怒りのデスロード
どうして孫とかそういう話になるんだ。そもそも私おじいさんに名乗った覚えないんだけど……あ、ナズナさんが勝手に言ったのかな?というか。

「あのー、ナズナさんとおじいさんってどういう関係ですか?」
「じゃ、これからはセリを加えた10人で修行するからな」

うわ、無視だ。
隣に居て明らかに聞こえてるのに無視って。心なしか一部の旅団メンバーに同情の目を向けられてる気がする。やめろ。

「と言っても今日の修行はチーム戦になるからな。新しくセリも加わったんだし、まず親睦を深めな」
「えっ、無理!」

しまった反射的に返しちゃった!ていうかチーム戦って何!?

「チーム戦って何するんだ?」

私が思った事と同じ事をちょっと怖い顔の大柄なお兄さん、フランクリンが聞く。
おじいさんはすっ、と目を細めると私達全員を見て言った。

「かくれんぼだ」

それチーム戦じゃないじゃん!どっちかというと個人戦じゃん!

「かくれんぼぉ?何だそりゃ」

アフロことウボォーギンが言った。この人インパクト強すぎて一発で名前覚えたわ。
おじいさんは指を二本立てるとかくれんぼの説明を始めた。

@基本的に二人一組で行動して他のチームを捜す。
A積極的に移動して捜してもいいし、捜さずに建物などに隠れていてもいい。
B見つけた、見つかったら逃げるか相手チームと戦う。戦う場合は相手チームに負けを認めさせれば勝ちになる。
C負けたチームは今居る場所に戻ってくること。
D終了条件は残り一チームになるまで。

あれ?私の知ってるかくれんぼと違うぞ!

「へぇ、面白そうだね」

本気かシャル。

「その子も入れて二人一組なの?誰がその子と組むのさ」

私と同じか少し年上くらいの女の子、……マチが私に視線を向けながら言った。私もそれが不安だよ。

「だから、始める前に親睦を深めろっていってんだろ?かくれんぼはなぁ、念が重要なんだぜ。お互いの系統や得意なものを知っておくのがかくれんぼを上手く進めるコツだ」
「んなもん馬鹿正直に言うわけねぇだろ。つーか自分の系統むやみに話すな、ってあんたが言ったんだろーが」

チンピラっぽいお兄さん……えーっと…フィンクス?が尤もな事を言った。この人一番怖いから一緒に組みたくないなぁ。
ていうか、なんでかくれんぼが念使えないと出来ない遊びみたいに言われてんだ。ツッコむのはそこからだろ。

「そりゃ、外で命懸けの戦いする時のためだよ。かくれんぼは、あくまで遊び…じゃない修行だ。命のやり取りまでしないんだから気楽にいけ。嘘言っても全然いいから。はい、30分の親睦会ターイム!」

言いながら、めんどくさそうに手を叩く。ええええ何それこの状態で放置しないでよ。

「ワタシ嫌ね。絶対そいつと組まないよ」

おじいさんの合図のすぐ後、小柄な少年フェイタンが私を指差して言った。あまりにひどい。

「俺は……セリだよな?セリがどのくらい戦えるかだな。場合によっては組んでもいい」

黒髪の男の子、クロロだ!彼はまさかの発言をしてきた。しかし私が答える前にシャルが口を開く。

「セリ、念へったくそだよ。今はまだマシだけどちょっと前まで纏ひどかったんだから」
「ちょ、それ言わなくていいじゃん。今は出来てるんだし」
「今だってそんなに上手くないじゃん。どうせ練も苦手なんでしょ?」

何故それを……!そんなにわかりやすく念下手だろうか私。確かに才能はないけど。
クロロはそれを聞いてじゃあ無いな、という反応になった。コイツもひどい。

「なんだお前ら知り合いか?」

私とシャルの掛け合いを見てノブナガが不思議そうに聞いてくる。
それに対して、このメンバーの中じゃ一番まともそうな年上の女の子、パクノダが思い出したように言った。

「よくシャルが言ってる第四地区の子、ってセリのことじゃない?セリは第四地区で暮らしてるんでしょう?」
「えっ?はい」
「ああ、なるほどお前がそうか。へー、シャルが嬉しそうに話すからどんな奴かと思ったら、なぁ?」
「だなぁ、友達だって言うからてっきり男かと思ってたけど女だったのか!」
「ちょっと!ノブナガもウボォーも何なのさ」

ニヤニヤするノブナガとウボォーギンにシャルがちょっとムッとしたように言う。この年上のお兄ちゃん達が茶化してきてイラつく感じは私にも覚えがあるので特に口は出さずに見守る。
ノブナガは頭を掻きながら相変わらずニヤニヤして答える。

「いやぁ、別に。意外だな〜ってだけだよ、な!ウボォー」
「そうだな、なぁセリ、お前系統何だ?俺はなぁ……具現化系だ!」
「え?嘘ですよね」
「!?な、なんでわかんだよ!」

いや、そんな明らかに強化系な見た目で具現化とか言われても…しかもすっごい動揺してる。
即答した私と焦るウボォーギンを見てノブナガが笑いながら言う。

「わかりやすいんだよオメーは!セリ、お前の言う通りコイツは強化系だよ」
「オイ!なんでバラすんだよ、ジイさんも嘘ついていいっつってたろーが!」
「バラすも何も言ってすぐバレてたじゃねーか!」
「あぁ!?くそっ、セリ!ノブナガも強化系だぜ」
「はぁ!?何バラしてんだテメェ!」

そのまま二人は取っ組み合いの喧嘩を始めた。何だこの状況は。なんか普通に系統知っちゃったんだけどどうしよう。

「えーっと私も強化系です」
「えっ、セリ強化系なの?ていうか何普通にバラしてんの」
「いや、二人の系統知っちゃったから…」
「ええ?だからって言う事ないのに。馬鹿だなぁ」

なんか今日は三割増でシャルがひどいんだけど何が起きてるの?
私が強化系だと知ったノブナガとウボォーギンは喧嘩を止めて意外そうな顔をした。

「お前強化系なのか?へぇ、シャルみたいに操作系かと思ったぜ」
「なんでウボォー勝手に言うわけ!?わざとでしょ今の!」
「あ、やべ」

何だこのコントみたいなのは。
自身の倍近い体格のウボォーギンにシャルが果敢に挑んでいるのを見ているとノブナガがこちらへ寄ってくる。

「でも強化系ねぇ、なら見込みあるな。同じ系統同士仲良くしようや」
「はぁ、見込み…?」

ってなんぞや。
ノブナガは私の顔をじっ、と見た後、満足そうに頷きながら言った。

「まぁ、俺の勝手な意見だが強化系は根性ある奴が多いからな。お前、今は念下手でもそのうち絶対に上手くなるぜ、強化系だからな!」

すごいホントに完全な私見だ。絶対そんなことないだろ。
しかしこれは、根性ある=才能はないけど努力した分だけ報われるよ!っていう意味で受け取っていいのかな?それなら普通に嬉しい。

「ありがとうございます!私、修行頑張ります」
「おぉ、頑張れ!」
「俺も応援してやるよ!なんなら修行相手になってもいいぜ」
「ありがとうございますウボォーギンさん!」
「ウボォーでいいって」

なんか人生相談みたいになってきた。ていうか私、結構親睦深めてるよね?この二人限定だけど。
なんだ意外と旅団っていい人いるんだな…。

「痛っ!ちょ、今なんか背中に当たって…………シャルお前だろ」

二人と話してたら背中に石が当たった。後ろを向いたらシャルが石を持って立ってた。何事だ。

「ちょっと、呼ぶなら普通に呼んでよ」
「別に呼んでないけど」
「は?」

意味がわからない。
何がしたいのこの子……と思ってたら近くにいたパクノダが少し微笑ましそうに私とシャルを見て言った。

「シャルは拗ねてるのよ。今まで自分だけがセリと仲良くしてたのに急にウボォーとノブナガが割って入って来たから」

えっ、そうなの?ちらり、とシャルを見るとわかりやすく動揺していた。

「な、何言ってんのさパク!そんなわけないじゃん、ばっかじゃないの!?」

なんだその典型的なツンデレの台詞は。
と思っている間にもシャルは休む事なく石を投げてくる。ていうか、痛いっ!なんか一回に飛んでくる石の数が増えてる!

「ちょ、痛いから!念で強化して威力増してるでしょコレ!?」
「ちょっとシャル、やめなさい!」

石の速度がやばい。
普通に避けきれなくてどんどん当たるんだけど、ちょ、纏してるのにめっちゃ痛い!
しかも当たってるのは私だけじゃなかった。

「痛っ!ちょっとシャルあたしにも当たったんだけど!?」
「!ワタシに石当てるなんていい度胸ね。そこ動くなお前も同じ目にあわせてやるね」
「オイ!フェイタン俺に石当たったぞ!」
「うるさいね。当たるフィンクスが悪いね」
「はぁ!?ふざけんなよ!」
「オイ止めろフィンクスお前まで石を投げるな!」
「退けフランクリン!俺はフェイタンに」
「うおっ!?オイ誰だ今俺に向かって石投げたのは!お前かシャル!?」
「ウボォーには投げてないよっ!」
「いやだから私に向かって投げるの止めようよ!」
「シャルいい加減にし、痛っ!」
「あ、ごめんパク」
「なんでパクには謝んだよ!?もう石投げんの止めろ!お前のせいでフェイタンとフィンクスまで痛ぇ!!」
「邪魔ねノブナガ」
「退けノブナガ!」
「止めろお前ら!クロロお前もなんとか言って、オイ!誰だこの石投げたの!」
「あたしだ悪いねフランクリン!代わりにそれシャルに投げて!」
「師匠、セリはまだあまり念が上手く出来ないみたいですけど、俺達と同じ修行についてくるのは厳しい、っ!?誰だこの石危ないだろ、ノブナガか!?」
「俺じゃねーよ今のはウボォーだ!」
「悪ぃなクロロ!よーし、じゃ次はこれいくぜ!」
「お前もう普通に楽しんでんだろ!」
「ちょっと退いてよノブナガ!セリに当てられないじゃん!」

当てなくていいだろ!?
私に向かってシャルが石を投げまくっていたら、パクノダやマチやフェイタンに当たって、それにキレたフェイタンとマチがシャルに向かって石を投げて、それが新たな被害者と加害者を生んでいって……もう人が多過ぎてわけわかんないんだけど。

[pumps]