未だに仲良くはない、他班に比べればどこかよそよそしい私とてっちゃんとイタチだが、同じ班になって一年も経てば、自ずとそれぞれの役割が決まってきた。
うちの班は私が風、てっちゃんが雷でイタチが火と水、といった具合に得意とする性質変化が上手いことばらけている。五大性質変化にはそれぞれ優劣関係があるため、私達は対峙した相手の性質変化が血継限界によるものでない限りはどの術にも対応できるわけだ。土が得意な人がいないのがちょっと残念だけど、これから使えるようになればいい。
それを踏まえて班での戦闘スタイルを決めた。血の気が多く体術が得意なてっちゃんは近接攻撃担当、イタチは基本的に何でもできるが、漫画のサスケと同じく写輪眼が使えて班の中で最も幻術を得意とするので、もしもの時の幻術担当となった。バランス的に考えて幻術に強い人が班に一人はいた方がいいらしい。そして私は風遁と忍具を使っての中〜遠距離攻撃と二人の援護担当を任された。ちなみにシダ先生は蟲での遠距離攻撃と索敵を得意とする。
ただ、遠距離担当だから近接格闘は苦手とか、接近戦が得意だから忍具の扱いは苦手、なんて言っていたら一人前の忍者としてやっていけないので、自分達の担当以外の分野にも積極的に取り組むことにした。まあ人には向き不向きがあるので全てを極めることは難しい(特に幻術)のだが、要は100%中60%しか習得できないならきっちり60%分使いこなせるようになろう、という話だ。
ということで比較的幻術に弱いてっちゃんは、現在シダ先生相手に幻術返しの特訓中だ。
それを横目に、私はひたすら縄跳びをしていた。ただ跳ぶだけじゃない。シダ先生が決めた時間内を休むことなく一定のリズムで片足ずつ交互に跳び続けるのだ。その時間は三分。そのあと三十秒休憩してまた縄跳び再開。三分経ったらまた三十秒休憩の繰り返しだ。
いや、これってボクサーがよくやるやつだよね?あの一心不乱に超高速で飛び続けてるやつじゃん。
と、簡潔な説明と共に先生から縄跳びを手渡された時そう思った。
接近戦もある程度こなせるように、と体術の修行が始まったのだが、以前こっそり考えていたチャクラコントロールの一点集中とかの前に、まずは縄跳びをして持久力とリズム感を養えと指示され、本格的に修行に入る前のウォーミングアップとして続けていくことになった。ボクシングもそうだよね、動きがちぐはぐで下手な人はリズム感がないとかなんとか……シダ先生ボクサー育てる気かな?
まあ、色々思うところはあるけどボクサーも肉弾戦のプロだ。この縄跳びも間違ってはないだろう。確かによく考えてみればチャクラコントロールで破壊力が出ても元の動きが鈍ければ何の意味もない。体術が得意な人というのは道場に通っていたり、師匠の元で基礎をみっちりと叩き込まれた人ばかりだ。
自己流で喧嘩していたのかと思っていたてっちゃんもなんだかんだお姉さんと近所の道場の師範に昔から相手をしてもらっていたと言うし、アカデミーの授業と兄に少し教えてもらった程度の私じゃ話にならないだろう。基礎って大事。
納得して、ひたすら飛び続ける。結構体力はある方だと自負していたが、何度も繰り返しているとやはりキツい。三分がとても長く感じる。
もう一度てっちゃんの方に視線をやる。彼は腕を組んだシダ先生に見下ろされながら、何の外傷もないのに地面にのたうち回っていた。思いっきり幻術にかけられてんじゃん。しっかりしろ。
私の視界には、てっちゃんとシダ先生だけ。もっと言えばこの演習場には私とてっちゃんとシダ先生の三人しかいなかった。
今日、イタチは来ていない。最近になって気が付いたのだが、どうもイタチは私達の知らないところで私達の知らない人達と組んで任務を行っているみたいだ。
いつ頃からか正確には覚えていないが、彼は班での修行に姿を見せないことが度々ある。シダ先生が言うには体調不良だとか、家の都合だとかそんな理由らしい。けれど休日に額当てをして、普段の任務と同じように忍具一式を持って里の入り口へ向かう彼の姿を私は見た。
確証はないが、恐らく彼は別の班に混ざって任務を引き受けているのだろう。暗部ならまだしも下忍の彼がCランク以上の任務に参加できるとは思えないので、基本的にはCランク任務を受けているのだろうが、何故私達とではなく別の人達なのか。
やっぱり木ノ葉のホープだから色んな人と組ませて経験積ませようってこと?イタチの能力が便利っていうのもあるかもしれないけど、普通下忍のうちから別の班と行動させるか?班を跨いで別の人と組むこと自体はそんなに珍しいことではないが、それは中忍以上の話で下忍は最初に決められたスリーマンセルでの行動が殆どだ。アカデミーを卒業して二年程度の下忍を別の小隊に組み込ませるなんて、中々ないと思う。
「まだ時間じゃないぞ」
「え?あ、すみません」
考え事をしていたら、手と足が止まっていたらしい。無抵抗のてっちゃんを足蹴にしているシダ先生に指摘され、すぐ縄跳びを再開する。
セットしていた時計が鳴ったのはその少し後だ。ほんのわずかな休憩の間、息を整えながらシダ先生の元へ行き声をかける。休憩はあと二十秒。
「あの、イタチって…」
「なんだ」
別の班と任務に出てるんですか、と続けるつもりだった言葉は出てこなかった。振り向いたシダ先生はハイパーゴーグルで表情が読めない。あと十秒。
「なんでもないです」
口が勝手に動いていた。知ったところでどうしようもないからだ。
シダ先生は時計に目をやりながら「もう一ラウンドだ」と手を叩いた。
