事情聴取が何とか終わって、一人家路に付こうかと歩き出した時、前方に見覚えのある後ろ姿を見つけて心臓が高鳴った。
「…迅くん!」
「ん、お疲れ、苗字さん。」
片手を上げて二っと笑う彼に足は駆け出した。
「…送ってくよ。」
「ありがとう!」
「…な、んか、テンション高めじゃない?」
私の反応に迅くんは少しだけ驚いているようだった。
「そう?迅くんに送ってもらえるのが嬉しいのかも。」
「…はあ、またそんな事言って。」
素直に気持ちを口にしただけなのに、迅くんはやれやれと頭を抱えるような仕草をした。
捕まったストーカー男がイベントバイトで一度あった事がある人だったと分かって、私の軽率な言動で危険な目にあった私を心配してくれているのだろう。
あの男には悪いが、全く記憶にないし妄想なんじゃないか?と今でも思っている。
「…大丈夫だよ。迅くんにしかこんな事言わないから。」
そう言って笑ってみせると迅くんは珍しく困ったような顔をした。
「そう言えば、なんであのタイミングで警察が来たんだろ?」
「…え、嘘でしょ?俺が呼んどいたんだよ、苗字さんに死なれると困るから。」
「…そうなの?あれ、でもなんで分かったの?ストーカーが家に来てること。」
「心配だったから家に行こうとしたら見えたんだよ。」
次々と私の質問に答えてくれる。
まるで答え合わせでもしているみたいに。
「じゃあ、なんで私に死なれたら困るの?」
「……それは、」
答えがないのか、とても歯切れが悪い。
「…まあいいや!私は死ななかったし、今も元気だしね!」
何だか理由を聞くのが怖くて私は笑って話を逸らした。
迅くんはホッとしたような顔でそうだね。なんて言って、一緒に歩き始めた。
迅くんの言っていた未来が分かるっていう冗談は、もしかしたら本当で、今回だけじゃなくて、他にも私の知らないところで私や誰かを助けているのだろうか。
そう思うと少しだけ切ないような気持ちになったが、その気持ちに名前を付けられるほど私は子供では無い。
「…迅くん、ご飯食べていく?」
「…いいの?」
「うん、一緒に食べよう。」
「それじゃぁ、ご馳走になるよ。」
その後は他愛無い会話をして、笑いあって、家に着いたら一緒にご飯を作った。
信じられないくらい穏やかで、楽しくって。
こんな日がこれからも続いて、私達はずっと友達のまま曖昧な距離でいるのだと思っていた。