9月1日
私の初めての念能力がたった今決まりました。その名も超破壊拳(ビックバンインパクト)Uです。
右手にオーラを集めてぶん殴る。ただそれだけの超シンプルな技で必殺技って感じはしないけど、強化系オンリーの発としては一番正しい形だと思う。力こそ全てって感じの正統派だね!

問題はオーラを右手に集中させるため他の部分の防御が薄くなるのと達人級のなめらかな流が出来ない以上どうしてもオーラを溜めるのに時間が掛かってしまうこと。
ドラ○エみたいにターン制じゃないから相手は待ってくれない。ウボォーさん程の能力者なら流も速いし、仮に途中で邪魔されても身体が頑丈過ぎて大きなダメージは食らわないが、基本貧弱な私は別だ。

流が上達しない限りは実践では使えないかもしれない。使うなら戦闘前の威嚇だろう。挨拶代わりに一発みたいな。
見た目で舐めてかかってくる人も多いので、その場合はリスクを気にせず使える。あとは壁破壊とか?閉じ込められた時にいいかもしれない。
とか色々考えている間にもウボォーさんと陰獣の闘いは進んで行く。

「毛や歯で鋼鉄を誇るウボォーギンの肉を裂くとは」
「かなり鍛えられた念能力者だ。やるよ、あいつら。ウボォー!手伝おうかー?」
「余計なお世話だ!!」

シャルにそう返すウボォーさんは少しだけ苛立っていた。思ってたよりも苦戦している。
相手はそれぞれが変わった能力に特化している上に、連携もそこそこ。多分私ならとっくに殺られてる。あんなのどう戦えばいいのか何の対策も思い付かない。

体毛を操れる髪の毛陰獣を右手にぶら下げたまま、ウボォーさんの身体がグラッと不自然に傾くとそのまま座り込んでしまった。
先程皮膚を噛み千切られた時、相手の牙には神経毒が仕込まれていたようで、超速攻性のはずのそれがようやく回ってきたのだ。暫く元気に動いていたウボォーさんがどれだけタフなのかよくわかる。
陰獣曰く首から上は無事のため、痛みは自覚できるとのことだ。怖すぎ引いた。

「致死性の猛毒にすれば勝負は決まってたのに」
「拷問好きなんだろ、きっと」

こいつらは冷静すぎ酷すぎ。仲間のピンチだというのに私の横で涼しい顔して話すマチとシャルにも引きつつ、ドキドキしながら勝負を見守る。
まさか死んだりしないよね?あんな雑魚っぽい顔の連中に殺られたりしないよね?

傷口から体内にヒルを這わせる陰獣により、さらに追い詰められる。
来るところまで来た、と思ったがそこから先は早かった。首から上が動けばそれで十分、と発言したウボォーさんはヒルを出してきた陰獣の顔面を噛み砕く。
よく咀嚼してから皮膚を噛み千切られた陰獣に向かって口から何かを飛ばす。物凄い勢いのそれは相手の頭を貫通した。
さらに右手に絡み付いたままの髪の毛陰獣の方を向く。瞬間、耳が裂けるようなとてつもない音が聞こえた。
慌てて両手で耳を塞いだが、明らかに他のみんなより反応が遅れた。それがウボォーさんの声だと判断できたのは、髪の毛陰獣が地面に倒れ込んだのを見てからだった。
ぐわんぐわんする。皆がウボォーさんに文句を言っているが、声がなんだか聞き取りづらい。

一人反応が鈍い私にシャルが気が付き「大丈夫?」と手で私の髪をかきあげ、耳を見る。
他の皆も超人的な反射神経を持つ自分達と違い、私の身体能力が低いことは昔からよく分かっていたので「耳やられたか?」と私を見た。

「別に血とか出てないけど、痛い?」
「いや、別に…ちょっとぼーっとするだけ」
「なら放置してりゃ治るんじゃねェか?お前強化系だしな」

ノブナガ適当すぎるだろ。
私を中心に集まってる皆に「どうしたー?」と声をかけてきたウボォーさん(毒で動けない)に向かってシズクちゃんが言う。

「ウボォー、さっきのでセリが負傷したよー」
「マジかよ!わりぃ!でもセリなら大丈夫だろ。強化系だし!」

強化系に絶対的な信頼を置きすぎだと思う。
確かに治癒能力は高いけど、それは程度によるんじゃないの?私の鼓膜破れてたらどうしよう。病院行きたいけど行けないよ!
不安になって手で両耳を覆うが、シャルにその手を掴まれてゆっくりと下ろした。

「破れてたとしてもそんなに酷くなければ鼓膜はすぐ再生するよ」
「本当に?私病院行かなくていい?」
「大丈夫大丈夫。強化系っていうか念能力者なんだし、治りも早いよ」
「別に破れてないんじゃないの?あんた遅れるわけでもなく普通に会話してるだろ」
「はっ、そ、そういえば…聞こえる…耳が聞こえる…」
「いや、お前最初から聞こえはしてただろ」
「ほれみろ、だから強化系は大丈夫だって言ったろ?」
「ウボォー、セリ大丈夫だったよー」
「そいつはよかった!やっぱ強化系だからな!」

強化系の話はもういい。

[pumps]