「ふふんふんふ〜ん、」
「あ、名前!いい所に来た。模擬戦やろーぜー!」
人が陽気に鼻歌を歌っている所に太刀川さんが声をかけてきた。
「…そのメンツ見る限り、チーム戦じゃん。」
太刀川さんの隣には出水くんと柚宇ちゃん、そしてその周りには二宮さんと二宮隊の愉快な仲間たちが居る。
「察しがいいな。名前は俺のチームな!」
「おい、それだと戦力差が開きすぎるだろ。こっちはまだオペレーターもいねえのに。」
「…確かに。」
「えぇ〜、一人多いウチが有利じゃないんですか?」
太刀川さんの発言に二宮隊の皆さんが口々に言っていく中、女の人だけは何も言わなかった。
「…慶ちゃん、知らない人が二人いるよ。」
太刀川さんの後ろに隠れながら小さな声で伺うと、太刀川さんが目を丸くした。
「結構話題に上がるから知ってると思ってたわ、悪い悪い。あのヘラヘラしてんのが犬飼、んであの女子が鳩原な。この前入隊式終わったばっかの新人だ。」
視線を向けながら丁寧に教えてくれる。太刀川さんも大人になったもんだ。
関心していると鳩原さんと目が合ってしまった。得体の知れない独特なオーラにビクついてしまったが、彼女はニコリと笑って声をかけてくれた。
「初めまして、鳩原未来って言います。」
「…はじめまして、苗字名前です。」
会釈をしながら自己紹介をすると手を出されたので恐る恐る握手をする。
鳩原さんのては温かくて、とても優しい感じがした。
思わずにやけてしまっていると、何やら話が纏まった様子で二宮さんが声をかけてきた。
「…国近は両チームアシスト、名前は狙撃手でやれば互角だろ。」
「ほーい。アシストメインですね〜。」
「名前もそろそろ狙撃手のポイントマスター行きそうなのに、いいのか?」
「構わん。うちの狙撃手の方が上だ。」
「…うわ、すっごい自信。」
二宮さんがドヤ顔をしてブースに入って行ったので、私の言葉は聞こえなかっただろうが、あそこまでドヤ顔が出来るなんて相当凄い狙撃手なのだろう。
入隊式のポジション分けの時に犬飼さんが銃手の説明を受けていたので、鳩原さんが狙撃手なのだろうと視線を向ければ、照れたように笑って二宮さんのあとを追いかけて行った。
「…なんか、楽しみになってきた。」
「おう。勝つぞ。」
「出水くんが二宮さんを抑えてくれるんでしょ?」
「っは!?それはキツイだろ!」
私達はワイワイしながらブースに入り、順に転送されて行く。
戦闘開始の合図が鳴って、とりあえずバッグワームをして高台を目指す。
「こちら苗字、狙撃位置に着きました。いつでも援護出来ます。」
「おーけー、俺は建物内だ。辻を見つけたから辻と戦る。出水の援護をしてやれ。」
「こちら出水!犬飼先輩と二宮さんに当たりました!援護頼むっ!」
「…リョーかいっ!」
柚宇ちゃんから出水くんの居る地点の詳細が送られてきので、それを頼りに射線が通りそうな高台へ移動をする。
「…わざわざ屋外で戦ってるって事は、釣りだよな〜。」
二宮さんの狙いを察しながらも、二対一で頑張っている出水くんを見てしまえば援護せざるを得ない。
まずは機動力を削ごうと新人の犬飼さんの足を狙って引き金を引く。
上手く行けば両足抜ける。
パシュッ
「っ、あー、かかりました。」
「ああ。鳩原、犬飼の足の分仕事しろよ。」
「…鳩原、了解。」
「…やっぱり釣りか〜。まあ、片足落とせたから上出来っ、…えっ!は!?」
さっさと違う地点に移動しようと歩きながら独り言を漏らしていると、物凄い正確な狙撃で持っていたイーグレットが射抜かれた。
「…こちら苗字。イーグレットが使い物にならなくなりましたあ!」
「あー、殺られたか。さすが鳩原だな。他の狙撃用武器は?」
「…ライトニングだけです。」
「…名前、ライトニングの命中率どんくらいだっけ?」
「……二割。」
太刀川さんと通信している間に鳩原さんから位置が割れたのか、二宮さんがこちらに向かっていた。
「…あー、もう一回くらいイーグレット出せないか?名前トリオン量凄いだろ。」
「ええっ、出せたとしても弾数減りますよ!」
「いやいや、っと、ぶねー。」
「ライトニングで頑張ります。落ちたらお餅奢りますから!」
通信を切ってその場でライトニングを構える。
「…ま、数打ちゃ当たるよね。」
接近している二宮さん目掛けてライトニングで移動しながら乱射する。
「…下手くそか。」
「…そう言えばシールド持ってんだった。」
私の乱射は一発も当たることは無く、距離を詰められ二宮さんに落とされた。
「おつかれ〜」
「…柚宇ちゃん〜!」
国近に抱きついて慰めてもらおうと思ったが、まだ戦闘中なので普通に拒否された。
その後の展開は割と普通で、片足落とされている犬飼さんが出水くんに落とされて、太刀川さんが辻くんを落として、鳩原さんを落とした出水くんが二宮さんに落とされて、二宮さんと太刀川さんが一騎打ちして、ほぼ同時にトリオンが切れて終了。
「まあ、一番最初に名前を落とせたから及第点だな。」
「…一発撃っただけで補足されるなんて思わないじゃないですか!」
嫌味を言ってくる二宮さんに噛み付く私を鳩原さんが宥めてくれる。二宮さんは楽しそうに笑って、負け犬の遠吠えだな。とか言ってくるので、私は憤りを抑えることが出来ない。
「いやー、片足落とされたけど、鳩原に直ぐやられてるから、二宮さんが注視するほどでは無かったよね。」
「っな、なんだあ!?」
横から入ってきた犬飼さんが初会話なのに凄く煽ってくるので、殴り掛かりそうな勢いの私を鳩原さんが必死に止めてくれている。
「今度戦る時は撃ち合おうね、名前チャン。」
「っ、んだあぁ!?」
からかうような態度が気に入らない。この男の場合、態度だけでなくオーラも完全に舐め切っているので余計に腹が立つ。
「ま、足じゃなくて頭狙ってたら良かったのにね。」
犬飼のその発言に頭が少し冷静になった。
犬飼を無視して、落とされた後に疑問に思っていたことを鳩原さんにぶつけてみる。
「…何で私じゃなくてイーグレットを撃ったんですか?」
鳩原さんは困ったように笑っただけで答えてはくれなかった。
鳩原さんからでるオーラがあまりに優しかったので、私もそれ以上聞くことは出来なかった。