怒りのデスロード

「悪いな。手加減したつもりだったんだが、予想外に威力が強かったらしい」
「はぁ……あ、どうも」
「いや、大丈夫か?」

フランクリンがゴミに埋もれていた私を引っ張り出してくれた。
敵チームなのに親切ってどういうこと?なんだこの「子供に悪いことしちゃったなぁ〜」って空気は。

「ねぇ、さっきセリに何をしたの?」

シャルが尋ねる。なんか警戒<好奇心になってるぞ。一応、敵なんだけど。

「さっきのはオーラを飛ばしたんだよ、あー、アレなんだっけ?」
「念弾だ」
「念弾?」
「オーラの塊を飛ばす放出系の基本の技だ。少し前にジイさんから教わって、実際に人に使うのは初めてなんだが……」

私が記念すべき被害者第一号か。
フランクリンが言うには他のチームを捜していたら私達を見つけたのだが、修行メンバーの中でも年少の私達をボコボコにするのは可哀相だと思い、ちょっとビビらせるくらいにしようと念弾を撃ってみたら予想外に吹っ飛んだと。
そりゃまた優しいんだか優しくないんだか分からない話ですね、と口には出さずに思った。
同時に撃たれたという事実を再認識すると背中がズキズキと痛んできた。そういえば出血してるんだよね。
痛みに思わず顔が歪む。それに気付いたシャルが私の背中を見て「うわっ!」と言った。

「セリ、背中真っ赤だよ!」
「えっ、そんなに!?確かに痛いもんね!」
「オイ、大丈夫か?一度ジイさんの所に戻った方が…」
「そうだな、この傷じゃ続けるのは厳しいだろ……悪かったな、俺がジイさんの所まで連れていく」
「えっ、…」

な、なんかさっきからすごい親切だ……ホントに将来の旅団なのか?
フランクリンが申し訳なさそうな顔をすると、私に自分の背におぶさるように言った。おんぶ…だと?

「俺もついてくよ、一応同じチームだし」

シャルが言う。かくれんぼが始まる前はちょっと揉めたりしたけど、今は普通に私を心配してくれている。いいなこれ友達っぽい。

「俺もついていくぜ、途中で他の連中に遭遇したら危ねぇだろ?特にフェイタンとフィンクス」
「あー……」

ウボォーさんに言われて思い出した。結局フィンクス組とクロロ組はどうなったんだろうか?
その答えは意外なところから返ってきた。

「あいつらならクロロ達に負けたみたいだぜ」

後ろから声が聞こえ振り向くとノブナガとマチがいた。二人とも絶をしていたためか全く気付かなかった。マチは絶が苦手なんじゃなかったのか。
突然の敵チーム出現に警戒態勢に入る私達に向かってノブナガが言う。

「おっと!先に言っとくが俺らはやる気ねぇからな。そう身構えるなよ」
「はぁ?どういうことだよお前ら」

ノブナガを見た瞬間、戦る気満々だったウボォーさんが聞く。それに答えたのはマチだった。

「ここは第四地区。あたしらがいつも居る場所とは地理が違うし、住んでる人間も違う。慣れない場所じゃ戦いづらいし下手に暴れて大人に目つけられたくないんだよ」
「だから棄権しようと思って、今からスタート地点に戻るつもりだったんだが道がわからねぇ」

なんだこいつらただの迷子だったのか。

「セリ達は今から戻るんでしょ?あたし達も一緒に連れてってよ」
「あ、はい……ってそれはいいけど!」
「何?」
「フィンクス達がクロロ達に負けたってなんで知ってるの?」

私が聞きたかったことと同じことをシャルが先に聞いた。
マチはそれを聞いて「ああ、それね」と言うと思い出したように話し始める。

「あたし達、フィンクス達が四人で移動してるのを見て尾行したんだ。みんな絶してなかったし、戦う様子もないから変だと思って」
「まぁ、気付かれねぇように大分離れてたから何言ってるかは聞こえなかったんだがな。あいつらスタート地点まで戻ったんだよ」
「スタート地点?お前らなんでその時戻らなかったんだよ」

フランクリンが当然の疑問を口にするとノブナガはばつが悪そうに「その時はまだ棄権するつもりじゃなかったんだよ」と言う。

「そしたら、そこにジイさんが居なくてさ。クロロとパクノダがジイさん捜しに近くにあった建物に入ってったら、フィンクスとフェイタンが来た道を戻り始めて」
「はぁ?」

なに勝手にかくれんぼ再開しようとしてんだ。

「あたし達もまた尾行したんだけど途中で見失っちゃったんだ。…で」
「今に至ると」

シャルの言葉にマチが頷く。いやいや、ちょっと待てって。

「フィンクスとフェイタン…ルール違反じゃねぇか?」
「………………」

ウボォーさんの言葉に全員が黙った。
いくら未来の旅団といえど、まさかこんなに堂々とルール破る奴が出て来るとは思わなかったわ。
私達はもうかくれんぼなど知ったこっちゃない、と絶もせず大人数でゾロゾロと移動し始めた。先頭はフランクリンとその背に負ぶさった私だ。
フェイタンとフィンクスは怖いけどこれだけ強い人達に囲まれてると安心する。すごい心強い。
もうどっからでもかかってきな、返り討ちにしてやるぜ!みんなが!って思っていたらその直後本当に来た。

始まりは私の頭めがけて念で強化した石が飛んできたこと。
石投げ合戦再び…?と思ったのは私の隣にいたマチが私に飛んできた石を掴みさらにオーラを絡めて投げ返した時だ。
投げ返した石とは全く違う私の斜め上の方向から突然フィンクスがやってきた。間違えた、降ってきた。
私が気付くより早くフランクリンが気配に気付き避ける。……あの、さっきまでいた場所の地面がへこんでるんだけど。
後ろにいたノブナガがフィンクスに言う。

「おい、ちょっと待てよ。セリは怪我して棄権だ」
「あぁ?それがどうしたよ」

フィンクスが事もなげにそう返すとその背後からフェイタンが現れた。ちょ、いつどうやってそこに来たんだ。

「怪我なんて関係ないね。ワタシ達はただそいつが気にくわないだけだよ」

しかも私が標的かい。
さらにオーラを纏わせた石とその辺に落ちてるゴミを投げてきたフェイタンにウボォーさんが飛んでくる物を受け止めながら言う。

「お前らクロロとパクに負けたんだろ?なら今ここにいんのはルール違反だ。ジイさんが最初に言ってたじゃねぇか」
「は?ワタシは他人の言葉に縛られる人生なんて御免ね」
「いや、だからそれルール違反だって」

何ちょっとかっこよく言ってるんだ。
そこからはもうただの乱闘騒ぎになった。いや、おじいさんの言ってた『かくれんぼ』としては正しい状況なのかもしれないけど、私的にはわけがわからなかった。
ひたすら私を狙ってくるフィンクスとフェイタンに早く戻りたいマチがキレて男らしく拳で応戦。それにウボォーさんとノブナガが手伝うぜ!と参戦し、シャルとフランクリンが飛んでくる石とゴミを投げ返す。
この乱闘が収まったのは30分後、たまたま近くを通った住民達が「あれ?セリじゃね?」となってナズナさんに連絡がいき、そこからおじいさんと一緒にいたクロロとパクノダに伝わり四人が様子を見にきてからだった。とりあえず背中が痛いよ。

[pumps]