お父さん、狩りって楽しいね
三次試験の合格者は全部で26名(うち1名は死亡)らしい。

タイムアップとともに鳴り響いたブザー音とスピーカーから流れた聞き覚えのある声により、そう告げられた。
ちなみに私はクリア後、余った時間を寝ているかハンゾー先生とひたすら喋っているかに使っていたので、ギリギリまで終わったことに気がつかなかった。

そのまま全員塔の外へ出るよう指示されたので素直に従う。
移動中に随分減ったな、と他の受験生達を見るとキルア達を見つけた。すごいボロボロで可哀想だったので憐れみの目を向けていたらキルアにバレて腹パンされた。ちょっと暴力的過ぎると思う。

塔から出た私達を待っていたのは個性的な髪型をした背の低い男性だった。
私達への労いの言葉と今後の予定について簡潔に話した後、自分の横に運ばれてきた小箱を見て「早速だがクジを引いてもらう」と言った彼の声は三次試験の最後に聞いた声と同じだった。彼が三次試験の試験官だったのだろうか。

「このクジで決定するのは狩る者と狩られる者。この中には25枚のナンバーカード、すなわち今残っている諸君らの受験番号が入っている」

これを今からタワーを脱出した順に一枚ずつ引いてもらう、と三次試験の試験官(仮)は続けた。
まず一番から、と順番に小箱からクジを引いていく。狩る者と狩られる者ってなんだかすごくハンターっぽいが、どういうルールなんだろう。
あれこれ考えている間に順番が来たので私も引く。引いたカードには118と書いてあった。
全員が引き終わると三次試験の試験官(仮)はニィ、と口の端を持ち上げてルールの説明を始めた。

「それぞれのカードに示された番号の受験生がそれぞれのターゲットだ。奪うのはターゲットのナンバープレート」

それを聞いてすぐにもう一度引いたカードを見る。これ誰の番号だ。

「自分のターゲットとなる受験生のナンバープレートは三点。自分自身のナンバープレートも三点。それ以外のナンバープレートは一点となる。最終試験に進むために必要な点数は六点だ」

次に辺りを見回した。が、半数は既に自分のナンバープレートを外して隠しており、プレートを付けたままの受験生の中にも118番は見つからなかった。
くそ、卑怯な!と思いながら私も即座に自身のプレートを外してポケットに突っ込んだ。だって怖いじゃん!

「四次試験はゼビル島滞在期間中に六点分のナンバープレートを集めることが試験課題となる」

右手の人差し指と左手を使って六を示しながら、三次試験の試験官(仮)は言った。
なるほど、六点か。念能力者という圧倒的有利な立場にいる私は、不意をつかれない限りは殆どの人に勝てるはずなので余裕といえば余裕だ。
しかし私が絶対に勝てない相手であり、他人を気遣えずに無双しちゃうだろうヒソカさんがいることを考えると変なことに巻き込まれる前に、さっさと自分とターゲットのナンバープレート二枚で六点分を集めるのが一番理想的な合格の形となるだろう。
そのためには始まる前にターゲットである118番が誰なのかハッキリさせなくてはいけない。


説明を受けた後、私達は四次試験を行うゼビル島へ向かうためにハンター協会が用意した船に乗り込んだ。
到着は大体二時間後だと可愛いお姉さんが言っていたので、それまでに私のターゲットを捜そうと思う。

「ハンゾー先生!ハンゾー先生は何番引いた?私は118番だよ!!」
「おう、なんか元気良いなお前。俺は197番だ」

船に乗ってから一通りの説明をしてくれた可愛いお姉さんがそそくさと居なくなり、解散!みたいな流れになってからすぐに近くにいたハンゾー先生に引いたカードを見せつけた。
自分がターゲットではないと先に示され、かつ基本的に私に敵意を持っていないハンゾー先生は快く自分のターゲットを教えてくれる。こいつなら敵に回っても大丈夫だと私をなめている可能性もあるが。
ハンゾー先生の引いたカードを見てから今まで見てきた受験生を思い浮かべるが、さすがに個人の番号までは覚えていなかった。

「197って誰だろう。ハンゾー先生は分かるの?」
「まぁな、残っている受験生の番号は一通り頭に入れてある」
「なにその頭脳キャラみたいな答え」

これを誉め言葉と受け取ったハンゾー先生は気を良くしたらしく「ま、俺レベルになりゃ、このくらい朝飯前だぜ!」と満足気に笑った。私はそれを白けた目で見ていた。
このお喋りハゲ忍者はどうしてすぐに調子に乗るんだろう。スペック高いのにそれを台無しにするマイナスポイントが多すぎる。
カッコつけて「俺のことはハンゾー大先生様と呼んでくれて構わねぇぜ…」とかなんとか言ってきたが丁重にお断りした。

「他も全員覚えてるんだよね?じゃあさ、私のターゲットも誰か分かる?」
「ああ、こりゃアイツだ。名前は知らねぇが猿を連れてるあの受験生」

いや、誰だソイツは。
私のカードを見ながら「黒髪の奴だよ」とハンゾー先生は続けるがよく見ろ、黒髪なんてそこら中に溢れ返っているぞ。しかし、それ以外に大した特徴が出てこないらしい。とりあえずメモ帳に『118番、猿』と書いておいた。

[pumps]