ブースで一人、ソファに腰掛けながらジュースを飲んでいると、禍々しいオーラがこちらに近づいて来るのがわかった。
鳥肌が立ったので、ソファから立ち上がり近くに知人が居ないか探した。
「柿崎さん!」
「おお、苗字って、おい!?」
近くに柿崎さんが居たので、柿崎さんのあいていたジャージに入って近づいて来ているオーラに備えた。
最初こそ驚いて焦っていた柿崎さんだったが、私が小刻みに震えているのに気づくと何も言わずにぽんぽんと撫でてくれた。
私は誰からも撫でられがちなのだが、前世は犬か猫だったんか?
なんて思っていたら、さっきのオーラがもう近くにまで来ていた。
「…あの人だ、怖っ。」
ボソリとそう言うと、聞こえてないはずなのにこちらを睨んできた。
「っひ!」
小さく悲鳴を上げると柿崎さんが大丈夫だ。と言いながら撫でてくれる。
そんなやり取りをしているうちに、その人はずんずんとこちらに近づいてきて、遂には私の前で立ち止まった。
正確には柿崎さんの前だ。
「…なんか俺に用かよ?ああ??」
何だこの人、怖すぎる。不良だ!?
と思ったら、その人の手がこちらに伸びてきた。
咄嗟に柿崎さんのジャージから出て避ける。
「…あ?、んだこのガキ。、」
「っちょっと、カゲ!」
「…尋くん!?」
カゲと呼ばれた怖い人の後ろから現れたのは尋くんだった。
「…尋くん、この人と知り合い?」
「ゾエ!このガキ何もんだ!?」
ほぼ同時に質問したせいで、尋くんはどうしようと困惑していた。
「こらこら、二人で同時に質問したら答えられないだろ。」
間に入ってくれたのは柿崎さんだった。
私と怖い人は柿崎さんを挟んで睨み合っている。
この人、問答無用で私の事スコーピオンて切ろうとしてきたぞ。隊務規定違反だって知らないのか!?
脳内で念を送っていると、まるで思考を読んでいるかの如くうるせー。と言ってきた。なんだあ!?
「あー、カゲは俺よりも先にボーダー入ったんだけど、名前ちゃんは知らなかったみたいだね?」
「…名前?こいつがあの本部長の娘って奴かあ!?」
尋くんの質問に答えたのは私ではなく怖い人だった。
「っな、私の方がボーダー歴長いよ!多分。なのにいきなり呼び捨てって、礼儀が、その、、」
私がムキになって食ってかかろうとしたら、凄く怖い顔で睨まれて萎縮してしまう。
「おお、言ってることは確かだな。俺は影浦雅人だ。で、お前は?」
「…っ、苗字名前!!忍田さんと太刀川さんの次に強いんだから!ね!です!よ!」
そう言ったらニヤリと笑って、ブースに入るように顎で指示された。
なんだあ!?ボコボコにしてやる。
その誘いに乗っかって、ブースに入り模擬戦をした。
「お前なかなかやるなあ!」
「なぁ〜にがなかなかですか!私から一本も取れてないくせに!」
私は彼に気に入られたようで、どんだけ煽ってもすごく雑に頭を撫でられるだけで、こちらが拍子抜けしてしまう。
「おい、名前。俺の隊に来いよ。」
「え、あ、いや、残念だけど私嵐山隊に入ってるから。一応。」
そう言うとマジか!?と信じられないものを見るような目で見られて今度は両手で髪の毛をわしゃわしゃされた。
「っ、あ、の!」
「敬語じゃなくて良い。あと、好きに呼べよ。」
ぶっきらぼうだけど優しさを感じるオーラに私は少しだけ癒された。
「じゃあ、影君って呼ぶね!」
「…おう。」
あんなに禍々しいオーラを放っていた彼が、今は落ち着いた優しいオーラを纏っていた。