「佐鳥〜!」
熱で寝込んで三日。大分落ち着いたので部屋から出てブースへと来ると、見慣れた顔があったので声をかけた。
「お、名前〜!もう動いて大丈夫なの?」
「うん、もうへーき。」
実はまだ少しだけフラフラするが、忍田さんにバレると怒られるので伏せておく。
「休んでた間のノートは任せろ!」
「ありがと、でも時君に見せてもらうからいい。」
「えぇ〜!?」
教室で微妙な空気のまま佐鳥とは会っていなかったので、いつも通りに接してくれる事がとても嬉しく感じた。
「それより、何してんの?」
「ん?狙撃訓練しようと思ってた。」
「…へぇ、狙撃ねぇ〜。」
私は以前引き金を引いてトリオン花火を上げてしまったので、狙撃だけ佐鳥を見習おうと思った。
「名前は狙撃手やらないの?トリオン量多いし色んなこと出来そうなのに。」
「ははっ、いやいや無理無理。私花火上げちゃうから。」
「…は?」
笑いを誘おうと自嘲気味に言ってみたが、本気で話が噛み合ってないみたいな反応をされた。
「いや、私トリオン量の調節が下手くそ過ぎて、弾道安定しない上に大量のトリオンで打っちゃって爆発しちゃうの!」
自分で言っていて恥ずかしくなる。
「…え?どういうこと?」
割とわかりやすく伝えたつもりなのに、佐鳥には全く通じていない。
まるで宇宙人と話している気分になった。
「名前、体調はもういいのか?」
「あ、東さん。」
二人して頭上に?を浮かべて首を傾げあっていると、背後から東さんが声をかけてくれた。
「はい、大丈夫です!それより聞いてくださいよ!佐鳥とお話が出来ないんですよ!」
「…へ?」
「いやいや、出来てはいるんですけど、名前の言ってる事が、その、」
佐鳥が弁解を始めたが、上手く話せていない。
「私が狙撃手の素質無いって話をしたのに、佐鳥は」
「あぁ、無理はないかもな。名前が狙撃手を試した当時は、プロトタイプの狙撃トリガーで、何もかもを使用者が調節してたんだ。でも、今の狙撃トリガーには弾道補正はもちろん、トリオン調節補助システムがついてるんだ。」
「……え、」
なんだそれ、初耳だ。
「って事は、今の狙撃トリガーなら私にも扱えるって事ですか?」
驚きの表情のまま東さんを見れば、優しい笑顔で肯定された。
「ちょっと教えてあげるから、ブースに入ろう。」
東さんに促され佐鳥も着いてきて三人で訓練ブースへと入った。
「とりあえず最初だから、イーグレットだな。」
そう言うと割とゴツめの狙撃トリガーを渡された。
「前に使ったのよりしっかりしてますね。」
「ああ、改良に改良を重ねたらしいからな。引き金を引けば狙ったところに撃てるはずだぞ。相当じゃない限り。」
フリかと思ったが、余計な事を考えるのは不毛なのでとりあえずスコープを覗いて的目掛けて引き金を引いた。
「お、ヒットだ。」
「うわ〜、名前って天才気質だよな。」
「いやいや、当たっただけで酷いでしょ。」
思いのほか二人の反応が良いので安心したが、以前よりはマシなもののこの程度じゃ実戦では役に立たない。
私は役に立たないといけないんだ。
頭の中で先日の香取さんの言葉を思い出してしまった。
「…これって、訓練すれば使えますか?」
「ああ、はじめにしては上出来だぞ?」
東さんの言葉を鵜呑みにできない程に内心焦ってしまっていた。
「…私、当分狙撃手のランク上げるわ。」
「おお!同じポジションじゃん!なんかあったら何でも聞いてよ!」
「うん、ありがとう。でも、防衛任務は孤月使うから。」
「え?実戦で経験積んだ方が良くない?」
佐鳥の意見は最もだったが、私は何故か苛立ってしまった。
「不慣れなまま戦ったってなんの意味もないでしょ。それに実力を磨くために防衛してるんじゃない。」
「あ、そうだよね。ごめん。」
落ち込んでしまった佐鳥に罪悪感を感じた。でも、謝ろうと思える程、今の私に余裕は無かった。