あの事件の後、イタチとスリーマンセルを組んでいた私とてっちゃんはシダ先生に呼び出され、班の解散を言い渡された。私は普段秘書の仕事をしているし、てっちゃんももう上忍で元々この班での活動は余所に比べて少なかったので、所属班がなくなっても特に問題はなかった。
私達への話はそれだけで、イタチに関しては殆ど触れなかった。いや、事件を起こして里抜けをしたことはきちんとシダ先生の口からも伝えられた。でもそれだけだ。
私達は忍者としてはもう子供の歳でもないから心のケアなんて必要ないし淡泊なくらいで丁度良いだろうが、それにしても無関心すぎると思った。
だって、もしかしたら事件前に私達に何か相談とか、ありえないが私達も事件の共犯の可能性だってあったのにシダ先生はおろか誰にも何も聞かれなかったのだ。
他班の方々と同じような扱いに違和感を覚える。初めからイタチの目的も行動も全部分かりきっているかのようだった。
その渦中のうちは一族で一人残ったサスケは、無傷だったが精神的なショックが大きく入院していると聞いた。時間を見つけて病院へお見舞いに行ったのだがその時は面会謝絶で会えなかった。火影様の指示らしい。
病院に行ったことは誰にも告げていなかったが、どうもサスケの側には暗部が付いていたようで彼らを通して私のことは火影様の耳にも入り、後日今はそっとしておくよう言われてしまった。
私はイタチのチームメイトで他の人よりは近い位置にいた(というかイタチが周りと距離を取り過ぎていた)から、サスケにとっては複雑な存在だろう。イタチを連想させるかもしれない私が今の彼と会うのは、彼の精神面を考えるとあまり良いことではないのだ。
そこまで考えていなかったので、自分の軽率さに反省した。会いに行くなら、もう少し時間を空けてからにしよう。
そんな私の意志に反してサスケは自ら現れた。いや、向こうは別に会いに来たわけではなく偶然なのかもしれない。実際にはよくわからないけれど、ただ、出会ったのは私がいつも通る道だった。
ここにいるという事はもう退院したのだろう。アカデミーには行っているのだろうか。そう口を開きかけ、やめた。サスケがあの時のイタチと同じような目をしていたからだ。
「あんた知ってたか」
あいつがあんな奴だって、と続けられてすぐにイタチのことだとわかった。その声色は忌々しいと言わんばかりに憎悪に満ち溢れたようにも、どこか細く、震えているようでもあった。
首を横に振ると何も言わずサスケは私の横を通りぬけて去っていった。まるで私なんて最初からいなかったみたいだ。
それからサスケの姿を見る回数はわかりやすく減った。彼は周りの人達を避けるように行動しているからだ。
事件のことは里の一般人にまで知れ渡り、どこにいても好奇の目に曝されるのでそうなってしまうのは仕方がない。
普通に歩いていて彼を見ることは殆どないが、どうやらアカデミーにはちゃんと通っているようで授業終わりに出会うことはある。
その場合私からは挨拶しているが、サスケはこちらに目をやるだけで大体無視だ。でも最初の方はこっちを見る事すらなかったので、視線を向けてくれるようになっただけマシだろうか。あれ以来、彼とはまだ一度もまともに会話していない。
***
「ついに先生ですか」
「なんだついにって」
茶化すつもりではなく大真面目に放った私の言葉にイルカ先生は苦笑した。
慰霊碑の前で久々に会ったイルカ先生はアカデミーの教師になる、と教えてくれた。教師の仕事自体は少し前から手伝っていたらしいのだが、この度ついに担任としてクラスを受け持つことになったのだという。そのクラスというのがあのナルトのいるクラスだ。
火影様に直接頼まれてそのクラスを担当することになったらしく、漫画での印象とは異なり彼はまだ少し複雑そうだった。先生の気持ちもわからなくない。ナルトの中の九尾は親の仇だもん。
彼自身がナルトを実際どう思っているかはわからないが、現段階では一言で表せないような複雑なものが色々とあるのだ。けど、最後はナルトにとって理解ある良き先生になるんだから別に大丈夫だろう。
「でも良かった。私、ずっとイルカ先輩のことイルカ先生って呼びたかったんですよ」
「そうなのか?なんでまた……」
「先生だから!」
満足げに頷いたのは私だけで、イルカ先生はなんだそりゃと首を傾げた。
