42.A girl who is alone.

「名前、そろそろ時間じゃないのか?」

「え、今日の仕事夕方からでしょ?」

約一年前、嵐山隊を抜けた。

これまでの広報の仕事で私に固定ファンが付いていた為、今更広報の仕事を辞めることも出来ず(根付さんに泣いて引き留められた。)、図々しくも嵐山隊の作戦室に頻繁に顔を出している。

今年で十六になる私は高校に上がってから体の発育が加速し、それに伴ってグラビアの仕事が増えた。
というかほぼモデル扱いである。

本日の仕事も専属契約している雑誌の撮影とボーダー特集のインタビューがあるのだ。

私の記憶では夕方に根付さんが送迎係と一緒に迎えに来てくれる事になっている。

以前仕事を忘れてすっぽかしてしまって以来、根付さんに迎えに行くまで作戦室から一歩も出るな。ときつく言われてしまったのだ。

「ああ、仕事じゃなくて出迎えだ。」

「…出迎え?」

「遠征部隊の。帰ってくるの今日だろう?」

「…あ。」

嵐山隊長が大丈夫か?と心配してくれている。

最近バタバタしていたせいですっかり忘れてしまっていた。

「ん〜、根付さん来たら伝えておいて貰えますか?」

「ああ、分かった。」

言付けをして作戦室を出た。書類整理をしていた佐鳥が何か言っていたが、無視しておいた。








「…苗字隊員?今日は広報の仕事じゃなかったのか?」

「仕事ですよ。でも、出迎えしないと太刀川さんうるさいですから。」

そう言って城戸司令の方を見れば後ろに幹部の人達がいた。
根付さんもいるので、仕事はこの後なのだろう。

「…そうだな、君達は仲が良いから。会う機会も随分減ったと本部長も言っていた。」

城戸司令がしみじみと言うのでこちらの良心が少し痛む。

「…会おうと思えば会えるでしょう。忍田さんからの呼び出しなら飛んで来ますよ、私。」

「ああ、分かっている。だから気軽に呼べないんだろう。」

タイミングよくゲートが開いて遠征艇が降りてくる。

轟音のせいで城戸司令が言った言葉が聞こえなかった。

「お、名前!出迎えか?」

「そうですよ、来ないと太刀川さん拗ねちゃうでしょう?」

笑いながらそう言えばこいつ、!と言いながら頭を無造作に撫でられた。

「これから報告だ。またな、名前。」

「…うん、おかえり。太刀川さん、」

離れる手の温度に少し胸が切なくなるが、気づかないフリをした。

「ああ、ただいま。」

そう言った太刀川さんのオーラは一瞬でいつも通りに戻った。

それに安心して遠ざかる太刀川さんの背中を見つめながら、撫でられた頭を確かめるみたいに触った。

「…苗字くん、大丈夫かい?少し顔が赤いが…」

「大丈夫です、根付さん。それより仕事!行きましょう。」

指摘された言葉を理解したくなくて、作り笑いを咄嗟に浮かべた。

思春期真っ只中の私は、この感情の名前を知るのがとても怖い。