永遠の愛を誓う

「花束のプレゼントって憧れるよねぇ」
ひなさんの声に視線を動かすとテレビの中ではスーツを着た男性がドレスを着た女性に花束をプレゼントしているシーン。それもでっかい薔薇の花束だ。いや、デカすぎじゃね? なんて思いながらひなさんを見ると羨ましそうに画面を見つめていて、こう言うのが良いのか、と少し考えてしまう。そう言えばこの前も友達が恋人から花束を貰ったらしい、と話していた気がする。そんなにも花束って嬉しいものなのか、と不思議に思いつつひなさんに似合いそうな花を考える。と言っても花なんて詳しくないからベタなものしか思いつかない。今度花屋に行って見てみようかな、なんて考えながらテレビに釘付けになっているひなさんの横顔を見つめた。

そんな事があって数日後。近所にある小さな花屋へ向かう。俺みたいな大男が行って大丈夫かな、なんて思いながら店のドアを潜ると、ふわ、と甘い匂いがする。花ってこんなに匂いするんだなぁ、と思いながらキョロキョロと店内を見回していると店員さんに声を掛けられる。
「何かお探しですか?」
「えっと、彼女へ花束をプレゼントしようと思ってるんですけど、何がいいか分からなくて……」
そう伝えると女性の店員さんはあからさまに興奮した様子で「あら!」と声を上げる。「それは彼女さん喜ぶと思いますよ!」とか「彼女さんの好きなお花とか分かりますか?」とか「お兄さんの好きなお花をプレゼントするのもいいかもしれませんね」とか、興奮した店員さんの口は止まらない。店員さんの話を聞きつつ店内を見回しているとたくさんのチューリップが目に留まる。
「チューリップは今時期なんですよ」
「そうなんですね」
何でか分からないけど、ひなさんに似合いそうだな、なんて思う。
「花束って、何本くらいがいいんですか?」
「そうですねぇ、小さい花束と大きい花束、どちらがいいですか?」
「大きいの、ですかね」
「それなら40本なんてどうですか?」
40、と言う数字に多過ぎないか? と不安に思っていると、店員さんが「チューリップは本数で花言葉が変わるんですよ」と説明してくれる。
「40本は『永遠の愛を誓う』なんて意味があるんです」
俺が永遠なんて誓ってもいいのかな、なんて思いつつ、ひなさんがずっと俺と一緒に居てくれたら良いな、と思ってしまう。それに、ひなさんはきっと喜んでくれるんだろうな、なんて考えていると口元がニヤけそうになる。そんな緩い口元に力を入れてニヤけて仕舞わないように口を開く。
「じゃあ、チューリップを40本、お願いします」

デカいチューリップの花束を抱えて歩く大男はそれは目立つ訳で、花屋さんからの帰り道、めちゃくちゃ人に見られて恥ずかしかった。そんなこんなで、ひなさんが喜んでくれる事を想像しながら足早に帰って来て、ドアの前。緊張してきた。すー、はー、と軽く深呼吸をして、少しだけ震える手でガチャリと鍵を回してドアを開ける。いつもならここで『ただいま』と声を掛けるけど、今日は少し我慢。靴を脱いでスリッパを履いて、リビングのドアをゆっくりと開ける。ドアが開いた音にくるり、と振り返ってこっちを見たひなさんにチューリップの花束を差し出す。
「プレゼント」
それだけ伝えると、きょとん、としたまま固まるひなさん。え? もしかして滑った? 花束に憧れてるってこういう事じゃなかった? そんな事をグルグルと頭の中で考えているとひなさんが小さな声で「なんで、急に」と呟く。
「この前、花束欲しそうだったから……」
「え、わ……えっ……うれしい……」
花束を受け取って小さな声で呟くひなさん。
「きれい……」
ふにゃ、と嬉しそうに笑うひなさんを見て、ほっ、と安心する。
「これチューリップだよね?」
「そ、チューリップ40本」
「40本!? すごいね……」
「……永遠の愛を誓うんだって、それ」
花束を指差すと、俺の指先と花束を数回見比べる。じわじわと頬が赤くなるひなさんが「そ、なんだ」と小さく呟いて花束で顔を隠す。くるり、と俺に背を向けて「そういえば花瓶ないや」とか「ドライフラワーにするべきかな」とかペラペラと喋りながら逃げようとするひなさんを後ろから抱き締めて引き止める。
「ひなさん」
「な、なに……?」
「これからもよろしく」
「……うん……」
ひなさんのつむじにキスを落として、ずっと一緒に居てくれますように、なんて心の中で小さく呟いた。