兄達が亡くなってから二ヶ月が経って、私はようやく普通にアカデミーで授業を受け、演習をこなし、帰りは夕顔ちゃんと駄菓子屋へ行けるようになった。
自分的には結構早く気持ちに整理をつけられたと思ったが、同じく身内を亡くした上に天涯孤独になったてっちゃんは、私よりもずっと前からそんなことを感じさせないくらいいつも通りに振る舞っていた。ものすごい精神力だと思った。
クラスの中には彼の変わらない態度に救われた子もいるだろう。目に見えて変わった点と言えば、明らかに前より私への態度が軟化している部分くらいだ。
自分と同じく兄弟を亡くしたという点に親近感でも湧いたのか、てっちゃんと私は“ヤンキーと目を付けられた一般生徒”という関係から“ライバル時々友達”みたいな感じになりつつあった。
クラスメイトらしく平和な世間話もするようになり、まあまあ仲良くなったので本人に聞いたのだが、てっちゃんは孤児院に引き取られるはずだったのに無理を言って今は一人で暮らしているらしい。大丈夫なのかそれ。
生活費はまあ、里が援助してくれるだろうけど、たった9歳の子供に家事が出来るとは到底思えない。心配になって今日の晩ご飯に誘ったが「ナメんじゃねーよ」と断られた。元々器用な子なので案外余裕なのか、意地を張ってるのか。やっぱり誰かの家庭に触れるのはまだ辛いのかもしれない。
***
今更遅いが、兄達ともっと色んな話をしておけばよかった。もっと色々知り合っておけばよかった。
そう反省した私は、何かあった時は兄達の墓前に報告しようと決意した。
だが、私の家から墓地はかなり遠い場所にある。正直一々寄っていられないというか、朝アカデミーに行く前に寄っていたら授業に間に合わないとか何かと不便なのだ。
その代わりと言ってはなんだが、墓地よりもずっと手前の演習場の一画にある慰霊碑へ足を運ぶことにした。漫画でもカカシ先生が任務前などに立ち寄っていた気がするので、家族友人の名が刻まれている人は結構来るんじゃないかな。
実際、そこでよく顔を合わせる男の子がいるのだ。
「「あ」」
ばったり、としか言いようがない出会い方にお互いの声が重なる。
男の子にしては長い髪を高い位置で一つに括っているその少年は、鼻の頭に一文字の傷があった。背は私の方が少し高いが、年は同じくらいだろう。若干気まずい空気が流れるが、お互い来たばかりなので引き返す訳にもいかず、私はちょっと端に寄って男の子のためのスペースを空けた。
男の子は黙ってそこに立った。実はこれまで5回以上は顔を合わせているのだが、話したことは一度もなかった。まあ、誰かと話すためにここに来ているわけじゃないので当然か。本音を言うと会いたくないのだが、私達はどうもここに来る時間が被っているらしい。
横に並んだ彼の横顔を盗み見る。全然知らない子のはずなんだけど、なんか見たことあるんだよね。なんでだろう。
その謎は一週間後、アカデミーであっさり解決した。
私より一つ年上の子が集まるクラスに、所謂お調子者というか、いたずらっ子がいるそうだ。
という話をてっちゃんから聞いたその日、件の子は授業中にふざけた罰としてグラウンドを走らされていた。それは慰霊碑の前でよく顔を合わせるあの男の子であり、私と同じく校舎でその様子を眺めていた別のクラスの子達が笑いながら言ったのだ。
「バカだよなー、イルカの奴」
「まあ、面白いけどさ」
あっ、あれイルカ先生だ!
そこで名前を聞いて初めてわかった。イルカ先生って私の一つ上だったのか。
キャラの中だと結構好きな方なんだけど、全然気付かなかった。まずアカデミーで見かけた事なかったし。
というか、イルカ先生が昔はナルトみたいないたずらっ子だったというのは、何となーく知っているけど、そんな目立つ子ならもっと前から耳に入っていてもおかしくないのでは?
今になってようやくその話が入ってきたと言うことは、もしかして少し前まではそんな子じゃなかったとか?
ナルトが悪戯をしていたのは寂しいから。イルカ先生は確か九尾の事件で両親を亡くしたんだっけ。そして私達は慰霊碑の前でよく会う。
他の子達の笑い声を聞きながらグラウンドを走るイルカ先生をじっと見た。
