真っ暗な名前の部屋。
「…すぅ、」
「…おい、名前?」
「…すぅ、」
俺の腕の中で泣いていた名前は、泣き疲れたのかいつの間にか眠ってしまっていた。俺の呼びかけに返事は無く、落ち着いた寝息だけが聞こえる。
これはまずい。
何がまずいって、この状況がまずい。
俺は健全な高校二年生男子で、名前は成長期真っ最中の中学一年生だ。
俺も最近体格が良くなって、勿論そうゆう性的な事にも興味があって、いくら妹のように思っている名前でも、この至近距離に居られると反応するものは反応するようで、さっきから俺の股間にあるものは元気に主張しているのだ。
「…まじで、やばいぞ。これは。」
一人言を零してみても収まる訳じゃなく、むしろさっきから名前の吐息が俺の鎖骨を掠めていて、気が気じゃない。
このままでは、もし名前の寝顔を見に忍田さんが入って来たら完全に誤解される。そして俺は言い逃れができない。
そんな状況だ。
とりあえず名前を寝かせようと、座っていたベッドの掛け布団を捲る。
「…嘘だろ、おい。」
布団を捲るとそこにはブラジャーがあった。
どういう事だ?何故掛け布団の中に下着を入れているんだ?男の俺には分からないし、かといって実物があると気になってしまってマジマジと見てしまう。
「…暗くてよく見えねー、」
何とか部屋の暗闇に目が慣れてきて、ブラジャーがあることは分かるのだが、よくは見えない。
頑張って目を凝らしてみるが、65Bという謎の文字列しか視認できなかった。
「…んん、」
「っ、名前?」
俺が抱えている体制が苦しかったのか、名前が唸ったので、俺は我に帰ることが出来た。
急いでさっきまで凝視していた下着を枕元に置いて掛け布団を捲った所に名前を寝かせてやる。
「…っすう、」
「っ、ふぅー、これで一件落着か。」
まだ収まらない股間に若干罪悪感を覚えるが、このままここにいてもなんの意味も無いので部屋を出た。
そろそろ未成年組はボーダーから追い出される時間になってしまうので、鞄を取りに行く前にトイレへと向かった。
とりあえず股間のものを鎮められたのでトイレを出ると、忍田さんとばったりあってしまった。
今二番目くらいに会いたくなかったのだが。
「…慶?もう家に帰る時間だろう、何してたんだ?」
「あー、名前とちょっと、話をしてました。」
俺がそういうと、忍田さんの表情が険しくなって、何か言いたそうだった。
「…名前、気にしてましたよ。」
「試用実験の時の事をか?」
「はい。思い詰めてたみたいで、今日の防衛任務も一人でやってたし、」
「…そうか、」
言わない方が良かっただろうか、忍田さんの顔は覇気が無く、昨日眠れなかったのか隈が出来ていてやつれていた。
「名前はもう、俺より強いよ。」
「…ああ、私よりも強い。本人は否定するだろうがな。」
「でも、名前は女の子だよ。だから俺は、俺より強くても守ってやりたい。」
「…そうだな。」
俺の言葉に心底安心したように笑って久しぶりに頭を撫でられた。
その手はとても優しくて、俺は少しだけ照れくさかったが安心してしまった。
俺は男だから、女の子の名前の事を守る。
その気持ちはこの先変わることは無いだろう。
たとえ俺と名前の関係が変わっても。