32.Ghosts.

風刃のオーラに当てられて私は二日寝込んだ。

その間に風刃争奪戦なるものが開催されたらしく、迅が他を圧倒して風刃をもぎ取ったと知った。

「あの時安心した顔してたのは、私が争奪戦に参加しないって思ったから?」

「ははっ、そうそう。どうしても風刃は俺が使いたくってね。」

そう言って笑う迅は珍しく感情をそのままオーラに出していた。

「…良かったね。」

「うん。でも不思議だな、俺今風刃持ってるのに、名前ちゃんなんともないじゃん。」

「ああ、持ち主が決まったからでしょ。無闇にオーラ出して無いからへーきなの。」

なるほど。と関心しているそぶりを見せるが、オーラは風刃をゲットした事への喜びでいっぱいだ。

その姿が意外にも年相応に見えて、普段迅に感じる嫌悪感は無かった。

「あ、お父さんっ!」

「え?」

ぶっちゃけ実感はないが、実質二日ぶりの忍田さんにドアが開く前に声をかけると、迅は驚いていた。

そして私も驚いた。

「…やあ、苗字くん。元気かね?」

「名前、目が覚めて良かった。」

そこには忍田さんだけでなく、何故か根付さんまで居たのだ。

「…んで、キツネ親父までいんの。」

「こらこら、名前ちゃん。」

私の愚痴が聞こえたのか、迅が焦って止めてくる。

「元気です。なのでお見舞いは結構ですよ。根付さんはお仕事大変でしょうから、どうぞお戻りください。」

満面の笑みでUターンを促すが、忍田さんが私の頭を優しく叩いた。

「こら、根付さんは名前に話をしに来たんだ。」

「ええー、絶対録な話じゃない〜。」

そう言うとギクリとあからさまな態度をとった。

やっぱり。あの人いつも変なオーラ出してるけど、今日は特に嫌なオーラだもんな。

まあ、忍田さんも居るのでここは大人しく話を聞くことにした。

「話というのは他でもない。苗字くんに是非入ってもらいたい隊があるんだよ。」

「お断りします。」

「こらっ、話は最後まで聞きなさい名前!」

迅は何か見えたのか、コソコソと部屋から出ていった。

「はあー、私のサイドエフェクトは集団戦闘には向いて無いので、隊に入る気はありません。」

「期間限定で構わないんだ。広報部隊を作りたくてね、苗字くんは顔は良いから是非広報を担当して欲しくて、」

「顔は、て!顔も、って言ってくださいよ!」

私がそう言い返すと、忍田さんは隣でうんうんと頷いている。

「…つまり、最初のボーダーの顔として良いイメージを付けるために隊に入れってことですか?」

「そう!そうなんだよ!」

地味にハイテンションなのがちょっとイラッとするが、期間限定ならまあいいかもしれない。

「…あれ、広報って事はメディアに映るってことですか?」

「ああ、そうだけど。」

「ええー、それは面倒で嫌だなぁ。」

「ええー!?」

意外にも反論を示したのは忍田さんだった。

「…え?」

「名前が広報部隊に入ってくれればこれからのボーダーの株は上がると思ったんだが…」

しゅんとしている忍田さんを見てしまえば断れるはずも無い。

「入ります!苗字名前、忍田さんとボーダーのために広報部隊に入らせていただきます!!」

「おお!そうか。それは有難い。」

「…で、その広報部隊って誰がいるんですか?」

忍田さんのためが主だが、この際隊員が誰でも構うものか。

忍田さんの笑顔のため。私は誰とでも組んでやる!

「嵐山くんだよ。」

「…あ、やっぱり考えさせ、」

その言葉は二人の大人達の耳には届くことなく、私は嵐山隊の幽霊隊員になったのだった。