怒りのデスロード
「よし、30分経ったな。お前ら親睦は深められたか?」
「それどころじゃなかったです」
「つーか見てただろーがテメェ!」

おじいさんの言葉にクロロは冷静に答え、フィンクスはキレた。
他のメンバーも黙っているが全体的に険悪なムードが漂っている。……元はといえば私とシャルのせいなんですよね、本当にすいません。
とりあえず一つ学んだ。念能力者が石投げなんかしちゃいけない。

「で、誰と組みたいとかあるか?」
「あー、シャル。お前セリと組めよ、それがいいんだろ?」
「は?何勝手な事言ってるのさノブナガ。俺はセリと組みたくない」
「はぁ〜!?何なんだよお前、散々石投げてきたくせにいい加減にしろよ!」

ノブナガがシャルに向かって怒鳴る。ホントにいい加減してくれ、私のライフはもうゼロだから。
そのまま揉めている二人を止める事なく、しばらく眺めた後おじいさんは腕を組みながらボソッと言った。

「強化系と組むと有利だぞ〜」

!?
今この場に居る全員がそんな反応になった。急に何を言い出すんだこの人。
シャルとノブナガも言い争いを止めておじいさんを見る。全員に注目されたおじいさんはゆっくりと口を開いた。

「いいか?かくれんぼは絶が重要になる。でもお前らの中にはまだ絶が苦手な奴もいるだろう」
「…うーん、確かに絶はまだちょっと」
「俺も絶は自信ねぇな…。でも、それで見つかっても戦って勝てばいいだけじゃねーか」

シャルとウボォーさんが言う。てっきり旅団はみんな四大行完璧だと思っていたけど違うらしい。
私も絶はまぁまぁって感じだし、ちょっと親近感湧いたぞ!
そしてウボォーさんのいかにもパワータイプな意見におじいさんは頷いた。どういうことだ、と首を傾げる。

「今のお前らは念を使えるとはいえ個々の能力があるわけじゃない、基礎の基礎しか出来てない状態だ」
「個々の能力?何だそれ」
「基礎の基礎てどういうことね」
「ちょっと、あたし達そんなの聞いてないよ」

うわ、おじいさん本当に教えてないんだ。シャルも四大行知らなかったし、ちょっとアバウト過ぎないか?
おじいさんは教えてなかったっけ?という顔をした後、何事もなかったかのように頭を掻きながら話を続けた。

「まぁ、それは後でな。で、今のお前らは多少体力の違いはあれど『念を使える』という事で能力値はほぼ全員同レベル。その横一線の中、戦闘向きの強化系は練・発を利用することで頭一つ抜ける事ができる」

それっぽい事を言うおじいさんに文句を言っていた面々も押し黙る。………そうだっけ?
別に練と発しかまともに使えない状態で戦うと強化系が有利ってわけじゃないような…。どの系統でも攻撃力強化は出来るだろうし。
まぁ、強化系は元から戦闘得意な人が多いイメージだから、個々の能力が無い状態では1番強そうな気はするけど。

「この中で絶が得意なのはパクノダとクロロだったな?」
「え?…はい一応」

急に問い掛けられたパクノダが戸惑いながら答える。

「よし、まずパクノダとクロロで組め。他の奴らはそれぞれ強化系と組むようにしろ。そうすれば全員フェアになるはずだ」
「えぇ?そんな決め方かよ」

ノブナガが面食らったように言う。
えーっと、絶が得意なパクノダとクロロのチームは最も気付かれる可能性が低いわけだよね。で、他の絶苦手〜普通組はおじいさん曰く有利な強化系と組む事で、見つかって戦うことになった場合戦力が均等になるように、ってことか。
えー、それじゃ私達は見つかるの前提で戦えって言うの?そりゃないよ、私まともに戦ったことないのに。
パクノダ・クロロ組いいなぁ、上手くいけば隠れてるだけで勝てるじゃん。

「セリさっきはひどい事言ってゴメンね。一緒に組もう」
「え、変わり身早っ」

強化系と組むと有利、と聞いたシャルが急に謝ってきた。お前調子いいな。
でも、なんで私と組もうと思ったんだろう?強化系抜きにしてもこのメンバーの中じゃ私って最弱だと思うんだけど。ウボォーさんとか強そうなのに。

「なんだ、やっぱりお前セリと組むのかよ」
「うるさいな、ウボォーと組んだら特攻した揚句自滅しそうじゃん」
「じゃあ、あたしはノブナガと組む」
「ならワタシ、フィンクスと組むね」
「…じゃあ俺はウボォーか」
「オイ!なんだよその反応!」

どうやらウボォーさんはすぐに特攻するタイプらしい。ああ、なんかそれっぽい。
確かにかくれんぼには向かなそうだ。自分から出ていってどうする。
というか、思ったんだけど私達がチーム決めでまた揉めそうだったから、強化系が有利なんて言ったのかな。
実際そのおかげですんなり決まったわけだし……おじいさん中々やるな。

「よし、誰と組むか決まったところでスタートする順番をくじ引きで決めるぞ!言っとくけど最初にスタートしたチームが1番有利だからな」
「スタートって…全員一斉に散るんじゃなく?」
「チームごとに3分置きにスタートだ」

そっか、それじゃ最初にスタートするチームは遠くに行けるし待ち伏せも出来るよね。
あれ?ていうか漫画でも何かで似たような事をやってたような気がするんだけど。

「修行とはいえ本気でいけよお前ら。勝ったチームには……」

なんだ何かあるのか?
と全員が固唾を呑んでおじいさんの次の言葉を待つ。

「初代かくれんぼマスターの称号を与える!」
「……………………」

うわ…いらない…。
全員の心が一つになった瞬間だった。

[pumps]