風刃のオーラに当てられて私は二日寝込んだ。
その間に風刃争奪戦なるものが開催されたらしく、迅が他を圧倒して風刃をもぎ取ったと知った。
「あの時安心した顔してたのは、私が争奪戦に参加しないって思ったから?」
「ははっ、そうそう。どうしても風刃は俺が使いたくってね。」
そう言って笑う迅は珍しく感情をそのままオーラに出していた。
「…良かったね。」
「うん。でも不思議だな、俺今風刃持ってるのに、名前ちゃんなんともないじゃん。」
「ああ、持ち主が決まったからでしょ。無闇にオーラ出して無いからへーきなの。」
なるほど。と関心しているそぶりを見せるが、オーラは風刃をゲットした事への喜びでいっぱいだ。
その姿が意外にも年相応に見えて、普段迅に感じる嫌悪感は無かった。
「あ、お父さんっ!」
「え?」
ぶっちゃけ実感はないが、実質二日ぶりの忍田さんにドアが開く前に声をかけると、迅は驚いていた。
そして私も驚いた。
「…やあ、苗字くん。元気かね?」
「名前、目が覚めて良かった。」
そこには忍田さんだけでなく、何故か根付さんまで居たのだ。
「…んで、キツネ親父までいんの。」
「こらこら、名前ちゃん。」
私の愚痴が聞こえたのか、迅が焦って止めてくる。
「元気です。なのでお見舞いは結構ですよ。根付さんはお仕事大変でしょうから、どうぞお戻りください。」
満面の笑みでUターンを促すが、忍田さんが私の頭を優しく叩いた。
「こら、根付さんは名前に話をしに来たんだ。」
「ええー、絶対録な話じゃない〜。」
そう言うとギクリとあからさまな態度をとった。
やっぱり。あの人いつも変なオーラ出してるけど、今日は特に嫌なオーラだもんな。
まあ、忍田さんも居るのでここは大人しく話を聞くことにした。
「話というのは他でもない。苗字くんに是非入ってもらいたい隊があるんだよ。」
「お断りします。」
「こらっ、話は最後まで聞きなさい名前!」
迅は何か見えたのか、コソコソと部屋から出ていった。
「はあー、私のサイドエフェクトは集団戦闘には向いて無いので、隊に入る気はありません。」
「期間限定で構わないんだ。広報部隊を作りたくてね、苗字くんは顔は良いから是非広報を担当して欲しくて、」
「顔は、て!顔も、って言ってくださいよ!」
私がそう言い返すと、忍田さんは隣でうんうんと頷いている。
「…つまり、最初のボーダーの顔として良いイメージを付けるために隊に入れってことですか?」
「そう!そうなんだよ!」
地味にハイテンションなのがちょっとイラッとするが、期間限定ならまあいいかもしれない。
「…あれ、広報って事はメディアに映るってことですか?」
「ああ、そうだけど。」
「ええー、それは面倒で嫌だなぁ。」
「ええー!?」
意外にも反論を示したのは忍田さんだった。
「…え?」
「名前が広報部隊に入ってくれればこれからのボーダーの株は上がると思ったんだが…」
しゅんとしている忍田さんを見てしまえば断れるはずも無い。
「入ります!苗字名前、忍田さんとボーダーのために広報部隊に入らせていただきます!!」
「おお!そうか。それは有難い。」
「…で、その広報部隊って誰がいるんですか?」
忍田さんのためが主だが、この際隊員が誰でも構うものか。
忍田さんの笑顔のため。私は誰とでも組んでやる!
「嵐山くんだよ。」
「…あ、やっぱり考えさせ、」
その言葉は二人の大人達の耳には届くことなく、私は嵐山隊の幽霊隊員になったのだった。