中忍選抜試験の結果は、私にとって意外なものだった。
二回戦の相手となった砂の下忍は明らかに私より格上で、一回戦同様に幻術を使おうとすれば先手を打たれて接近戦に持ち込まれた。実力の差は歴然で、それなりに健闘はしたつもりだが勝てる見込みがなかったので大怪我を負う前に棄権した。私の出番はそこで終了。今年の試験は駄目だったと諦めていたのに何故か後日シダ先生を通して合格を言い渡された。
今回の中忍試験の合格者は、うちの班は私とイタチの二人で、てっちゃんは落ちた。
イタチの合格は当然だが、私とてっちゃんは自分達の結果にあまり納得がいっていなかった。てっちゃんは私が負けた砂の下忍と二回戦で当たり、見事勝利を収めたのだ。まあ、ほぼ互角でその後ドクターストップがかかったため決勝には進まなかったのだが。
それでも私より戦績は良い。何故彼が落ちて私が受かるのだろう、とシダ先生に尋ねれば「状況判断能力だな」と返された。
最後まで残った時点でそれなりに実力がある人ばかりなのはわかっている。そこで注目されるのは、部隊長としての判断力があるかどうかだ。
特に今期の一次試験は単純に学力を測ったものだったから、残った面々には結構期待していたらしい。あれ本気でただのペーパーテストだったんだ、とちょっと吃驚した。聞くところによると前回の一次試験で一風変わったテストを行ったところ、まぐれでとんでもないアホまで受かってしまったらしく後々問題が生じたので今回は普通の学力試験になったんだとかなんだとか。
「試験前にテツにもお前と同じアドバイスをしたんだがな。忘れたらしい」
部隊長があんな風に毎回ボロボロになられちゃ困る、とシダ先生はてっちゃんの二回戦での様子を引き合いに出した。彼は勝ちに拘り過ぎずに引くことを覚えるべきだそうだ。
任務を遂行するにあたって戦闘での解決が全てではない。敵に遭遇したからって最後まで真正面から相手をする必要はないわけで、捕縛や足止めが出来ればそれで十分だし、全滅を回避するために撤退のタイミングを計れるようになることも大切だ。
確かに、試験前シダ先生は満身創痍で勝っても意味がないと言っていた。要はギリギリのところで勝利してもその後どうすんのってことか。他にも敵がいるかもしれないし、そこで襲われたらもう終わりだ。どうしても回避できない戦闘以外はまともに相手をするな、戦い方を考えろって言いたいんだと思う。
その辺りは正直私もよくわかってない。だってナルトはいつも敵と全力で戦ってたし。
シダ先生のお話から推測するに、私は一回戦の幻術戦法と二回戦で重傷を負う前に棄権したことが主に評価されたんだろう。他にも細かいポイントは色々あるんだろうけど、そんなので良かったのだろうか。てっちゃんが完全に拗ねていて、お見舞いに行ったらバナナの皮を投げられたのでなんだかすごく悪いことをした気分になった。ツラい。
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「やあ、アザミ!中忍試験合格おめでとう!」
「ありがとうございます。もうご存知なんですね」
「ああ、ゲンマがな!」
「あ、はい、なるほどわかりました」
久々に会ったガイ先生が爽やかに言い放った情報源に関しては適当に流しておく。気にしたら負けだ。
一緒に任務が出来て嬉しいよ、と白い歯を見せながら明るく笑うガイ先生に「今日はよろしくお願いします」と頭を下げる。中忍になってから、度々他班の忍と組んで任務に出るようになった。
Bランク任務は中忍以上の方々と一緒に行い、現場で実戦を交えて指導してもらいながら経験を積んでいくのが新米中忍というものらしい。色んな人と任務をこなして盗めるものは盗んでいきなさい、と中忍になった日に笑いながら火影様に言われた。
また、今まで通りのスリーマンセルでシダ先生がいない時は私が隊長を任されるようになった。イタチも中忍なのになんで私が、と思ったが恐らくこれは班を組んだ初日に言われた「お前リーダー頼むわ」が関係しているんだろう。
それに、イタチはこの班で指揮を執らなくても余所で隊長を任されている。自分への大きな期待に彼はしっかりと応えていた。
イタチの暗部入りが内定したと聞いたのは、中忍昇格から僅か半年後のことだ。
