試しで組まれていた東さん達のチームがバラされた。
というのも、隊員各々がチームメンバーを集めて隊を組むらしいのだ。
というか、ボーダー自体が隊を組む方向で話を進めている。
「…参ったよ。」
「なんでだ?」
「だって、隊ってことは集団戦じゃん。私には無理だよ。」
太刀川さんが餅を食べながら私の話に相槌を打ってくれる。
なんでこの時期に餅食ってんだこの人。
「…あー、俺も隊組めって忍田さんに言われてるんだった。」
「えぇー!?慶ちゃんも!?」
「もってことは名前もか?」
「うん。よっぽどのことがない限りソロは無しだってー。」
先日の忍田さんとのやり取りを思い出す。
珍しく折れてくれなくって、秘技パパ呼びを使ったが、ギリ折れなかった。
「よっぽど?なんだそれ。」
「さあ?っはー、どしよ。」
ため息を吐きながら、太刀川さんが食べているきな粉餅のきな粉をつまみ食いする。
ていうか、この人本当に高校生か?きな粉餅食べるの下手くそすぎる。
太刀川さんはきな粉をあらゆる所に撒き散らしながら食べているのである。
「どうせなら俺の組む隊に来いよ。俺とだったら連携出来るだろ?」
「…まあ、出来るけど、んー、てかもうちょっと綺麗に食べないとボーダーできな粉餅食べるの禁止にされるよ?」
太刀川さんからの誘いをやんわりと断って、どうやって特例ソロ隊員になるかを考える。
「…おい、名前。」
「ん?あら、二宮さん。」
あまりにも食べ方が汚かった太刀川さんを洗面所へと促して、一人食堂で戻ってくる太刀川さんを待っていると、二宮さんが現れた。
「お前、」
「あ、誘われても隊には入りませんよ。」
「なっ、まだ何も言ってねえだろ。」
「あれ?違いました?」
二宮さんがソワソワしていたので何となく言いたいことが分かって先に断ったが、外れた。
「…いや、違わねぇが。」
当たってた。
「あはっ、残念でしたー!」
「っち、誰と組む気だ?」
二宮さんはよっぽど私がチームに欲しかったのか、答えるまで帰んねえからな。と言わんばかりのオーラで聞いてきた。
「…ははっ、いや、決まってるわけじゃありませんけど、」
「なら良いじゃねぇか。俺の隊に来い。」
とても強引だ。
「えー、嫌ですよ。普通に嫌です。」
「っな!?」
私の言葉にダメージを受けたのか、二宮さんは普通に嫌です?なんだ普通にって!?とブツブツ言いながらどこかへ行ってしまった。
「…名前!」
「あ、お父さん!どうしたの〜?」
忍田さんが現れたので、そちらに向いて忍田さんの言葉を待つ。
何か頼み事だろうか?
「ちょっと来てくれるか?見せたいものがあるんだ。」
「見せたいもの?」
忍田さんは少しウキウキしているオーラを出している。
それに釣られて私もウキウキしていたが、目的の部屋に近づくにつれて吐き気に襲われた。
「名前、大丈夫か?顔色が物凄く悪いが…」
「っ、うん、へーき。ちょっと、嫌な感じがするだけ、っ、」
何とか心配かけまいと元気に受け答えをしたつもりだったが、隠せていなかったみたいで、忍田さんはとても心配していた。
ついに目的の部屋に着いてしまって、部屋の前にいるだけなのに気分が悪くてどうにかなりそうだった。
「…この部屋?」
「ああ、そうなんだが、無理そうなら、」
「いや、いこっ、う゛っ、」
忍田さんの言葉を遮ってへやのドアを開けると、嫌なオーラで吐いてしまった。
「名前!?」
「名前ちゃん…」
「っ、な、に、これ?…迅?」
部屋には黒いトリガーと迅が居た。
未だに襲う嫌悪感と違和感に頭がおかしくなりそうだった。
全身から汗が吹き出して、体は小刻みに震える。
忍田さんが背中を摩ってくれて何とか話を聞けるようになったので、吐瀉物を手早く処理して二人に尋ねる。
「…それ、人ですか?何ですか?」
私の問いかけに二人は目を見開いて、迅が口を開いた。
「これは黒トリガー。風刃っていって、俺の師匠が遺した形見だよ。」
「黒トリガー?ふうじん?…ただの形見じゃないでしょ。それは、物なのに、生きてる、」
私がそう言うと、忍田さんは眉間に皺を寄せ、迅は悲しそうに笑った。
「黒トリガーは、製作者の命と引き換えに作られるトリガーなんだよ。」
それを聞いて納得がいった。
私が吐きそうになっていのは、違和感があったからだ。理解ができない違和感はやがて恐怖になり、それは脳を支配して異常を来す。
この風刃には確かに物なのに、生きた人間と同じオーラが出ている。
その違和感は私にとって嫌悪感を抱かせる程の恐怖だった。
だが、その造りが明確になり、私の脳が理解出来たのか汗は引き、震えは収まった。
「…なんでその、風刃を私に見せるの?」
忍田さんに聞けば我に返ったように答えてくれた。
「黒トリガー使いはS級としてソロ隊員扱いになるんだ。」
「…そう、でも私にそれは扱えない。震えは止まったけどまだ怖いから。」
そう言えば迅は安心したような顔をした。
「そうか。済まなかったな、良かれと思ったんだが。」
忍田さんは本当に申し訳なさそうに謝った。
その謝罪を跳ね除ける体力は残ってなくて、私は膝から崩れ落ちてしまった。