ネオン
シズクちゃんが念能力者でシズクちゃんの言うシャルがシャルナークでそのシャルナークが好きな相手がセリでセリは私で私は今シンシアでついでに言うならシンシアが連れてる犬はクロロでクロロは旅団の団長でんんんんんん?

予想外すぎる展開に混乱してきた。リードを持っていない方の手を額に当て、もう一度ここまでの情報を整理する。
シズクちゃんは念能力者でシャルと知り合いでシャルは私が好き?馬鹿な。
ていうか待って、シャルと知り合いで念使えるってことは、もしかしてシズクちゃんって旅団?
シズクちゃんを見ると「なに?」と不思議そうな顔で言われた。この子が、旅団…?

「ちょっと聞いていいかな?」
「うん、いいよ」
「シズクちゃんとシャルって……………友達?」
「まさか」

すげぇありえないみたいな言い方された。

「友達ではないと言うとどういう…?」
「うーん、仕事仲間かなぁ」

旅団だ。旅団確定。
へ、へぇ、やっぱりそうなんだ。旅団ってウボォーさんとかフェイタンとかヒソカさんとか明らかにやばそうな人とシャルとかマチとかパクみたいな見た目普通の人に分かれるから中々見分けが付かなくて困る。
ということは、もしかして漫画に出ていたキャラクターだろうか。だから何処と無く見覚えがあるのかもしれない。じゃあ相当やばい子じゃん。過激派じゃん。

「もういい?」
「あ、うん。ありがとう…」
「どういたしまして」

過激派のかの字も見せずにそう言うとシズクちゃんは本を持って立ち上がった。

「あたしお腹空いたから帰るね。ばいばい」

自由だな。
シズクちゃんは私の返事を待たずに去っていった。行動が早い。爆弾落とすだけ落として帰っていったぞあの子。

暫くぼーっとシズクちゃんが去っていった方向を眺めていたが、クロロ(犬)がいい加減待ちくたびれたのか先に進み出したので引っ張られるように私も歩き出した。
犬の名前聞かれなくてよかった。


***
夜になって仕事も終わり、自室に戻る。
時間が時間だったのでかなり迷ったが、どうしても今日の話が気になり、アドレス帳から目当ての名前を見つけると「今から電話しても良い?」とメールをした。
マメに携帯を見るタイプではないと思うが、今日は偶々手元にあったようですぐに「いいよ」と簡潔な返信がきた。
円を使って周囲の様子を窺ってから電話を掛ける。何コールか目にマチは出た。

『なに?』
「ま、まっさん?」

ブチッという音に続いて携帯越しにツー、ツーと機械的な音が聞こえてきた。切れた。
まっさんか、まっさんがいけなかったのか。無言でかけ直す。

「ごめん嘘。マチ?」
『なんだい』
「あの、ちょっと聞きたいんだけど…旅団にシズクちゃんって子いる?」
『いるけど。知ってんの?』
「…うん。まあ、偶然知り合った…」

やっぱり旅団だったか。現役の方から肯定されちゃったよ。
いや、もうそれはいい。よくはないけど、それよりも大事なことがあるんだ。
さっそく本題に入る。緊張で若干声が震えるのを感じた。

「シズクちゃんから聞いたんだけど、シャルが私のこと好きなんだって」
『何を今更』
「えっ!そんな知ってて当たり前の話なの?アイツが私に恋してるってマジなの?デマじゃないの?」

マチの反応に驚いて一気に捲し立てると「うるさい」と言われた。
ごめん、でもこれ本当なの?いつから?聞きたいことは山ほどあった。
ぎゅっ、と携帯を握る力が強くなる。心臓の鼓動も早い気がした。ここ最近で一番ドキドキしてると思う。
返答を待っているとマチは特に変わった様子もなく、いつも通りの声色で『いや…』と話始めた。

『あんたのこと好きなのは確かだけど、別に恋じゃないでしょ』
「なにそれ!?哲学!?」
『シャルってあんたのこと…妹かなんかだと思ってんじゃないの?』
「えええ?」

それはない。妹なわけがない。ならもうちょっと優しくしてくれるだろ。
んん?でもシャルの好きって恋愛感情の好きではないの?

「妹かどうかは知らないけど、恋とかの好きではないってこと?」
『うん。そもそもあんたってシャルの好みじゃないし』
「あー、そんな感じする。私もシャルは好みじゃないしなぁ」

私の好みはもっとこう…尖った人だ。背が高くて、目付きは悪い方がいいな。

でも、なんだ。恋じゃないのか。
ちょっと安心した。妹は絶対にないだろうけど、友達としての好きなら大歓迎だ。私達友達だもん。それはこの先絶対変わらない。
それをそのまま伝えるとマチは『はぁ?』と呆れたような声を出した。

『いや、だから妹だって』
「なんでそんな妹推すの?」
『友達じゃないから』
「友達じゃない…?…よく分かんない…シャルは実は私に妹属性を求めてるってこと…?」
『いや違うだろ』

冗談抜きにマチの話が全然わからないんだけど。
そもそもマチは妹がどんなものか分かっているのだろうか。マチだけじゃなくてシャルも、もっと言うなら他の旅団メンバーも。彼等は一般的な家族というものを知らないのだ。

『別に何も求めてないよ。そうじゃなくて、安心感からくる好意なんじゃないかって』
「安心感?」
『それは…』


私はその後のマチの言葉が正直よくわからなかった。だって、それは結局家族への好意と同じだったからだ。
旅団が家族愛なんて分かるわけない、と私は勝手に思っていた。

[pumps]