竹馬の友
実年齢27歳という衝撃の事実が発覚したナズナさんは、私がスズシロさんに聞いたと言ったら、念についても教えてもらったと勘違いしたらしく勝手にペラペラ話し出した。

・ナズナさんはとある念能力者に念をかけられ子供の姿になった。
・その念能力者は既に死んでいて能力の詳細はわからない。
・念を解除するには除念師が必要だが確かな能力を持つ除念師は非常に少なく見つけるのは困難。

え、えーっと何だこの展開は。
私は一言も念を知っているなんて言ってないんだけどナズナさんは完全に勘違いしてる。
なんかこの人って結構抜けてるな。第一印象はもっとクールな感じだったんだけど。

でもナズナさんのイメージがちょっと変わったとは言え、念については良い方向に転んだと思う。
元々暫くしたら念を教えてくれるつもりだったらしい。私はまだ子供なのでこんなに幼い時から念を覚える必要はないと思い、教えなかったとか。
そんな普通は5歳じゃ理解できないだろう話を真剣な顔で話すナズナさんは少し笑えた。どうしよう、どんどん印象が変わっていくんだけど。

でも念の修行は7歳を過ぎたら始める、という約束を取り付けることができたのでよかった。
これでうまくいけば私は普通より確実に強くなれる。得るものの大きさからすればナズナさんのキャラ崩壊なんて安いもんだ。

そんなこんなでナズナさんの顔を見ると笑ってしまうので私はゴミ漁りに出掛けることにした。
狙いはパソコンのキーボード。理由はハンター文字が書いてあるから。
確かに一通り読み書きは出来るようになったのだが、どうも私は字が汚いらしい。
自分ではそんなことないと思うのだけどナズナさんやスズシロさんは読めないらしく、二人の名前を書いてみたら次の日無言で紙数枚とペンを渡された。
練習しろってか。
ちょっと悔しいのでキーボードに書いてある文字をお手本に練習しようと思う。キーボードの文字と全く同じならみんな読めるはずだ。

もう下手なんて思わせない!を合言葉にゴミを漁ってみるが中々見つからない。こういうのって探そうと意識すると見つからないんだよなぁ。
うーん、もう少し遠くに行ってみようか。どうせどこ行ってもゴミだらけなんだし。
というわけで私のキーボード探しの冒険が始まった。

しっかし、本当にゴミ以外何もないな此処。

ゴミを踏みながらズンズン進んで行く私の感想はこれしか出ない。目的はキーボードだが個人的にはもっと色んな発見をしたかった。
人とかスーパーみたいな建物を見つけるとか、今までにない新発見をしたい。
建物はあるにはあるけど壊れかけどころか完全なる廃墟だし、人がいそうな気配もない。
まぁ、私が気付いてないだけでその辺にいるのかもしれないけど、わからないんじゃ意味がない。

漫画の描写や周囲の話を聞く限り流星街って結構人がいるはずなんだけど意外と見つからないもんだなぁ、と思いながらゴミを漁っては移動を繰り返す。

「あっ、テレビ!」

四度目の移動で画面がひび割れているテレビを見つけた。周りをよく見ると電子レンジなんかもある。
ここは家電専用みたいなところか?それならキーボードもありそうな気がしてきた。
出来ればノートパソコンがいいな、カッコイイし。と思ってたらメキッという音がした。何か踏んだらしい。
まるで私が重いみたいじゃないかと拾って確認してみると小型ゲーム機のようなものだった。
アドバンスを思わせる懐かしい形だ。ソフトも電池も入っていなくて本体だけ。

なんだガラクタじゃん、と捨てようとした時だった。

「あっ!」
「えっ」

突然聞こえた子供の声に弾かれたように顔を上げると少し離れた位置に金髪の男の子が立っていた。
私より少し年上っぽいけど間違いなく10歳以下だと思われる彼は中々可愛い顔をしている。
年の近い子供なんて珍しいとか人見つけたホントにいたよとかグルグル回る私の思考は男の子が持っている物が目に入ったことで止まった。
あいつキーボード持ってる!

[pumps]