43.Subtle distance feeling.

撮影終了後、荷物を取りに入った控え室でなり続ける私のスマホ。

「…本部長?」

画面に映るのはボーダー本部長の名前。

少し憂鬱な気持ちで電話を取れば、私の心を掻き乱す優しい声音が聞こえた。

もう随分長いこと聞いてなかったように思えるその声に、胸の奥が抓られたような感覚に襲われる。

電話の内容は短くて、「現在交戦中の迅と嵐山隊に合流してくれ。」そんな業務連絡みたいなものだった。

通話が切れて無機質な音がなり続ける端末の電源を切った。

トリガーを起動して、送迎係の人に事情を説明して急いで現場に向かった。






「…もう終わってんじゃん。」

「うわ、苗字まで引っ張って来るとか、本部長容赦ねー。」

トリガーを解除して撤退ムードの出水君が嫌そうな顔をして私を見る。

「名前、来てくれたのか!撮影で疲れてるのにすまないな。」

「いえ、来ただけで何もしてないので。」

嵐山隊長にそう返せば、たった今終わったところだ。と教えてくれた。

「…とりあえず、報告しに本部に戻ろう。名前も本部に行くだろう?」

「はい。荷物を本部に運んでもらったので…。」

「そっか、名前もう本部住みじゃないもんな〜、」

戦闘でいい働きでもしたのか、上機嫌の佐鳥に絡まれた。

苦笑いでかわしながら私は本部へと向かう。

「…報告は以上です。」

「そうか、御苦労。報告書は明日でいい。気をつけて帰ってくれ。」

「はい。」

嵐山隊長と本部長のやり取りが終わり、私達は帰宅しようと会議室を出ていく。

「…名前、」

「…はい、なんですか?」

「…話がある。」

本部長に呼び止められて、室内に二人きりになる。

久しぶりのせいで緊張してしまっている私に、優しく声をかけてくれる。

「名前、元気にしてたか?」

「…はい、」

約一年前、嵐山隊を抜けると同時に私は本部から出て一人暮らしを始めた。

それから私は忍田さんを避け、極力会わないようにしてきた。

「…そうか、たまには食事でも行こう。」

気を使っているのがオーラで丸わかりだった。

喉の奥から何かが込み上げてきそうで、目頭が熱くなって視界がぼやけた。

それを隠すように頷いて会議室を出る。

扉を背に蹲る。

溢れる涙を抑えようと目を抑えるが、次から次へと溢れてしまってどうしようもない。

背中から感じるオーラのせいで胸がどんどんと締め付けられる。

こんな事になるなら、あの日死んでいれば良かった。

頭の隅でそんな考えが浮かんだ。