生きねば
「ここで働かせてください!!」

なんて言いながら勢いで千も千尋もハ○オもビックリな土下座を披露すると頭を上げずとも目の前の人物が狼狽していることがわかった。

「ここで!働かせてください!」
「いえ、あの」
「ここで!働かせて!ください!」
「あのですね、セリさん」
「ここで!…………え?」

名乗っていないはずの名前を呼ばれ、驚いて顔を上げる。

「なんで名前を…?」
「そりゃ知ってますよ、ゾルディック家に客として訪れる人はそうそういませんからね」

そう答えるのはゾルディック家守衛のおじさん。そう、ここゾルディック家です。

先日「働かないの?」と麦わらのル○ィに焚き付けられた私は流星街を飛び出し、職探しを始めた。
けど、まぁ、普通に無理だよね。学歴空欄だし、生年月日すら適当だし。
結局私に残されたのは、ちょっと人には言えないようなヤバい関係のお仕事だけなのだ。そんなところの正社員とか絶対やだ。
選べる立場じゃないのは分かっているけど、でもそんなのやだ。

そう思って各地をフラフラしていた私は、途中スズシロさんからお届け物を頼まれていたので仕方なく訪れたゾルディック家の門の前で思った。もうここでよくね?
そして冒頭へ戻る。どうやら好都合なことに守衛さんは私のことを知っているようだ。

「なら話は早いですね。ここで働かせてください」
「え?いや、だからそれはちょっと」
「気合いと根性とガッツはまぁまぁあります!」
「それ殆ど同じ意味じゃ……いえ、ですから」
「学はありませんが、同郷の連中に比べれば一般常識はあると思います!お願いします!!」
「と言われましても、あたしゃ誰かを雇えるような立場じゃ………」
「あっ、じゃあ私の方からシルバさんにお願いしてくるんで」
「え、いや、待ってください。それなんか話がおかしいですよ。落ち着いて、一回落ち着いてください」

守衛さんが落ち着いた方が良いのでは?と思ったが「はい、深呼吸」と言われたので素直に息を吸って吐く。
何度か繰り返しているとなんかすごいことに気がついた。

あれ?冷静になって考えてみるとゾルディック家からした借金をゾルディック家で稼いだお金で返済したら意味なくない?
ゾルディック内でお金が循環するだけで私は結局一銭も返せないじゃん。

「あ……、あの、すみません、落ち着きました…」
「そうですか、よかった」
「はい、そして絶望しました…」
「そりゃまずい」

こんな簡単なことにも気がつかないなんて等々頭が回らなくなったか。いや、それは元からか。でもなんか悪化してる。
どうしよう、嫌だけどもう裏社会の用心棒で妥協した方がいいのかな嫌だけど。物凄く失礼だけどゾルディック家も結構妥協した方なんだよね。

ここまで地面に正座状態だったので立ち上がり、膝についた砂を払う。
困ったようにこちらを見る守衛さんにお礼を言ってから、静かに試しの門へと近付いた。

中には私の天敵ミケがいる。私を導いてくれミケ、と門を開けようと力を入れた時だった。

「セリ、お前………」
「おや、レオリオ君」

後ろから聞き覚えのある声がかかり、振り向くと変わったベストを着たレオリオが立っていた。

「あれ?なんでいるの?」

まさかレオリオが出てくるとは。ハンター試験が終わってから、というか私が脱落してからもう一ヶ月は経っているはずだ。こんなところで何を?
そんな意味を色々と込めた私の一言をレオリオは堂々と無視して「馬鹿野郎!!」と怒り出した。

「お前!まだ自殺なんか考えてたのかよ!!死ぬにしたって何もミケに食い殺されるような死に方を選ばなくても……!」

勘違いやめてー。

[pumps]