怒りのデスロード
何かがおかしい。
「よし、じゃあ横一列に並んで番号言ってみようかお前ら」
百歩譲って私の隣に牧師コスプレのおじいさんがいるのは別にいい。
でも。
「は?何言てるねワタシは嫌だよ」
「っ」が言えてない小柄な少年とか。
「おい、ジイさん。俺らは念の修行のためだけに集まってんだぜ?」
チンピラっぽい雰囲気のお兄さんとか。
「フィンクスの言う通りだ。俺らは念の指導以外であんたの言う事を聞くつもりはない」
ちょっと怖い顔の大柄なお兄さんとか。
「ねぇ、なんで今日は第四地区?そもそもなんであたし達が来なくちゃいけないわけ?」
ちょっとキツめな女の子とか。
「腹減ったな……ジイさんなんか食うもんねぇのか?」
アフロとか。
「オイ待てそこじゃねーだろウボォー。ジイさんの隣見ろよ」
侍っぽい恰好のお兄さんとか。
「あの、牧師さん。その子は?」
比較的落ち着いてる背の高い女の子とか。
「師匠、俺達は強くなりたくてあなたの指導を受けているんです。まさか彼女も修行に加えるわけじゃないですよね?」
……この間もおじいさんと一緒にいた黒髪の男の子とか。
「ねぇ、なんでセリがいるの?おじいさんと知り合いだったの?」
……………シャルとか。
待って、本当にどういう状況?急展開すぎてついていけないんだけど。
「いいから番号言えって確認してるんだから。ほらフェイタン」
「……………嫌ね」
「オイ、フェイタンお前1番っぽいぞ」
「3」
「なんで言うのさフランクリン。あたしは言わないよ」
「よし!5!」
「お前も言うのかよ!…ったく、6」
「え………7?」
「師匠、質問に答えてください」
「セリ、俺の質問にも答えてよ」
いや、なんだこのグダグダ。9人いるのに3番から始まって4番抜かして7番で終わったぞ。
「おいおい、来てるのはフランクリンとウボォーギンとノブナガとパクノダだけか?セリ、お前もちゃんと並んで番号言わなきゃ駄目だろーが」
「…えっ、なんで!?」
「なんでってお前、ナズナから聞いてないのか?今日からコイツらと一緒に修行だって」
「……………は」
おかしい絶対おかしい。
私は将来、旅団に遭遇しても無事に生還するために強くなろうとしてるのに、どうして旅団(予定)と一緒に強くなることになってんの?
いや、いやいやいやホントにどうしてこうなったんだ。
確かいつも通り練の修行をして、私がすぐに疲れるから疲労回復のために絶の練習もした方がいいって言われて。
それでどうなったんだっけ?
ちょっと現実逃避もかねて最近の回想をしよう。
一昨日、ナズナさんに強化系ならある程度格闘術が出来るようになるべきと言われる。
「でも俺は指導出来ないから」と言われ、どうしたらいいのかわからなかったので、とりあえずお手製サンドバックを殴ってみる。
昨日、ナズナさんとマラソン大会をしている時、また牧師コスプレのおじいさんと黒髪の男の子を見かける。
ナズナさんがげっ、と嫌そうな顔をした後「そうだ、オヤジなら…」とぶつぶつ言い出す。
知り合いなのかと聞いたら「もっと効率の良い修行が…」と返された。会話が噛み合ってなかった。
今朝、ナズナさんに教会もどきの裏に連れて行かれ、「此処で待ってろ」と言われたので待っていたら、牧師コスプレのおじいさんが現れたので挨拶をする。そのまま世間話。
現在、シャル含めた9人の旅団っぽい連中がやってくる。おじいさんの爆弾発言。
結論、ナズナさんに仕組まれた。
「聞いてない、全然聞いてないです私」
回想を終了した私はおじいさんの問い掛けに自分は何も知らなかったという顔で答えてみた。
ナズナさんも事前に一言くらいなんか言ってくれよ。待っていたら旅団が来たとかひど過ぎるだろ。
「そうか、じゃあ今言ったからいいだろ。一応紹介しとくけど、右からフェイタン、フィンクス、フランクリン、マチ、ウボォーギン、ノブナガ。それからパクノダ、クロロ、シャルナークだ。これから一緒に修行するんだから名前くらい覚えとけよ」
それだけ!?一緒に修行するの確定なの!?
「オイ、人の名前勝手に言うなよジイさん。結局そいつ誰だ?」
侍っぽい恰好のお兄さんことノブナガが言う。ていうかノブナガってあのノブナガ?
じゃあやっぱりこの集団は時期旅団なの?
他の面々も同意見なのか誰も言葉を発しない。そりゃ、修行しに来て急に知らないガキが居たらそうなるよね。
そんな空気の中、固まりながら実は忙しく思考をめぐらせる私を尻目におじいさんはノブナガの問いに答えた。
「コイツはセリ。俺の……………孫だ」
沈黙と共に全員の視線が私に集まる。
「え!セリっておじいさんの孫だったの!?」
「…え、え!?私のおじいちゃんだったの!?」
「なんかそいつも驚いてんぞ!?」
いやいや普通に初耳だから!
おじいさんの発言に私やシャルやノブナガだけでなく他の旅団(仮)メンバーもなんだと…?という状態になる中、おじいさんが再び口を開いた。
「………………っぽいものだ」
なんだそれ!