撮影終了後、荷物を取りに入った控え室でなり続ける私のスマホ。
「…本部長?」
画面に映るのはボーダー本部長の名前。
少し憂鬱な気持ちで電話を取れば、私の心を掻き乱す優しい声音が聞こえた。
もう随分長いこと聞いてなかったように思えるその声に、胸の奥が抓られたような感覚に襲われる。
電話の内容は短くて、「現在交戦中の迅と嵐山隊に合流してくれ。」そんな業務連絡みたいなものだった。
通話が切れて無機質な音がなり続ける端末の電源を切った。
トリガーを起動して、送迎係の人に事情を説明して急いで現場に向かった。
「…もう終わってんじゃん。」
「うわ、苗字まで引っ張って来るとか、本部長容赦ねー。」
トリガーを解除して撤退ムードの出水君が嫌そうな顔をして私を見る。
「名前、来てくれたのか!撮影で疲れてるのにすまないな。」
「いえ、来ただけで何もしてないので。」
嵐山隊長にそう返せば、たった今終わったところだ。と教えてくれた。
「…とりあえず、報告しに本部に戻ろう。名前も本部に行くだろう?」
「はい。荷物を本部に運んでもらったので…。」
「そっか、名前もう本部住みじゃないもんな〜、」
戦闘でいい働きでもしたのか、上機嫌の佐鳥に絡まれた。
苦笑いでかわしながら私は本部へと向かう。
「…報告は以上です。」
「そうか、御苦労。報告書は明日でいい。気をつけて帰ってくれ。」
「はい。」
嵐山隊長と本部長のやり取りが終わり、私達は帰宅しようと会議室を出ていく。
「…名前、」
「…はい、なんですか?」
「…話がある。」
本部長に呼び止められて、室内に二人きりになる。
久しぶりのせいで緊張してしまっている私に、優しく声をかけてくれる。
「名前、元気にしてたか?」
「…はい、」
約一年前、嵐山隊を抜けると同時に私は本部から出て一人暮らしを始めた。
それから私は忍田さんを避け、極力会わないようにしてきた。
「…そうか、たまには食事でも行こう。」
気を使っているのがオーラで丸わかりだった。
喉の奥から何かが込み上げてきそうで、目頭が熱くなって視界がぼやけた。
それを隠すように頷いて会議室を出る。
扉を背に蹲る。
溢れる涙を抑えようと目を抑えるが、次から次へと溢れてしまってどうしようもない。
背中から感じるオーラのせいで胸がどんどんと締め付けられる。
こんな事になるなら、あの日死んでいれば良かった。
頭の隅でそんな考えが浮かんだ。