はじめてのハンター試験
飛行船で移動すること一時間。到着した場所はなんだか冷たい感じのする大きな建物だった。
不思議なのは入口だと思われる扉が10個もあってそれぞれに1〜10という数字が割り振られていること。

「二次試験合格おめでとう。早速だが三次試験の説明に入らせてもらう」

三次試験の試験官は眼鏡をかけた頭脳派っぽい感じの男性だ。知り合いのメガネと違って知的な雰囲気のその人は私達に「三次試験は二人一組で行ってもらう」と言った。

「この箱の中に1から10の番号がふられたボールがそれぞれ2個ずつ入っている。同じ番号のボールを引いた者同士がペアだ」

なんでも三次試験は宝探しらしい。建物内で24時間以内に宝を探しだすことが三次試験の内容だ。その宝が何かは教えてもらえなかった。

「ボールはさっきの100メートル走の到着順で引いてもらう。524番、一番は君だね?」

返事をして頷くと試験官はボールの入った箱を私の方へ差し出した。
引いたのは『2』のボール。

「ボールの番号と同じ番号の扉の前に行ってくれ」

なるほど、ここからスタートか。
私が言われた通りに移動するのを見届けた試験官は100メートル走で二位だった人、次は三位の人と順番にボールを引かせる。
引いた人からボールの番号と同じ扉に続々と移動を始めた。中にはもうペアが揃ったところもある。
それを静かに見守っていると私がいる2の扉に向かってくる人がいた。あの美人の486番さんである。
彼女は私と同じ番号のボールを持っていたようでパチッ、と目があった。

「あんたがあたしのペア?」
「みたいですね」

お互いのボールの番号を確認するように見る。20人中2人しか女子いないのにペアとか確率すごいな。486番さんは私の顔をまじまじと見つめた。

「ふーん……大丈夫なの?足は速いみたいだけどさ、あんた虫も殺せなさそうな“か弱い女の子”って感じよね」
「一昨日下見てなくてカマキリ踏みましたよ!」
「そうじゃねーよ!親指立てんなカマキリに謝れ!」
「ちゃんと埋めてあげました」
「そう、いい心がけね……じゃなくて!」

ビシッ!と手まで使ってノリツッコミをしてくれた。この子ノリ良いな。
486番さんは頭を抱えてため息をついた後、吹っ切れたように顔を上げて言った。

「まっ、いいわ。頑張りましょ!あたしはメンチっていうんだけど、あんた名前は?」
「私はセリです」
「です、とか使わなくていいわよ。歳近そうだし」
「そう?私は今年で多分15歳だけどメンチちゃんはいくつ?」
「多分って何。あたしは今年で16よ、一つしか変わんないわね。よろしく」

私と一歳違いでこのスタイルだと…?
動揺していると試験が始まった。合図と同時に2の扉を開くと地下へ向かう階段になっていた。降りてみると長い道が続く。
その道は、やはりというか何と言うか罠だらけだった。

「あー!もう、めんどくさいっ!!何なのよこれ!」

横で飛んできた大量の矢を避けながらメンチちゃんが言う。うん、矢ってなんだろうね。
しかし流石はハンター試験だ。宝探しとは言っても、道中に分かりやすい罠が大量に仕掛けられている。そう簡単にはいかないということか。
ブツブツ文句を言うメンチちゃんに声をかける。

「まぁ、ビー玉転がってくるとか後ろから針のついた壁が迫ってくるとか回避しやすいトラップばっかだし頑張っていこう!」

と言った直後に私の頭に金だらいが直撃した。

「なんであんたはそんなギャグみたいなもんに引っ掛かるのよ!?」
「……………金だらいってさ、見えないじゃん…」
「トラップなんて全部見えねーよ!」

メンチちゃんは警戒して進みながらも私に素敵な突っ込みを入れる。ボケたつもりはない。私はただ全力で生きているだけだ。
「バカには付き合ってらんねーぜ」とメンチちゃんは私を置いて進んでいった。数多の罠が彼女を足止めしようとするが、怯むことなく華麗に避けていく。

「で、メンチちゃん。宝だけど、説明不足でよくわかりません」

暫く進んでいくと下へ向かう階段を見つけたため降りていくと相変わらずの罠だらけ。
しかし比較的回避しやすいことと慣れてきたという理由から少し余裕が出来たので今回の試験の本題について話す。

「そうね。宝が何なのかわからないのもあるけど、この場所に出口があるのかどうかも気になるわね」

メンチちゃんは私の言葉に頷きながら言った。そうか、出口がない可能性もあるのか。

「制限時間は24時間だよね。でも実際に時間内に宝を見つけた場合のことは言ってなかったし…」
「宝を見つけると残り時間は関係なく外へ出られるのかも。いや、でも脱出しろとは言われてないわね」
「あとは宝を見つけても時間切れになるまで外には出られないとか。それか実は出口が“宝”とか?」
「なるほど、ここから脱出したら合格みたいな感じかしら」

お互い思ったことを言ってみた。
とりあえずまとめてみると『出口は存在せず宝を見つけてもここから脱出はできない』『宝を見つけたらその時点で自動的に脱出できる』『宝を見つけたら制限時間が過ぎた後(試験終了時)に脱出可能』『実は宝が出口である』とざっくり四つの可能性が考えられるわけだ。

うーん、困ったなぁ。
宝がわかりやすく宝箱には入っていたら探しやすいんだけど、何なのか見当もつかない今の状況はかなりやり辛い。

「ねぇ、セリ。そういえばあんたなんでハンターになりたいの?」

ゆっくりと歩き、急に罠がなくなった周囲を警戒しながらメンチちゃんは思い出したように私に聞いてきた。

「あたし今回が初受験だけどさ、今まで周りにハンターになりたい女の子なんていなかったわよ」

だから気になるのよね、とメンチちゃんは続ける。ハンターになりたい、理由………?頭の中で反芻する。
どうしよう今回試験受けたのって完全にノリなんだけど。知り合い約二名にバカにされて悔しくて合格して見返してやろう、という気持ちとお金が欲しいからです、っていう二つを素直に言ったら軽蔑されるだろうか。
黙る私を見て横を歩くメンチちゃんは不思議そうな顔をした。そりゃ理由なくハンター試験なんて受けに来ないよね。何かしらは絶対に言えるはずだよね。
いや、確かに言おうと思えば言えるけどこれ言っちゃうのはちょっと……。
だって私がお金欲しい理由ってレオリオみたいな感じじゃなくて本当に自分の為だもん。お金は沢山あっても困らないし。

「そ、そんなに言いづらいの…?」

中々話そうとしない私にメンチちゃんはやや困った様子を見せた。煮え切らない反応の私に暫し何かを考える顔するとゆっくりと口を開く。

「人に聞くなら、まず自分が話すべきよね。あたしはさ、美食ハンターになりたいの」
「美食ハンター?食べ物関係?」

初めて聞く名前に思ったことを口にするとメンチちゃんは嬉々として説明を始めた。要約すると料理が好きだから一生食に関わる仕事がしたいんだって。
要約しすぎかもしれない。他にも色々言っていたのだが、途中でちょっと意識が飛んでたのでよくわからない。
メンチちゃんは私に相槌すら打たせない勢いで話続けたからだ。もう本当に料理の良さと楽しさについてひたすら語ってくれた。
メンチちゃんって熱い人だったんだね。まぁ、好きなものを語るときは誰だって饒舌になるのだから仕方ない。
ちゃんと熱中できるものがあるメンチちゃんがちょっと羨ましかった。

「で、セリは?」

忘れてなかったようでしっかりと順番が回ってきた。えっ、マジで何て言おう。

[pumps]