44.That visible one.

「あっ、嵐山隊長!一緒に入りましょ。」

作戦室の前で立っていた名前が俺の存在に気づいてそう言った。

「…ああ、」

「嵐山隊は皆真面目で困っちゃいますよ〜、」

作り笑いで軽口を言う彼女は、一年程前、木虎の入隊後嵐山隊を抜けた。

「苗字先輩!遅いですよ、今日は書類整理をして貰うって言ったじゃないですか!」

「木虎〜、相変わらず生意気だねぇー。覚えてたからそんなに怒んないで〜。」

ヘラヘラとしている名前の態度に木虎は今にも怒りだしそうだった。




名前をエースに据えて戦っていた当時、嵐山隊はA級四位に居た。

名前を落とそうとよってくる敵を佐鳥が狙撃、俺と充で二人の援護。そのフォーメーションで大体勝っていた。
と言っても、名前ありきの隊。
その上広報の仕事もやっていたので名前への偏見があった。

何回目かの入隊式。
いつも通りに進めていた名前に模擬戦を挑んできた新入隊員が居た。

木虎藍。

勝気な笑顔で近づいて、顔だけじゃない所を見せてくれ。とふっかけたのだ。

止めに入ろうとした俺を制して、名前は模擬戦を受けた。

それも、ギャラリー有りで木虎が勝ったら4000ポイントを譲る。という特別ルールも設けて。

結果は名前の圧勝。

木虎は瞬殺され、ギャラリーは大人気無いと野次を飛ばす者も居た。

そんな中決して大きいわけでは無いのに、名前の声が会場に通った。

「嵐山隊は広報も完璧にこなした上でのA級なの。ちょっとセンスあるからって舐めないで。」

しんと静まり帰った会場になんとも言えない空気が流れた。

その後、騒動を聞きつけた本部長が現れ、名前と木虎はお叱りを受けていた。

入隊式が無事終わり、後片付けをしていた所に木虎が現れた。

「…まだ何か?」

珍しく嫌悪感丸出しで相手をする名前に木虎は少し気圧されていた。

「まぁまぁ、そう邪険にするなよ。」

俺が間に入れば名前は渋々と言った感じに表情を緩めていった。

「…木虎、だったな?どうかしたのか?」

「…あ、…えっと、」

もごもごとしている彼女に名前が言う。

「ハッキリ喋れー!」

「っはい!嵐山隊に入りたいですっ!」

「…え?」

「…おお、そうか。じゃあまず根付さんに…」

「いやいや!っえ?急じゃない?あんだけ嵐山隊馬鹿にしてたのに!?」

名前は相当頭にきていたのか、木虎の入隊を拒んでいたが、根付さんのお眼鏡にかなってしまった木虎は晴れて嵐山隊に入隊したのだった。

「…苗字先輩!その節は失礼しました!」

「…別にいいよ。私も公私混同しちゃってたし。」

そんな会話を経て、木虎と名前は仲を深めていき、ダブルエースを据えてスタートする。と思っていたのもつかの間、名前の突然の脱退で木虎が新エースになるのだが、未だに何故名前が隊を抜けたのかは分かっていない。

「…私にはチーム戦向いてません。」

その言葉が全てなのか、他に何かあるのか。

「…ってか、未だに一人で作戦室入ってこれないの?名前は。」

「っ、は!うるさっ!佐鳥うるさ〜!」

「本当に、変なところで律儀ですよね苗字先輩は。」

「…木虎まで言うの?だって、私もう嵐山隊じゃないじゃん!」

「出戻りすれば?」

「時くんまで!?いやいや、自分から辞めといて出戻りとか!そんなに神経図太く無い!」

「ふふっ、本当に律儀よね〜♪」

「っ、嵐山〜!皆が虐める!」

ただ一つ言えるのは、抜けても尚俺達は仲がいいということだけだ。