15

俺はあいつと同じ班なんて絶対に嫌だ!あいつまだ十年も生きてねーじゃん!!
などと自分もまだ十二年しか生きていないくせに喚きだしたてっちゃんは、ハイパーゴーグル先生の服の中から突如現れた蟲によって黙らざるを得なくなった。震えながらベンチの端に腰掛けたので、その隣に私も腰を下ろす。てっちゃん、私、うちはイタチの並びだ。
空は雲一つない快晴。こんなによく晴れた日の真っ昼間に、アカデミーの近くにある休憩所で私達はお互いに自己紹介をすることになった。

「俺はこの班の担当上忍を務める油女シダだ。最近アカデミー時代の同期生と結婚した」
「え……?おめでとうございます…」
「おめでとうございます」
「ありがとう」

なんだよ、これ……。
ハイパーゴーグル先生ことシダ先生のおめでたい報告を受けて、戸惑いながらも私とうちはイタチが祝うと先生はお礼の言葉を返した。てっちゃんは蟲で脅された精神的ショックから声がでなかった。
油女シダか。蟲使いみたいだし、ハイパーゴーグルだし、名前似てるし、シノ君の親戚だったりするのかな?最近結婚したばかりならお父さんって事はないと思うけど、同じ一族であることはほぼ間違いないのでは。
勝手な予想をしているとシダ先生はてっちゃんの方を向いて口を開いた。

「次はお前達の番だ。まずはテツから」
「俺ぇ?…名前はテツ。俺より目立つ奴は死ね。以上」
「次、アザミ」
「南部アザミです。好物はバナナです。以上」
「最後、イタチ」
「うちはイタチです。至らない点もあるかと思いますが、これからよろしくお願い致します」

なんか私らダメそうだな。
自己紹介を終えてすぐにそう思った。なんだろう、この絶対気が合わなそうな感じ。まずトップバッターがやばいもんな。
シダ先生はこんなバラバラな自己紹介をかました私達に呆れるわけでも笑うわけでもなく、今後の予定について淡々と話を進めた。

「まず、今日は顔合わせだけで任務はやらない。そして明日は演習だ」
「演習?んなもんアカデミーで散々やったっての」

あ、デジャヴ。誰かがてっちゃんと全く同じような発言をしていた気がする。
文句を垂れるてっちゃんにシダ先生は「お前たちの実力を知っておきたいんだ」と言って、明日の集合時間と場所、持ち物を口にした。頭に叩き込み、頷くと全員が理解したことを確認してからシダ先生は今日のところはこれで解散だと告げた。しかし、私だけその場に残るよう言われる。なんで?
てっちゃんも不思議そうな顔をしつつ、「じゃあな」と私に手を挙げた後イタチを一睨みするとあっさり帰って行った。イタチは残った私と先生に失礼します、と軽く頭を下げてから休憩所を後にする。
二人の姿が見えなくなってからシダ先生は一人残った私に言った。

「アザミ、お前にこの班のリーダーを任せたい」
「えっ」

私?と自分を指差すと先生は頷いた。
今回同期でもないのにこの班に配属されたイタチは、元々別の班にいた。しかし誰もが天才だと言うまだ幼い彼への班員からの風当たりは強く、どうにも上手くいかずにその班は解散。いくら才能があるとはいえ、まだ下忍の彼を一人で活動させるわけにもいかないので別の班を宛がうことになった。
現在下忍で人員不足の班はなく、丁度今期の卒業生の人数がスリーマンセルを組むには一人足りなかったため、この班に組み込ませたそうだ。男女のトップに下忍の中ではかなり優秀なうちはイタチを加えたこの班は、普通の班とは少し違う『特別班』で主にCランク任務を行う予定らしい。

とシダ先生は言ったけど、実際は実力的にうちはイタチの“足を引っ張らない”人間で彼の周りを固めたかったんだと思う。イタチは木ノ葉から見てとても貴重な人材だから、できれば彼の才能を良い環境で伸ばしたいだろうし、早いうちに中忍にでもなってほしいと皆心の中で思っているはずだ。
それなりに出来る方だと思われる卒業生と組ませて、最短コースでイタチを出世させたいというのが本音な気がする。もちろん、これは私の憶測にすぎないから口には出さないが。

このバランスの悪い班編成の理由はそんな感じで、それでなんで私がリーダーに推されるかというと他に適任者がいないからの一言に尽きる。
実力・経験の面からいえば、一年長く下忍をしているイタチが良いだろう。けれど私達より四つも年下の彼が先頭に立てば角が立つ。私は気にしないけど、てっちゃん煩そうじゃん?
そのてっちゃんはリーダー気質ではあるものの、イタチに敵対心を抱いている現在の彼にまともな指揮がとれるとは思えない。その結果、消去法で私が選ばれたのだ。
リーダーっていうか、正直なところてっちゃんとイタチの間に立って揉め事が起こらないように上手く対処してくれって話じゃないか。
私は委員長タイプでも何でもないのでそんな面倒なこと絶対にやりたくなかったが、班結成初日に担当の先生から直接頼まれてしまったら断れるわけがない。
渋々引き受けた私にシダ先生は「では、また明日」と言っていなくなった。小さくため息をつく。今後を思うと胃に穴が開きそうだ。
Pumps