マイ・インターン
結局私はメガネと共に集合場所へ行くことになった。もうね、どうにでもなれって感じ。
集合場所は第六地区の住民登録所前だ。第六地区の住民登録所の中には流星街の外と通じている場所があり、『外からの依頼』を受けたらどの地区の住民でも全員必ず、そこから出発しなくてはいけないらしい。

「めんどくさいね」
「まぁね、でもそういう決まりだから」

私の歩幅にあわせて横を歩くメガネは苦笑しながら言う。
出入口を統一させるのはそれぞれ依頼を受けた人達の人数を確認するためらしい。どの仕事に何人参加し何人帰ってきたか。行方不明になる者や死亡者がでたり、全員帰ってこない場合もある。
そういった数を調べ、記録するため依頼を受けた時の外への出入口は決まっているんだとか。

「勝手に出ていかれて、帰ってきても報告無しじゃ困るからね。ま、報酬もここで受け取る事になるから報告しない人はめったにいないけど」

そう言って肩を竦める。
流星街ってゴミ捨て場のくせにそういうところは細かいよね。

しばらく歩き続け、ようやくたどり着いた第六地区の住民登録所はなんか…人は多いんだけど静かでした。外観は流星街の建物にしては綺麗、というのが私の感想。公民館のような造りだ。
先程の話の通り『外からの依頼』を受けた人達はみんなこの建物の中に入る。だから人がやけに多くて、常に登録所の扉は開閉を繰り返している。
なのに静かってなにそれ。全体的にみんな暗い。確かにマフィアからの依頼なんてやるぞ!と意気込めないかもしれないけど、だからってそんな辛気くさい顔するなって。

「ほら、あそこにいるのがセリちゃんと一緒に今回の仕事に参加する人達だよ。一応、全員第四地区の出身」

私までテンション下がるわ、これ以上下がるの辛いわ〜、と思っているとメガネが視線を登録所の扉の近くにいる三人の男性に向けて言った。
三人は全員扉の近くにはいるがお互いに少し離れた場所にいて、その場に座りこんでいたり登録所の壁にもたれかかってたり欠伸しながら突っ立ってたり。
全員第四地区出身というが見たことのない人達だった。彼ら自身も見た感じ元から知り合いとかではないようで、かといって交流を深めようとも思ってない、別にお互いに興味はないという様子だ。まぁ、仕事しに行くだけだしね。

そして何より驚いたのは、三人とも非念能力者であること。メガネの言う通り、本当に外からの依頼は念が使えなくとも問題ないようだ。
と仕事仲間観察をしていたらメガネが三人の方へ歩き出したので慌てて後を追う。


「あぁ、あんたか。なんか依頼内容の変更でもあったか?」

近付いてきたメガネに最初に気がついたのは欠伸しながら突っ立ってた人だった。
30代前半くらいで熊みたいな顔の男の人に、そう問いかけられたメガネは後ろにいた私を前に押し出し言った。

「依頼内容に変更はなし。ただ参加人数が四人から五人になります。この子が飛び入り参加しました」

メガネの言葉と背後から現れた私を見て熊さんは呆気にとられる。
しかし、何か文句を言ってくるとか馬鹿にしてくるといった事はなく「そうか」と一言呟いただけだった。

「二人も大丈夫ですか?」

メガネは残りの二人に問いかける。
壁にもたれかかっている男の人はこくり、と頷いた。この人は30後半から40前半くらいの歳だろうか。蟹みたいな顔なので蟹さんって呼ぶことにする。
そして三人の中では一番若く見える、20前半くらいの歳の座りこんでいる男の人は私を一瞥し、何も言わず。
よく見るとこの人は左腕がない。とりあえず隻腕さんと呼ぼう。

「大丈夫そうですね」

メガネは三人をそれぞれ見て言った。
隻腕さんはノーリアクションだったけど肯定として受け取ったらしい。
何て言うか、反応薄すぎて逆に困る。誰か一人くらい「こんなガキと?冗談じゃねー」とか言いなよ。いや別に言われたいわけじゃないけど、どんだけ私に興味ないの。

「それじゃ、僕はこれで。セリちゃん頑張ってね」
「うん………えっ?ちょ、帰るの!?」

メガネは突然私の肩をポンッと叩いてそう言った。
えええ、一人にしないで!!と実際三人の目の前で言うのは失礼なので心の中で叫ぶもメガネは「後一人来たら出発しなねー。ファイト!」と笑いながら来た道を引き返していった。マジで帰りやがったアイツ。
残ったのは私と熊さんと蟹さんと隻腕さん。超気まずい。

「あの…、今回はよろしくお願いします」

と一先ずビビりながら言うと蟹さんはペコリ、と頭を下げてくれたが他の二人は完全にシカトだった。熊さんはメガネとは話すのに私は無視か。
黙ったままの三人を前に視線をさ迷わせる。どうしよう、やっていける気がしない。そう思った時だった。

「すみません、遅れてしまって」

後ろから若い男の声が私達に向かってかけられた。
三人の視線が私の後ろに集まったので私も振り向き声の主を確かめ、固まった。

「オリヴィア氏の護衛に参加する方々ですよね。今回はよろしくお願いします」

私の後ろには赤茶色の髪の超絶美形なお兄さんが居たのだ。

[pumps]