はじめてのハンター試験
お父さんがハンターでどんな仕事なのか気になったから私も受けてみたの。
お父さんが今どこにいるかはわからない。でも、絶対に会いに行くんだ!

なんか、これどこかで聞いた話だぞ。
どうしてハンターになりたいの?と聞かれて困った私はなんと主人公ゴンの志願理由をパクらせてもらった。
いや、だってほら!私の理由にしてもそこまで違和感ないし!私のところもお父さん行方不明だし!
しかし私はお父さん探しに行くような健気なタイプじゃない。その辺りをメンチちゃんに気付かれたらこの理由は使えない。

「セリ、あんた……大変なのね……!」

あっ、全然気づいてねぇや。
どうやら信じてもらえたらしい。感動してるメンチちゃんを見て申し訳ない気持ちが込み上げてきた。
結果としてこの先私はこの嘘を貫き通すこととなる。

***

「メンチちゃん、あれは…」
「…宝箱ね」

さて、ハンター試験の志望動機を話してから最初よりも打ち解けてちょっと仲良くなった私達の視線の先には宝箱がある。
それは宝箱と聞いた時に誰もがイメージ出来るような箱だった。もう本当に分かりやすく宝箱。そこまで存在を主張するんじゃないよ、ってくらい宝箱。しかもデカイ。人が三人くらい入れるんじゃないか?
少し距離を取り、顔を見合わせる。

「見つかったけど、開けてみる?」
「何言ってんのよ。アレが探してるヤツかなんて分からないじゃない。罠だったらどうすんの」
「そっか、開けたら実は人食い箱とかミミックとか踊る宝石が入ってるかもしれないよね」
「いや、それはドラ〇エのやりすぎ」

メンチちゃんは呆れたような目でこちらを見て言った。それよりメンチちゃんがド〇クエ知っていたことの方が重要である。
おふざけはここまでにして現在私達がいる場所は小さな部屋のような造りで、ど真ん中に宝箱が置いてある。うん、すっごい怪しい。
出入り口は私達が進んできた道に繋がる扉と宝箱の後方に位置する扉だけ。
宝箱を開けるにしても開けないにしても、その後ろの扉を開かなくては先には進めない、という状況だ。

「うーん、触ってみても何ともないけど……」

メンチちゃんは徐に宝箱に近づくとバシバシ叩き始めた。罠とか言っていたわりに結構大胆な行動である。
その間、私は宝箱の後ろの扉に向かう。一応ドアノブを握って回してみるが鍵がかかっていた。
辺りを見回しても鍵らしきものはない。となれば怪しいのは宝箱。
多分宝箱をスルーして進むのはやめてね!ってことなんだろう。中に鍵もしくは扉を開けるヒントが隠されているとか。

とは言っても私の力ならこのくらいの扉は余裕で吹っ飛ばせそうだが。まあ、ここでゴリラパワーを発揮して知り合ったばかりのメンチちゃんにドン引きされるのは中々辛いものがあるので何もしないでおこう。私はか弱い女の子だ。

しかし、この宝箱は何なのだろうか。中身は扉の鍵と思わせて本物の“宝”が入っているという可能性もある。
ただ今のところメンチちゃんはあの宝箱の中身は偽物とまではいかないが疑っていて、私もどちらかといえば違うと思う。
そもそも三次試験の課題は『24時間以内に宝を探すこと』だ。
宝とは何なのかという話はさっきもしたが、宝は必ずしも宝箱に入っているとは限らないというのが私達の意見だ。
だが、それよりも気になるのは時間だ。
制限時間は24時間。しかし私達がスタートしてこの宝箱を見つけるまでおそらく三時間も経ってない。

「もし、これが試験官の言う“宝”だとしても、こんなに早く見つかるもんかしら」

宝箱を睨むように見てメンチちゃんが言う。
そこなのだ。仮にこれが本物の“宝”だとしても見つかるの早すぎる。24時間設定の意味がない。
私達の最終的な予想は「この宝箱の中身は罠もしくは次の扉を開けるために必要なもの」となった。

「じゃ、開けてみようか」

顔を見合わせて私がそう言うとメンチちゃんは頷き、宝箱の蓋に手をかけた。

「あ?なにこれ」

私は罠だった場合に備えて手をボキボキいわせていたが、中に入っていたのは紙と手錠と扉の鍵らしきものだった。
えー?なにこれ拍子抜け……となっていた私達に凄まじい衝撃の事実が明らかになる。
私が鍵を拾い上げ、メンチちゃんが一緒に入っていた紙を取ると何か書いてあり声に出して読み上げた。

「おめでとう!これが第三次試験の“宝”です。この鍵を使って扉を開ければこの試験は合格となります。ただし、合格できるのは二人のうち一人だけです」

[pumps]