流星街にて
皆の協力でなんとか48億ジェニーをかき集めた私は流星街のブラックジャックによる治療を受け、完全復活を遂げた。
あの狭かった視界も元通り。身体はどこも痛くないし、傷も残っていなかったのだから本当にすごい。

この人がいなければ失明どころか死んでいたかもしれないと感激し、号泣しながら動くようになった右手でブラックジャック先生と固い握手を交わした。
ブラックジャック先生も満面の笑みを浮かべていたが、なんだかんだで大金が手に入ったからかなと邪推してしまうのは仕方のないことだと思う。

そんな私達をスズシロさんに頼まれて小切手を届け、迎えに来てくれたハギ兄さんはつまらなそうに眺めていた。
どうでもいいから早くしろよと帰りたいオーラを出し続けるあの人は、お金は貸してくれたが正直なところ私が死のうが助かろうがどっちでも良かったんだろう。
そんな冷たいハギ兄さんが帰りの飛行船で「まぁ、治ってよかったね。コンラードが心配してたよ」なんてさらっと言うものだから、自販機で買ってもらったココアを噴き出してしまった。

「コンラードさん、生きてるの?」

慌てて座席に備え付けの紙ナプキンでココアを拭いながら、驚いて聞くと「ピンピンしてる」と返ってきた。
クロロに狙われたというのに意外だ。うわぁ、どうせなら死ねば良かったのに。
と心の中で毒づいた直後に「どうせなら死ねば良かったのにねぇ」とハギ兄さんが不愉快そうに言ったのでビクッと肩を揺らす。
ハギ兄さんは私の様子には触れず「色々と説明するのめんどくさいからセリちゃんは手術が失敗して死んだって伝えといたよ」とまるで感謝してくれとでも言いたげな声色で話した。おい待て。
いつの間にか死んだことにされるのって二回目じゃないか?と過去の記憶を引っ張り出す。
まぁ、正直私から連絡を取る術はないし、その気もないのであの人とはもう二度と会わないから問題はないかもしれないが。

飛行船の窓から見える景色をぼけっ、と眺めながら私は何時までも心の中で生きてるからね…と思った。


***

48億。
推定18歳の私が背負った借金の総額である。こんな18歳他に絶対いない。
普通なら一生のうちに返すことができずに自殺でもしてしまいそうな金額だがそんなことはできない。皆が態々貸してくれたのだから必ず返さなくては。
手っ取り早く金を集めるなら天空闘技場あたりで戦って稼ぐのが一番効率が良いが、200階に到達した時にファンクラブの方々とあんな感動的なお別れをしたのだから今更戻れない。今回は完全に金目当てだし。
そう思った私は流星街に戻ってすぐに集会所のメガネの元へ向かった。そして一言。

「暗殺以外で一番報酬の良い仕事お願い!」

目をパチパチさせて「どうしたの、急に」と聞いてくるメガネを「理由なんてなんでもいいでしょ!」と急かす。
私の借金返済生活が幕を開けた。

[pumps]