まだ見ぬゲンマさんの影を気にしたり、時折エンカウントするサスケやテンテンと戯れたり、イタチに噛みつくてっちゃんを宥めたり、勝手に螺旋丸の修行をしたり。相変わらず娯楽は少ないものの充実した毎日を過ごしていたら、私が下忍になってから早くも八ヶ月が経とうとしていた。
それなりに下忍生活にも慣れてきたもので、いつも通りのCランク任務を終え、シダ先生に頼まれて任務報告書を受付に提出しに行くと見覚えのある後ろ姿。青みがかった紫色をした長い髪の少女は同じく任務報告書を届けに来ていた夕顔ちゃんだった。
木ノ葉マークの額当てをつけた私達は、突然の再会にお互い驚きつつ「久しぶり」という挨拶から始まってそのまま流れで近くの茶屋へ向かった。彼女とはアカデミー卒業以来だ。
やっぱり電話は便利だったと懐かしのデジタル家電に思いを馳せる。自由に連絡が取りあえないと家を訪ねるかこうしてばったり出会わない限り、友人との付き合いは減っていく。そういえば最近は身内としか会話をしてなかった。いや、元から友達なんて殆どいないんだけど。
そんなことを思いながらやって来た茶屋で、これまた久しぶりに食べる餡蜜にうきうきしながら、夕顔ちゃんと近況報告をする。
「夕顔ちゃんは最近どう?私は護衛とか修行とか色々って感じだけど」
「最近は……うーん、まあ、私も同じようなものね。でも、ちょっと退屈」
そう言って葛餅を口に運ぶ。美人は食べる姿も絵になる。
夕顔ちゃんも無事にあのサバイバル演習を突破し、今は下忍としてDランク任務に明け暮れる日々だそうだ。けれど、折角忍になったというのに家のお手伝いとほぼ変わらないような内容の任務に、若干の不満を抱いているらしい。
一般のお客さんだけでなく忍も利用する茶屋だからか、周りを窺ってから先程よりも小さな声で夕顔ちゃんは私に言った。
「まだ下忍だから仕方がないけど、子守に時間を割くくらいなら修行していたいと思わない?」
「あー、う〜ん」
子守の任務をしたことがない私が、その発言に同調するわけにはいかなかった。夕顔ちゃんほど優秀な子でも下忍のうちはDランク任務が中心なのだ。
そう思うと私やてっちゃんは他の子達に比べて恵まれている。Cランク任務が基本で、引き受ける回数が少ないから修行に当てられる時間も多い。任務で得られる経験は皆とは比べ物にならないだろう。
なんだか申し訳なく思っていると「早く中忍になりたい」と夕顔ちゃんがため息をついた。夕顔ちゃん達の班は今年の中忍選抜試験を二回とも見送ったらしい。
実は、私達の班もそうだった。中忍選抜試験は年に二回行われるのだが、シダ先生曰く『実力不足』で今年は二回とも受験しないことに決まったのだ。
漫画じゃナルト達だけでなく同期の猪鹿蝶やヒナタ達も下忍になった年にすぐ受験していたはずだが、あれって普通じゃありえないらしい。シダ先生によるとアカデミーを卒業したばかりの下忍は少なくとも一年以上はしっかり修行してからの受験が通例なんだとか。
まあ、昇格試験なんだから当たり前か。部隊長クラスの中忍になれるかどうかが判定されるのだから、試験内容も相当厳しいもののはずだ。ナルト達も満身創痍だった気がする。あ、でもあれは大蛇丸が混ざっていたからだっけ?でも我愛羅と戦っていた記憶もある。じゃあ我愛羅のせいだっけ?あれ?それは試験後の話か?風遁忍術とかチャクラコントロールとか色々覚えることがあるせいか、大分記憶が薄れてきたな。
とりあえず、下忍になって一年以内の受験は班全員に余程の実力がない限り普通は無理だとシダ先生に言われた。てっちゃんは「俺ら余程の実力者揃いじゃん」としつこく突っかかっていたが、先生は無視してた。
てっちゃんに同意するわけではないが、先生の話はちょっと意外だった。てっきりイタチを中忍にするために多少無理はしてでもすぐに試験を受けるものだと思っていたからだ。
この班編成、そういう意図があって組まれたものだと思っていたのだが、違うのだろうか。……いや、間違っていないはずだ。だって他に理由がない。イタチが周囲からどれだけ期待されているか、彼と一緒に里を歩けばすぐわかる。
ってことは、本当に、もうどうしようもないくらい私達が実力不足だから今回は見送ったのか。ごめんね、イタチ。私も自分なりに頑張ってるつもりだったんだけどね。
とっくに中忍クラスの実力があると思われる彼に、心の中でこっそり謝罪した。
