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二次試験の通過者は私達の他に夕顔ちゃんの班と砂隠れの一チームの計三チーム九名という結果になった。始まる前は十組いたので最大で五組残るはずなのだが、そう上手くはいかないらしい。やっぱり私達の班は運が良かったみたいだ。

さて、ここまでチーム戦で進んできた中忍試験だが、次の第三次試験は一対一の個人戦、それもトーナメント形式だという。これが最後の試験であり、また軍事的な意味も含めて当日は観客の前で試合をすることになる。そのため、受験生には一ヶ月の準備期間が与えられた。この間に修行しておけということだ。
対戦の組合せは既に発表されていて、私は他の人より一試合多くなっていた。人数の関係からこうなるのは仕方がないのだが、ツイてない。二次試験で運を全部使い切ってしまったようだ。

「お前、ウルトラスペシャル掌底打ちなんてものを学んでいたらしいな」
「なんですかそのダサい技」

憂鬱な気分で試合までの期間の過ごし方を考えていたある日、シダ先生に呼び出されたので会いに行けばいきなりそんなことを言われた。何のことか、心当たりはあるがそんな技名をつけた覚えはない。
テツが言ってたぞ、と教えられて彼のセンスの無さに呆れる。小学校低学年レベルのネーミングセンスだ。

「そのウルトラスペシャル掌底打ちで相手を吹き飛ばして戦闘不能にしたらしいじゃないか。テツだけでなくイタチも驚いていたぞ」
「ウルトラスペシャル掌底打ちで話進めるのやめてください」
「正式名称は?」
「ら…………チャクラ玉です」

不自然に間を空けて答えた私に、シダ先生は形態変化か?とだけ聞いてきた。素直に頷くと先生は少し考える素振りを見せる。

「あの、隠しててすみません」
「別にいい。今のお前にとって戦闘で決め手になるかもしれない技だろう。そんなものを一々他人に話す必要はない」
「そうですか…」

先生は、私が他の誰かからこの技を学んだと思っているのだろうか。自己流だと思っているならもう少し何か言うはずだ。
相変わらず表情の読めない彼は、螺旋丸についてそれ以上言及することはなく「次の試合についてだが」と話題を変えた。

「お前にも言っておく。まず奥の手は隠しておけ。木ノ葉の代表としての戦力アピールは大切だが、自分の手の内を出し切る必要はない」

かといって一発KOはダメらしい。相手が格下でも格上でもある程度試合を持たせろ、と先生は続ける。

「それに的確な状況判断が出来るかどうかも重要だ。次のことも考えて行動しろ。満身創痍でギリギリ勝っても何の意味もない。そういう奴は後先を考えないバカだ」
「わかりました。……纏めると必殺技は隠しておいて、そこそこの時間そこそこ派手な戦闘をしろってことですか」
「まあそんな感じだ」

無茶言う。各国の大名や忍へのアピールに加え、観客を楽しませるために魅せる試合をしろというのだ。
顔を顰める私にシダ先生は「エンターテインメントってやつだな」と頷いた。やかましいわ。

***

三次試験当日、私の出番は四試合目なのでのんびりと皆の試合を観戦する。一試合目のイタチと砂の下忍の試合はイタチの完勝だった。かの有名なうちは一族で特に注目を集めていた彼の試合はもう最初から最後まで盛り上がっていた。これ私達いる?ってなった。
もうこれで終わりで良いじゃんと思ったがそんなわけにもいかず、次の試合は夕顔ちゃんと砂隠れの女の子で、見た感じ後方支援タイプのその子に接近戦が得意な夕顔ちゃんが容赦なく攻撃を仕掛けて、ほんの数分で終わらせた。
その次がてっちゃんと夕顔ちゃんの班員。友達対決を制したのはてっちゃんで、まあ何から何まで予想通りの結果だった。てっちゃんは元々同期の中じゃ頭一つ抜けてた。彼が自信家である所以だ。
というわけで、私の出番は思っていた以上に早く来てしまった。嘘でしょ、これエンターテインメントなんだから皆もっと時間かけてくれよ。
出番早すぎ、とげんなりする私の相手は夕顔ちゃんの班員で同期の男の子だ。話したのはほんの数回、特に何の思い出もない彼は、帰りたいオーラを出す私とは対照的にやけにやる気満々だった。

「アザミ!ここで会ったが百年目…うわあ!!」

開始早々、びしっと私を指差して何か言い始めた彼に向かってクナイを投げる。

「てめえ!人が話している時に攻撃仕掛けるなんてこの卑怯者!」

そんなこと言われても待ってやる義理はない。私は彼と昔話に花を咲かせるつもりはなかったので、無視して形態変化で強化した手裏剣を飛ばすが、今度はすぐに反応されて向こうの手裏剣に相殺される。
てっちゃんが言っていたのだが、彼は武器による中〜遠距離攻撃が得意らしい。もろに被ってる。遠距離vs遠距離かよ。武器攻撃を封じるにはやっぱり風だろうか。
と印を組めば、彼も即座に印を組む。私が風遁で彼は火遁だった。同程度の威力であれば火遁は風を受ける事で勢いを増す。
やば、と足にチャクラを集中して地面を強く蹴り、上へ回避する。とんでもない激しさで燃え上がった複数の火の玉が、先程まで立っていた場所を襲った。私が印を組み始めてすぐに火遁を使ったってことは、こちらが風遁を使うのはチェック済みのようだ。
そう考えているところで、地面に着地する前に火球によって巻き上がった煙に紛れて手裏剣が飛んでくる。空中では躱せない。咄嗟にクナイを取り出して弾いたが、一枚だけ間に合わず足を掠った。

私が術を避けることを読んで、回避した先を狙ったわけだ。得意げな表情で私を見る彼から目を離さないまま、手裏剣が掠った箇所に触れる。出血しているが、大したことはない。これ以上の怪我を負う前になんとかしなくては。
一気に距離を詰めて螺旋丸もどきを打ち込めばほぼ間違いなく私の勝ちだが、不安定でチャクラ消費の激しいあの技を今使うのは得策じゃない。後先考えないで行動する奴はバカ。ただでさえ試合回数が多いのに、いきなりあんなものは使えない。そもそもまだ未完成の技だし。
かといってチャクラコントロールの一点集中による攻撃は、今の段階じゃ普通より少し力が強くなる程度で少なくとも一撃で昏倒させるのは不可能だ。近接格闘に持ち込むことは出来るだろうが、向こうがどこまで動けるかわからない。逆にこっちが追い込まれる可能性もある。

遠過ぎず、近過ぎずの距離で出来ることは、やっぱりこれだろうか。
まっすぐ彼の目を見ながら印を組む。対する彼も印を組もうと手を動かしたが、突然ぴたりと止まる。そして、まるでこの世の終わりのような顔で叫んだ後、彼はそのまま気を失って仰向けに倒れ込んだ。
審判を務めていた特別上忍が、私の名前を勝者としてコールする。観客は何が起こったか分かっていないようで拍手の音は前の三試合に比べて小さかった。

私が彼に使ったのは、魔幻・奈落見の術。
幻術は習得を後回しにしがちというか、出来ない人は本当に出来ないものなので意外と耐性のない人が多い。もちろん上忍なんかはそんなことないだろうけど下忍が相手のうちは、幻術は覚えているだけでかなりの武器になる。シダ先生に教えてもらってよかった。
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