14 眠りから覚めたら〈3〉
「はい、これはまなみに」
「ありがとう」
さくらちゃんと知世ちゃんと週末にとびきりおしゃれをしてお出かけをする約束を見事取り付けたわたしはとても気分がよかった。
そのあと桃矢君の部屋に3人で移動すると、部屋の主桃矢君がアイスティーとお菓子を持ってきてくれるという。手伝うよ、とわたしと月城君が言ったものの、お前ら先上がってろ、とアイスティーを準備しながら機嫌の悪そうな桃矢君。何か気にくわないことでもあったのだろうか。そわそわしていた。
先に桃矢君の部屋で腰をおろしたわたしと月城君。すると前置きもなしにはい、と手渡されたのは小さなキーホルダーだった。よく見てみようと顔を近づけると、それが何なのかはっきりわかった。
「ジェリーラビット!!」
どうして月城君がジェリーラビットのキーホルダーを選んだのか、どこで買ったのか、ものすごく気になった。
「ウィルに聞いたんだ、すごく好きだって」
「そう、大好きなの!」
ウィリアムの仕業かと少し驚きながら、でも感謝した。
「まなみの好きなもの知ってる?って聞いたら教えてくれて、それで」
喜んでもらえてよかった、と月城君は笑ってくれた。そんな今の月城君は体調が良さそうだ。
「アイスティー持ってきたぞ」
ドアを器用に脚であけた桃矢君がお菓子を持って部屋に入ってきた。机に持ってきたものを置くと、あ、とジェリーラビットのキーホルダーを指差す桃矢君。
「ホワイトデーだからね」
「もらったの、月城君から」
ゆきお前あいつに直接聞いたのか?とやや怒り気味の桃矢君にほんわかしたまままなみの好きなもの何?って聞いたとこたえる。
「駄目だった?」
「……ダメじゃねえ」
月城君の疑問に何故かイライラとしながらこたえる桃矢君はどうやら今ウィリアムの名前を聞きたくないらしい。学校ではウィリアムとあんなに仲が良さそうなのに。
「それで、とーやはまなみに何をお返しするの?」
「…………」
別にお返しをもらおうと思ってバレンタインにケーキを贈ったわけじゃない。けれどみんな律儀な人だからお返しをくれるという。
桃矢君にはつい最近ネックレスをもらったばかりだった。今も服の下につけている。
すると月城君の問いにこたえるようにカバンの中からゴソゴソと何かを取り出そうとする桃矢君。桃矢君はその何かが見つかったみたいで、すっと手にとりそれをわたしの目の前に差し出した。
「……ホワイトデー」
差し出されたそれはネックレスのときと似たような小箱で、そのときの小箱より少しだけサイズが小さかった。箱をあけてみるとシンプルなデザインのイヤリングが並んでいる。
「かわいい……!」
手に持ってみて、そして鏡を見ながら耳にあててみるとキラキラしていてとっても可愛いかった。
「ネックレス買った店で似たようなやつがあったから」
「ありがとう!桃矢君」
ネックレスと同じように、ピンクゴールドにスワロフスキーがキラキラと輝いている。
少し恥ずかしそうに桃矢君は彼方の方向を向いてしまっているけれど、その隣で月城君がにこにことしていた。
「そのネックレス、やっぱりとーやからのプレゼントだったんだね」
昨日目が覚めたときは気づかなかったんだけど、その後いっしょにご飯食べてるときに気づいて、それから気になってたんだ、と月城君は言う。ウィリアムといい、みんな本当によく見ている。
月城君はわたしが制服の下にネックレスをつけていたことにも前から気づいていたと言う。学校で偶々チェーンが見えていたときがあったらしい。昨日はじめてこのネックレスの先、そう、ペンダントトップを見て綺麗だと思ったという。これは桃矢君が選んだものだ、何か勘が働いたのかもしれない。
「さすがとーや、どっちもまなみによく似合ってるよ」
「……どーも」
恥ずかしそうにしている桃矢君をみて楽しそうにしている月城君はいつも通りだ。今突然眠ってしまうことはないだろう。
そしてなんのためらいもなしにさらりと女の子が言われて嬉しいことを言える月城君はすごい。そんなことを思いながら、わたしはそのイヤリングをさっきさくらちゃんからもらったポーチに仕舞った。
さくらちゃんからもらったポーチはすごい。元々わたしが持っていたポーチの中身を仕舞えて、そこに今日もらったイヤリング、チャックにはジェリーラビットのキーホルダーをつけて。そしてわたしが肌身離さず持っているあの鏡を仕舞ってそれでピッタリのサイズだった。
まるでこうなることを見越していたかのようなさくらちゃんお手製のポーチにわたしはすでに愛着を感じていた。
眠りから覚めたら
(まるで魔法のポーチ)