優しい君だから
先日、ひなさんがKOZAKA-Cに誘拐された。助けたければ、と呼び出された場所に行くと怪我をしたひなさんが居て、頭が真っ白になった。もし、KOZAKA-Cがイタズラで済まない事をしたら? 俺を困らせる為だけにひなさんがまた危険な目にあったら? そう考えると、怖くなった。俺のせいで、俺と一緒にいるから、ひなさんが危険な目に合うなんて、嫌だ。
「あのさ、話があるんだけど」
「なに?」
真っ直ぐ俺を見るひなさんの目が見れなくて、視線を逸らしたまま「あー」と言葉を漏らす。頭をガシガシと掻いてから、ひなさんを見て、ゆっくり口を開く。
「もう、怪我大丈夫?」
「あぁ、うん。コケて膝擦りむいただけだからね。傷の治り遅い方だけどだいぶ治ってきたよ」
デカい絆創膏が貼られた脚を動かしながらヘラヘラと笑うひなさんを見て、胸が痛む。今回はコケただけで済んだけど、もし、もしも、もっと大変なことが起きたら。次はこんな怪我じゃ済まなかったら。そんなことを考えていると「うさみくん」とひなさんが俺を呼ぶ。顔を上げてひなさんを見ると、眉を下げて笑っていて「大丈夫だよ?」なんて、俺の考えていることは見透かされてるらしい。
「……やっぱりさ、色々考えたんだけど、俺、ひなさんに傷ついて欲しくないんだよ。だからさ、もう――――」
勢い良くひなさんが俺の口を手で塞ぐ。驚いてひなさんを見ると、ひなさんはなんとも言えない表情をしていて、あ、また傷付けた、そう気付いた。
「うさみくんはさ、優しいから、そういう事考えてくれてんだって分かってるよ? わかってるんだけどね、やっぱり、出来れば、そんなこと、聞きたくない、です……」
ひなさんの手を掴み、口元から剥がす。今にも泣いてしまいそうなひなさんの腰を引いて「ごめん」と呟いて、抱き寄せる。ぽす、と俺の腕の中に収まる小さい身体をぎゅっと抱き締めて「ほんとにごめん」と続けて呟くと、ズッ、と鼻を啜る音がする。ひなさんの小さな手が俺のシャツをギュッと掴む。いつも大きく見えるひなさんが今はとても小さく見えて、あぁ、やっぱり俺が守らないと、と強く思った。
「変なこと言おうとして、ごめん。ほんとに、マジで、ごめん。ごめんなさい」
ぎゅっと強く抱き締めると、腕の中で「ん゙」と小さな声が聞こえる。
「ひなさん、顔、見せてよ」
ぽんぽん、と背中を撫でながらそう伝えると「いや」とくぐもった声と共にぐりぐりとおでこを胸に押し付けられて、ふは、と笑ってしまう。覆い被さるようにぎゅっと抱き締めて「ひなさん」と名前を呼ぶ。返事はもちろんなくて、つむじにキスをする。
「ワガママだけど、これからも俺の傍に居てね」
「ん……離さんといて」
ぎゅーっとしがみつくように俺の背中に腕を回すひなさんが小さな子供みたいで、胸がキュッとなる。どんな事があっても護ろう。絶対に。そう心の中で誓った。