竹馬の友
とりあえず四大行、とできればその応用をマスターするまでシャルには会わないことにした。別に今後一切関わらないとかじゃない。
ただシャルとその仲間には旅団容疑がかかってるし、この先も友達を続けていくなら私も強くなった方がいいかな〜って。ほら、シャルはもう四大行出来るみたいだし……まあ、つまり仲間達も出来るわけだよね。
その、未来の旅団が怖いとかじゃないです、ホントに。

「オーラをキュッとしてバッ!と出す感じ。これが練だ」
「わかりません」

ナズナさんはやっぱり俺、教えるの向いてないな…とか言い始めた。修行中にそんなこと言わないで。
シャルと会ったあの日から修行を続けた結果、纏は以前より格段に上手くなった。
といっても淀みが無くなったくらいで「あいつ念能力者だな」とわかる程度の纏だ。それでもぱっと見て下手だと思われることはない、とナズナさんに言われたのでいいだろう。

そんな私の次なる課題は練だ。
ナズナさんの説明が雑すぎてやり方はわからないが、練というのはオーラを生み出すものらしい。

「そうだ、爆発だ」
「は?」
「オーラをキュッとした後、爆発させるイメージでいけばいい」
「あの、まずキュッがわからないんだけど」
「オーラを溜めるっていうか……うん、やってみな。何事も挑戦だ、やる前から諦めるな」
「えー、何かっこよくまとめてるの?」

文句を言うがナズナさんはそれを無視して早くやれと言わんばかりに私を見る。仕方ない、やってみよう。
まず、オーラをキュッとして……ていうのはわからないから体内にためるイメージでいくことにした。
オーラを丸い玉みたいに溜めて……えーっと、爆発ってことは体外に出す感じ?
頭の中でイメージし、それを実行してみた。

「!」
「あ、なんだ出来たじゃん」
「えっ今の!?もう終わったよ5秒も出来なかったよ!」

溜めて爆発、をやってみたらオーラが普段以上に増幅したのがわかった。
しかしそれは5秒ももたず…、いや5秒どころかほぼ一瞬だ。一瞬だけ強いオーラを感じた。

「今のが練だ。修行を積めばもっと長く、強大なオーラを生み出せる。そのオーラを利用したのが発だ。そして発の応用がお前の言う必殺技、念能力」
「…………えっと、難しいんだね」

つまり私が作りたがってる必殺技は、まず練を完璧にして発を覚えて、それをさらに完璧にして初めて出来るってことか。
うーん、念能力までの道は遠いなぁ。

「とりあえず念は基礎が大事っていうのがよくわかったよ」

「念じゃなくても何だってそうだろ。強くなりたいなら地道に修行して頑張れ」

四大行って予想外に難しい。
でもナズナさんの言う通り地道にやっていくしかないので、まずは練を5秒以上出来るよう頑張ろう!と意気込んで修行を続行した。
そしたら練をやり過ぎて疲労がたまって倒れて次の日の修行はなしになった。馬鹿だ私。

***

練の修行を始めて二週間が過ぎた。未だに5秒程度しかもたないが、オーラの量は以前より確実に増えたと思う。
というわけで、コップ(欠けてるけど気にしない)に水をギリギリまで注ぎ、集会所の観葉植物から摘んできた葉っぱを浮かべる。

「ナズナさん!今から水見式しますよ、誰も私を止められませんから!」
「あ、うん。勝手にやれば?」

えっ、なにそれ冷たい。別に止めてほしいわけじゃないけど、もう少し何か言う事があるんじゃないの?
と思ったが、それを言っても適当にあしらわれるだけなので黙って練を始めることにした。うわー、ワクワクする!

――必殺、練!

「………………あれ、変化あった?」
「…………ちょっともう一度やってみて」

――もう一度、練!

「!わかった強化系だ」
「え!?私わからなかった」
「もう一度やってみな?お前の練って微か過ぎてわかりにくいよ」

――失礼な、練!

「…あ!ちょっと水こぼれた!」
「ほら、やっぱり強化系だ」

………………いや、変化微妙すぎるだろ!
系統がわかるまでに3回必要って私の練はどれだけ弱いの。
自分的に練は結構上手くなってきた、と思っていたところでこの仕打ちはひどい。いくら出来る時間が短くてもオーラ量は増えてきたはずなのに…。
と落ち込む私をよそにナズナさんは明るく話し出した。

「よかったな。強化系って一番戦闘に向いてるから、普通に相手殴るだけで倒せるぞ」
「……え?あ、そうか。バランスよく身体強化とか出来るんだっけ」
「そう、攻撃力と同時に防御、治癒能力も上がるからな。一応、放出と変化も習得出来るし能力とか作れるけど、別に作らなくていいんじゃない?強くなりたいなら強化系だけ極める方がいいと思う」

ナズナさんは六性図を描き、強化系・放出系・変化系を指しながら言う。
えーっと、確か自分の系統と近い系統は習得しやすいんだよね。私は強化系だから隣り合う放出・変化も習得しやすい。
ふぅん、改めて考えると戦闘に向いてる強化系っていいな。ナズナさんの言う通り、強くなるだけならこれだけ極めた方がいい気がする。
そもそも念の才能ないのに他の系統も習得するぞ!なんて欲張ってもしょうがないし。

そういえば漫画ではゴンが強化系だっけ。主人公の系統なんだからきっと優遇されてるんじゃない?というか強化系って筋肉がすごくなるイメージがある。
どの漫画でもパワータイプって共通点あるよね。マッチョで戦闘が得意でちょっと馬鹿………あ。

「強化系ってことは私、単純なのかな?」
「は?何言ってんの」

ナズナさんは急に何言い出すんだこいつ、という顔をする。

「でも、強化系って単純な人がなるんだよね」
「何だその偏見」
「えっ!違うの?あれ、誰かがそんなこと言ってなかった?」
「いや、俺は初めて聞いたけどな」

あれー?おかしいな、漫画で強化系=単純みたいなこと言ってなかったっけ。
系統ごとにこういう性格が集まる傾向が〜とかあった気が……。

「変化系が嘘つきってのも知らない?」
「お前今、変化系の奴ら敵に回したぞ」

ええ?おかしいな、誰が言ってたんだっけ?

[pumps]