39.Welcome to the BORDER.

ざわざわとしている会場に真新しい隊員服を来た人が所狭しと集まっている。

「…なんで、私だけ生身。」

「すまないね、生身と換装後で容姿が変わってしまうのをすっかり忘れていたんだ。だから、馴染みのある姿で登壇して欲しくてね、」

「…根付さんって、詰めが甘いですよね。」

今日のためだけに用意されたコンタクトをして、嵐山隊の隊服を着てスタンバイをする。

普段ロングに丸眼鏡という地味な私だが、トリオン体が小六の時のままの設定なので、ショートカットに裸眼なのだ。

視力は調節してもらっているのでとても良くなっているのだが、生身だとほぼ見えないので根付さんが自腹でコンタクトを購入したらしい。

物凄い執念だ。

「トリガー説明の時には換装していいんですよね?」

「ああ、もちろん。」

まあ、形式的な式の時だけなのでコンタクトが怖いという事以外に、特に不満はないのだが。

そんな事を考えていたら時間になったようで、アナウンスが流れて入隊式が始まった。

基本的に舞台の後ろの方で整列してるだけなので、特に難しいことはないのだが、人が多いせいでオーラが混ざって酔ったような感覚に襲われる。

これが本当の人酔いだ。なんて脳内でボケて何とか気を紛らわす。

忍田さんと城戸司令の御言葉が終わっていよいよトリガー説明とポジション分けが始まる。

「まず簡単な実力テストを行って貰います。」

嵐山の誘導で新入隊員等が用意されたブースに流れていく。

「…これが終わればポジション分け?」

「そうそう。最近名前狙撃手ポイントいい感じだから、狙撃手の方でも良かったのにね。」

「いやいや、私は生粋の攻撃手でしょーよ。」

「二人とも、そろそろ始まるから記録とってよ。」

「おっけ〜、時君。」

時枝に声をかけられ自分の仕事を確認する。

擬似トリオン兵の処理速度記録。

「私、こんなのやったっけ?」

「え、やってないの?」

「う〜ん、確か入隊式の後忍田さんに呼び出されて、ちょっと話して終わった気がする。」

それを聞いた時君は何かを考えて、黙ってしまった。

私も黙った。

もしかしなくとも、私は裏口入隊的な?

冷や汗をかいていると、話を聞いていたらしい嵐山が声をかけてきた。

「そろそろ新入隊員はみんな終わるから名前もやればいいんじゃないか?」

「え、良いんですか?」

「ああ、構わない。」

そんなやり取りを経て、新入隊員が見ている中私は擬似トリオン兵を倒すことになった。さすがに自分のトリガーを使うのは不公平なので、新入隊員達に貸し出したスコーピオンでやることになった。

「…スコーピオンの斬撃嫌いなんだよな…。」

そう呟けば開始の合図が鳴り、とりあえず仕留める。記録は0.9秒。

ブースの外では少しどよめきが起こっていたが、特に気にはならなかった。

「…やっぱりスコーピオンは飾りですね、使いにくいや。」

「いやいや、一秒切っといてよく言うよ!」

佐鳥がうるさかったが、無視をして遂にポジション分けになった。

「銃手、攻撃手希望の人はこちらへ。狙撃手希望の人は佐鳥の方へ行ってください。」

嵐山の声掛けで隊員達がバラけた。

「攻撃手希望の人は苗字の方へ集まってください。」

「は〜い、苗字で〜す。」

トリオン体に換装したので手を振りながらわかりやすく主張をする。

ゾロゾロと人が集まって来て、好奇心のオーラがこちらに向かってくるので少しだけ擽ったい。

そんな中に一人覚えのあるオーラを向けてくる人が居た。

「…っ、」

そのオーラは負の感情から放たれるオーラで、肌を伝って中に入り込んでくるみたいに私の体を不快感で支配する。

「…あんた、本当に恵まれてるのね。」

「っ、か、とりさん、」

目の前まで来た彼女は親の仇でも見るみたいな目で私を睨んでいた。

体中から汗が吹き出したが、トリオン体だったのが唯一の救いだった。

綾辻さんに頼んで感覚を最大限抑えてもらって、その後の仕事をこなした。

香取さんのオーラは憎悪と羨望、そして悲しみが混じっていた。