんな。」
まだ電気も付けてないのに太刀川さんが話し始めた。
「俺、名前が男性恐怖症だって分かってたけど、俺に会う度怯えてのが結構ムカついてた。」
「あっ、そう、」
「でも、名前のサイドエフェクトを共有してみて、理解出来たよ。」
「…何を、」
太刀川さんの声は今まで聞いた事が無いほどに優しかった。
「俺だったら、誰かに触られるのなんて耐えられないな。近づかれるのも無理だ。」
「…は?」
「だって、空気の流れとかモロに伝わるだろ、あれ。人によって違う温度?というかオーラみたいのが混ざりあって、脳みそかき混ぜられてるみたいだった。」
「っふふ、そのたとえいいね。わかりやすい。」
本当に感覚を共有出来ていたのが少しだけ嬉しい。
「だろ?」
「うん。…私、凄いでしょ。あんなサイドエフェクトなのにすごい強いの。」
「ああ、名前は強いよ。」
「太刀川さんが倒れちゃったの見て、ちょっと怖かった。」
「そうか、」
「私のサイドエフェクトは太刀川さんには必要無いんだって思ってたら、私も要らないって言われてるみたいに思えて、」
「うん、」
「今日、一人で近界民倒して、私は一人なんだなって、」
太刀川さんがあんまにも真剣に聞いてくれるから、思っていることが口から溢れ出す。
「みんなで居たいから戦ってるのに、どんどん一人になってく、」
「……」
「…こわいよ、」
ポツリと、言えなかった言葉が暗闇に落ちた。
すると太刀川さんが私の手を握って、引っ張って、背中に手を回して私を抱きしめた。
「大丈夫だ。名前は一人じゃないから。」
いつの間にこんなに大きくなったのか、同じくらいだった背は私よりも高くて、腕は太くて大きな手は力強くて暖かい。
太刀川さんの腕の中で、私は今まで我慢していた分の涙を流していた。