二回目のハンター試験
前回同様、不合格者を最寄りの空港まで乗せてくれるハンター協会の飛行船で私は窓の外の景色を眺めながらシャルと電話をしていた。
シャルは二次試験の会場へ移動中らしい。

『なんで棄権なんてしたの?せっかく操って答え書いてあげたのに』
「いや、それってズルじゃん。みんな真剣にやってるんだからさー、そんなのよくないよ」
『ズルってどこが?念能力を使うな、なんて一言も言われてない』
「そういう揚げ足とり止めなよ。言われてなくてもモラルの問題だって」
『モラル?ハンター試験で何言ってんのさ。学生の学力試験じゃないんだよ?使えるものを全てを使って試験を通って何がいけないの?』
「だから、あっ!」
「ぐだぐだ言ってもこの子は棄権したんだから、この話はもう終わり。キミも合格取り消されたくなかったら黙りな」

私から携帯をひったくりそう言うと、ハギ兄さんは一方的に通話を切った。

「ハギ兄さん…」

私があとでめんどくさくなるんだけど…、と思うもあのまま会話を続けてもシャルは納得しなかっただろうから勝手に切ってくれたのは助かる。
しかし口に出してお礼を言うほどでもないので、目だけで語りかけてみるとハギ兄さんは私に笑顔を見せて言った。

「試験お疲れ様、プッ」
「…………」

ハギ兄さんは堰を切ったように笑い出した。どうやら一次試験が相当楽しかったようだ。

「誰も合格させないつもりだったのにさー、まさか書ける奴がいるなんてね。あの問題八割解けるとか!すごいっていうか、キモくない?」

けらけら笑いながら壁をバンバン叩く。こいつ最低だなって思った。
結局あの解答は八割合っていたのだが、私が棄権したため一次試験を通過できたのはシャルと後ろの方の席に座っていたインテリっぽい受験生二人だけ。でも二人も合格者が出ただけすごい。
ハギ兄さんは笑いながら口を開く。

「でも、セリちゃんが棄権するって自分から言い出したのは驚いたなぁ。言わなくても落とすつもりだったけど」

その言葉にドキッ、とする。※恋ではない。

「念能力…使ったのバレてる?」
「当たり前」

窓の外を眺めながら即答された。
やはり腐ってもプロハンターだ、ちゃんと見ている。

「セリちゃんが自分から棄権するって言わなかったら、セリちゃんの口座のお金で新しい家と車でも買おうと思ってたんだ……残念」
「……………」

言って良かった。
心底残念そうな横顔から本気だったことがわかる。信じられんわコイツ。
そんなもん自分の金で買えよ……と非人道的な計画に静かに引いていると二つの人の気配を感じた。
すぐに足音と共に後ろから声をかけられる。

「お話し中失礼します。ハギさん、こちらの方が妹さんにご用があるそうですよ」

そこにいたのはあの金髪美人とメンチちゃんだった。
わあ!メンチちゃん久しぶり!!と心の中は大興奮だが、表面上は普通にしておいた。
美人の共演、さらには超絶美形なハギ兄さんもいるので、今この空間は美形好きな人には天国だろう。なんだか私がすごく場違いな気がする。

「セリちゃんの友達?」
「ちょっとセリ、妹さんってどういうこと?」

私が一人で馬鹿なことを考えていると二人から質問があがる。
そういえば、この二人は初対面だ。私の優先順位はメンチちゃん>ハギ兄さんなのでメンチちゃんの質問を優先する。
それを感じ取ったハギ兄さんに頭を叩かれたので、ダメージを受けた箇所を擦りながら続けた。

「痛…、えっとね、実は私達(書類上の)兄妹なの」
「は?えっ、嘘!?」

メンチちゃんは大きく目を見開き、私とハギ兄さんの顔を見比べた後「ないない、それはない」と手を振った。うるさい!血は繋がってないんだから仕方ないだろ!
もちろん自覚はしているが、なんだかんだ言ってショックな反応だ。

「では、私はこれで」

私達のやり取りを見て、クスクス笑いながら言うと金髪美人さんは去っていった。
後ろ姿も美人で私もメンチちゃんも思わず見とれてしまう。

「超かっこいい美人だったね…」
「ええ、素敵よね…」

なんか全体的に宝塚っぽい人だった。私、ハンターになったらあのお姉さんと仕事するんだ。その前にライセンス売り払うだろうけど。
飛行船が最寄りの空港へ到着した後、なんとなく流れでハギ兄さんとメンチちゃんと三人で食事をすることになった。
高いレストランだったからかメニュー表に金額が記載されておらず図らずもゴチバトルが勃発。結果は私がビリで自腹を切る羽目になった。

そんなこんなで二回目のハンター試験、不合格。

[pumps]