ローズ
 

「ん、ふっ、んう」

シノの頬を包み込んでいた左手は後頭部に回され、右手はだんだん這うように下へ降りて行く。その間も熱く激しいキスは止むことがなく、シノは息が出来なくて死ぬんじゃないかとさえ思った。しかし、息をも止めるような激しい口内を掻き回すようなこのキスが気持ちいい。頭がくらくらして、夢と現実を彷徨いそうになる。

「ちゅ、…もっと、キスいる?」

ソーが一度唇をほんの少し離して蕩けた表情のシノに聞く。
真っ暗闇の部屋の中で銀色の糸がソーとシノの唇を切れそうで切れない細さで繋げていた。

「ん…もっといる…」

シノはソーのたくましい首に両腕を回して自らソーの唇に噛み付いた。

シノの下肢へ伸びていたソーの手はシノのズボンに手をかけ脱がせる。キスに夢中のシノは脱がされるのを自覚しながらもソーに身を託してされるがままだった。

「ん、ふぁ…ソー、ソー」

たまに唇を離しては譫言にソーの名前を繰り返し呼ぶ。その声は今にも溶けそうなほど熱く甘い。

「どうした?」
「ソー…おれも、すき。すきだよ、ソー」

いったん、ソーはシノにキスをするのも、ズボンの中に滑り込ませる手も止めた。
シノの気持ちは前々から自分を見る目と態度で分かっていたが、言葉にされるのがこんなにいいものだとは思わなかった。全身をなにか熱いものが駆け巡るような、心臓が今にも飛び出していってしまいそうな喜びに襲われている。

「やっ、なに、かたいぃ…」

シノの陰茎に押し付けていたソーのそれが、さらに興奮して熱く、硬くなってしまうのは当然のことである。

「うぁっ、ふぁ、あっ」

トランクス越しに二人の陰茎をソーの大きな手のひらに包んで擦り合わせる。しっかり勃ったソーのそれと、やんわりとキスだけで反応しつつあるシノのものを溶かすように、優しくゆっくりとまとめて撫で上げた。

シノのペニスが熱を帯び芯を持ってきたら互いのトランクスをずらして剥き出しになったペニスに直に触れる。あまりの快楽にシノの腰はベッドから浮いて自らソーのものに擦りつけた。

「シノ、シノ」
「あっ、ソー…っ、ひぁ」

ソーは扱いている手とは反対の手を下肢に滑らせシノの臀部の窪みに触れる。しかし乾いたそこがソーの指の侵入を許すはずもなく、ソーは早々にシノのペニスを扱いて射精させるとソーの腹に飛び散った精液を指で掬いもう一度窪みに触れた。

「おしり…やめ、きたないぃ…」
「汚くねえよ。綺麗だ」
「ば、ばかぁ…っ」

窪みはソーの指を一本、スムーズにどんどん飲み込んでいく。半泣きで顔を真っ赤にして現実を否定するかのように首をゆるゆると振るシノだが、自分のアナルがソーの指を飲み込む光景はしっかり見ていた。

「ほら、指ぜんぶ埋まったぜ」
「い、ちいち…っゆうなぁっ…は、あっ」

普通ならばそこは排泄する為だけの場所だが、初めて味わう異物感にシノは徐々に快楽を感じてしまった。ソーは一本の太い指で中をじっくり掻き回し広げ、慣れてきた頃に二本目、三本目と指を侵入させる。それに比例してシノの喘ぎ声がどんどん大きくなり、先ほど射精したばかりだと言うのに天井を向いたシノのペニスからは残った精液を吐き出すように先走りが溢れ出している。

「ひんっ、ん、あっ、ひ」
「シノ…俺も我慢できない、挿れるぞ…」
「うんっんん、きて、きて」

ソーはシノの中から指をちゅぽ、と音を立てて引き抜く。代わりにしっかり猛り立った体格に見合ったサイズのそれを窪みに押し当てた。
シノはソーの首に回していた腕にさらに力を込めてこれからくる衝撃に備える。

「シノ…」

耳元で熱い息とともに囁かれた言葉に背筋がぞくん、と反る。それと同時にゆっくりと慎重に侵入してきたソーの長大なペニスにシノは息が止まりそうになった。
先ほどの指とは比べものにならないほどの太さと熱。じわりと額には玉のような脂汗が滲む。

「はっ、あ、は、くる、し…っ」
「まだ半分も入ってない、もう少し頑張れ…」

さっきは指では届かなかったところが既にソーのペニスで開拓されているのに、まだそれは奥へ進むと言う。快楽と苦痛に挟まれながらシノはぐっとソーの肩に噛み付いてそれらを噛み締めた。目尻には涙が溜まっている。ソーの首に回す手も汗でびっしょりだった。

「は、くっ、はぁ、あ」
「シノ、締めすぎ…もっと力抜け…」
「む、りぃ…っ、はひ、はぁ、おっき…すぎるう……あぁっ、なにもっとぉ…ん、おっきくしてるのぉ、ぁあっ」

シノの無意識の誘惑にソーはまた興奮して、力を抜かせるどころかさらに締めつけさせる結果に終わる。

なんとかギュウギュウにきついそこにかなりの時間をかけやっとの思いで根元までの挿入を果たした。

「は、シノ…、全部入った」
「だからあ…っ、いちいち、ゆわなくていいっあ、あっ」

入った途端、ソーはシノの中でゆるゆると腰を動かす。シノはその微かな動きにさえ感じてしまうほど敏感になっている。
下半身に集まる熱は脳をうまく機能させず、目の前の美しい男を求めるばかり。シノは理性と欲の狭間でくらくらとあまりの快感に目眩がした。

「ふは、シノ…腰揺れてる、気持ちいい?」
「あっ、あ、あぁっ」

慣れてきた頃合いを見計らってソーは激しく甚振る。ソーは人嫌いの癖して、なんと男を抱いた経験があるのだ。一応男が感じる所は心得ている。ソーはその一点を擦るようにシノの細い腰を抱き揺する。激しく肉のぶつかり合う音が月明かりに照らされた部屋に響き、シノからは荒れた息と甘い嬌声が漏れるばかりだ。

「あんっ、もっ、いく…いくう…っあっ」
「はっ、は、俺も…」

ラストスパートに入ったのか、ソーは激しく力強く、じっくりと熱を打ち付ける動きから高速でピストンする動きに変える。シノに噛み付くようなキスをしかけ、そのままソーはシノの中で果てた。シノはその熱い飛沫を受け止めきれず、アナルの縁から吐き出された精液をこぼす。同時にシノもソーの割れた腹筋に吐精した。

「は、あ…あ、おなか、あついい…」
「いい子だ…もう少し頑張れるな?」
「あっ、うそ、まだっ、あぁっ」

その晩、シノの甘い嬌声は止むことがなかった。





カーテンが開かれっぱなしの窓から朝の日差しが寝室を照らす。その眩しさから、シノは重い瞼を上げた。

「ん、う…ソー…?」

その広いベッドの隣にも寝室のどこにもソーはおらず、シノは眠い目を擦りながら上体を起こす。と、同時にソーは花瓶を持って部屋に入ってきた。

「起きた?」
「んう…いま…それ、なに?」
「バラ」

そんなのは見たら分かる、とシノは思ったが寝起きで未だはっきり覚醒していないので思うに止めた。
ソーの持つ白磁の細身の花瓶には真っ赤なバラと桃色のバラが一輪ずつ刺してあり綺麗に咲いている。精霊と見紛う程の美しい男がそれを持つとなんとも絵になるがガラではない。

ソーは花瓶を持ったままシノがいるベッドに腰を下ろす。バラの香りがすん、と鼻をくすぐった。もう一度、もう一度と何度も嗅ぎたくなるようないい匂いである。

「これはお前にだ」
「え、くれるの?」

ソーは一つ頷いて花瓶ごとバラをシノに手渡した。

「本当は昨日渡そうと思ったけど、その…舞い上がった」

少し照れ臭そうに言ったソー。夜、風呂にも入らず食事もせず行為に耽ったことを指しているのだろう。
シノがもしF落ちして自分のところへ慰められに来たらこれを渡して告白しようと思ったと話すソーにシノは喜びと驚きが相舞う。

「改めて言う。俺と付き合え」

一切の視線を逸らさず、否定は許さないと言う真っ直ぐなその言葉に返す言葉はただ一つ。

「し、幸せにしてくれないと出てってやるう…」


二つのバラには意味がある。赤いバラは情熱に燃える愛、桃色のバラは愛の誓い。二輪でこの世界は二人だけのものだと意味する。

魔法がかけられたそのバラは、二人の愛が続く限り永遠に枯れることはない。





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