はじめてのハンター試験
不正解だと下に落ちるってどういうこと?
かなり深そうなんだけど大丈夫なの?アレ落ちて大丈夫なの!?下に緩衝材はあるの!?ねぇ!?

『第二問』

進行早い!

『私は今朝寝坊して10時に目が覚めた。○か×か』

結構寝てたな。
二問目も変わらず試験官の個人的な問題で私を含め残った受験生達は戸惑いを隠せない。
一次試験でこんな運任せな課題が出るとは思わなかった。お前らの持つ知識なんて試験官の前では何の役にも立たねぇんだよってことか。
いかに臨機応変に対応出来るかを見たいのだろう。それにしてもすごいなハンター試験。予想以上だなハンター試験。

他の受験生達のざわめきを聞きながら私は○に移動した。勘だ。さっき×だったからバランス的に次は○かな?って。
殆ど諦めながら移動したら、なんと正解したので私の勘も侮れないだろう。お姉さん寝坊したんですね、ちょっと親近感沸いたわ。
×を選んで落下していく受験生達を見て、いつ自分も同じ目に遭うかとビクビクしていると朗報が飛び込んできた。

『さて、次の第三問が最後の問題です。正解すればあなた方は一次試験合格となります』

その言葉に残っている受験生は表情を明るくする。俺達闘ってきた甲斐があったぜ…なんて空気が流れ始めた。
三問だけとは少ない気もするが、これ以上試験官の個人情報をクイズに出されても困るので妥当かもしれない。十問とかなったらもう誰も残らないだろうし。
よし!と気合いを入れてお姉さんからの問題を待つ。すぐに『第三問』という声が聞こえてきた。

『私は女である。○か×か』

残った受験生全員が固まった。え?女じゃない可能性があるの?
確かに試験官の姿は見ていない。しかし声の感じからして女性だろうと誰もが思っていたはずだ。落ち着いていて聞き取りやすい声質、話し方から多くの受験生はテレビのアナウンサーのような美人で淑やかな女性を想像していただろう。
その女性が…男かも…しれない……?受験生達の混乱はピークに達していた。落ち着きなく○に行ったり×に行ったりと移動を繰り返している者もいる。
心なしか○を選ぶ人が多いのは脳内にイメージしている女子アナ試験官を男だと思いたくないんですねわかります。
私は○のまま動いていなかったが、残り十秒になった時×に移動した。理由なんてものはない。

『正解は×です』

当たったぁ…。
回答を聞いてすぐに○を選んだ人達は「うわぁぁあ」やら「嘘だぁああ!」やら叫びながら下へと落ちた。
当たったけど素直に喜べない。私以外の×を選んだ人達もそのようで「あ、ああ男なんだ…ハハッ…」と呟いたりしていた。なんだこれ。

『一次試験はこれで終了となります。皆様お疲れ様でした』

とお姉さ……お兄さん…?(若干さっきより声が低くなっている)が告げると私のいる場所の近くの壁からガコン、という音が聞こえてきた。壁だったはずの場所から上へ向かう階段が出現する。

『そちらの階段を上がった所でしばらくお待ちください。じきに二次試験が始まります』

そこでプツンと放送が切れる。残っている受験生達は精神的疲労からか大きく息を吐くとゆっくりと階段に向かって移動を始めた。
ここまでの所要時間は精々十分程度だが恐ろしく疲れた。ハンター試験怖い。

***

「一次試験の通過人数153名。結構残ってるな……あんな個人的な問題に正解出来る奴がこんなにいるとは」

やっぱりそう思うんだ。
二次試験の試験官だという中年の男性は右手に持ったバインダーを見た後、運だけで一次を突破した奇跡の世代を見回してそう言った。

「まあ、いい。二次試験を始める。課題は100メートル走だ」
「100メートル走?」

驚いて何人かがその言葉をオウム返しする。学校の体力テストかよ。
しかし一部の受験生は心底安堵したような顔をしていた。確かに足に自信のある者にはこれ以上ないラッキー課題だろう。条件次第だが。

「条件が一つ。この試験に合格し三次試験へ進めるのは上位20名までだ」

一気にどよめく。やはり一筋縄ではいかないらしい。

「全員その白い線のところに横一列に並べ。153人全員が同時にスタートする」

私達がいる場所は先程○×クイズをした場所と全く同じ造りで、違う所と言えば床に引いてある線が白くて一本だけというくらいだ。
試験官の男性は床の白線に目をやり、手を叩いて私達に移動を促す。

「俺が合図したら、その線からスタートだ。ちなみにフライングは問答無用で失格だからそのつもりでな」

やり直しとかないの?厳しいな。
受験生の間に緊張が走る。チャンスは一回だけとなるとフライングを怖れて出遅れる人が多いだろう。
どうしよう、私も絶対に出遅れる。ドキドキしながらスタートラインにつく。

「全員準備はいいな?」

ゴールへ立った試験官の男性が最後の確認をする。
そこからすぐに彼の合図でスタートしたわけだが、全力疾走した私はとても不思議な体験をした。

「え?」

周りには誰もいない。
どういうこと?え?と思っていたら驚いたような顔の試験官と目が合い、そのままゴールにたどり着いた。そして、そこで周りに人がいなかった理由を知った。
後ろを向くとちょうど50メートル地点辺りに現時点でのトップだと思われる他の受験生がいる。つまり私は断トツの一位だったのだ。
ええ、マジで?散々足遅いって言われて育った私が一位なの?なにこれドッキリ?
軽く混乱していると二位、三位と続々とゴールにたどり着く。その人達は私のことをなんだコイツと言いたげな目で見てきた。どうやら私は本当に断トツだったらしい。

「ここまでだ!後の者は全員不合格!」

20人目だと思われるお兄さんがゴールしたところで試験官は残りの受験生達に不合格を宣告した。たった一人でビデオ判定も無いのに集団から的確に20位を見抜ける試験官すごくない?そういう念能力?
とりあえずここで一気に133名もの受験生が落とされたわけである。
合格者達を見てみるとあの486番の美人さんがいた。トンパさんはいなかった。足遅そうだもんな。

「三次試験は場所が変わる。今から飛行船で移動だ」

試験官の男性の案内で合格者は屋外に出てハンター協会が用意した飛行船に乗り込んだ。
到着には時間がかかるのでその間は休憩となったが、なんやかんやで二次試験トップ合格だった私は飛行船で他の受験生達の視線が痛かったため休息なんてとれなかった。
というか○×クイズと100メートル走しかやってないのに休憩とか変だろ。

[pumps]