9月3日
すぐにフェイタンがゴンを押さえ、助けようとしたキルアもヒソカさんによって動けなくされる。
フェイタン曰く「調子乗りすぎ」だそうだ。そのままゴンの腕を折ろうとしたのかどうかわからないが、やばい雰囲気のフェイタンを止めたのは意外にもノブナガだった。
会話中、二人は声を荒げることさえなかったが、お互いに対して静かに怒りを溜めていることはこの場にいる全員に伝わった。ノブナガが右手で木の台を思いっきり叩き、まさに一触即発といった時、フランクリンが口を開いた。

「おい、やめとけノブナガ」
「ルール忘れてないだろうね」
「団員同士のマジ切れ御法度だよ」

マチとシズクちゃんが続く。
旅団には何か揉めたら公平にコインで決めるという平和的なルールがあるらしい。その結果、ノブナガの意見を聞き入れフェイタンはゴンから手を離した。

これで一旦解決し、すぐに話題はゴンとキルアの今後の処遇についてとなった。来る途中に調べたが、二人は鎖野郎について何も知らなかったとパクが言う。何故言い切れるのかさっぱり分からなかったが、そういう能力だろうか?皆はパクの言葉をすぐに信じたため、かなり信頼のある調査法のようだ。
ということは、本当にキルアとゴンは鎖野郎を知らない。まさかクラピカじゃない?あれ?漫画的にクラピカだと思ったんだけど。

「いや、コイツらが本当に関係ないとは言い切れない。後ろで糸を引いてる人物がいるはずだぜ」

この二人は鎖野郎とは無関係という話に纏まりかけた時、フィンクスがそんなことを言い出した。

「もし鎖野郎が普段は鎖を身に付けてなかったら?この二人が鎖野郎を鎖野郎と認識してないだけかもしれないだろ?」

ああ、なるほど。確かに私もクラピカが鎖を使うイメージは全くないので、この二人もそうなのかもしれない。だから今のところ本当に知らないのだ。
私勝手にフィンクスって超バカだと思ってたんだけど結構冷静にモノを考えられる人だったのか。こいつバカ側の人間じゃなかったのか。
なんて口が裂けても本人には言えない事を考えていると「黒幕が鎖野郎」説はシャルによって否定された。
奴は単独で行動してるはず、とシャルは言うが何故わかるのか。どうも私が思っていた以上に旅団は“鎖野郎”についてよく分析しているみたいだ。

「組に所属している鎖野郎がわざわざ子供を使う必要はない。ノストラードファミリーを通じて情報はいくらでも入ってくるからね」
「ああ、そりゃそうだ」
「俺達の標的は鎖野郎だけだ。それ以外は放っておけばいい」
「だ、そうだ。よかたな。お家帰れるね」

フェイタンのバカにしたような言い方にゴンが舌を出す。彼の精神力を見習いたい。
ま、実際のところがどうであれ、この二人は帰してやろうという話になったので今はもういいだろう。ほっ、と息をつく。顔は割れたが生きて無事に帰れるなら何よりだ。
と思ったのだが、話はそう簡単に終わらなかった。

「いや、ダメだ。そいつは帰さねぇ」

ノブナガがゴンを見て言う。

「ボウズ、旅団に入れよ」

うわぁ、空気読め。私だって迂闊な発言しないように空気読んで黙ってるのに。周りの皆も「何言ってんのあいつ?大丈夫?」みたいな顔でノブナガを見た。
さっきまで一人で勝手に切れて泣いてたくせになんなのか。ゴンの主人公パワーで浄化されたの?
そのふざけた誘いにゴンはますます顔を歪めて答えた。

「やだ」
「なんでだよ、俺と組もうぜ」
「お前らの仲間になるくらいなら死んだ方がましだ!」

青筋を浮かべて言うゴンにノブナガが笑う。さらにゴンが強化系であることを確認すると何がおかしいのか、先程よりも大きな声で笑い出した。
敵のアジトで怯むことなく真っ直ぐ自分を貫き通した根性あるゴンをすっかり気に入ってしまったらしい。

「よォ……、団長が戻るまでコイツらここに置いとくぜ。入団を推薦する」
「は?本気かよ!?」
「団長が認めるはずないね」

そう言われてもとにかく一回クロロに会わせたい、とノブナガは意見を変えなかった。
周りを見るとみんな呆れたような顔をしていた。

「ま、いいけど。そいつらが逃げてもあたしらは知らないよ」
「見張りはお前が一人でやれよ」

子供二人の事なんかもうどうでもいい、と他のメンバーは別の部屋へ移動した。今後の行動を考えるらしい。
キルア達が気になったが、話だけ聞こうとまずは私も皆の方に着いて行った。

[pumps]