グレゴリオの懺悔


@なんでグレゴリオ?というと、解像度や精度の話です。死んだきょうだいたちの解像度はどんどん低くなって記憶の精度が下がっていって、なのに生き続けている彼らの解像度は高くなって精度も上がっていく。四人の死を持って彼らはユリウス暦を捨て、グレゴリオ暦を手に入れました

ユリウス暦とグレゴリオ暦って数字だけで見るとそう差がなく感じられるんですが、100年後、1000年後に発生する日数の誤差を考えるとかなり違うんですよね

Aユリウスに捧げた五分間のエンドロールの意味はそういうことですね。四人は五分足らずで命を奪われたので、その人生の五分間のエンドロールということです。『五分間のエンドロール』はその一部を切り取ったものでした

B以前「ある意味最強の共依存集団」ときょうだいたちを称したのですが、そうやってお互いに依存していられるのが正解です。周りから少し置いていかれても、他者にそれは依存だと言われても、彼らにとっては本当にそれが正解なんです。彼らに必要なのはユリウス暦です

Cこれは言っていい話なのかなーとも思うような裏話なんですが、タケミチがマンジローと握手してタイムリープする数日前にリオはヘマをやらかして死んでいます。「こんな裏社会で生きていたらいつ死ぬかなんて分からないけれど」と言っていたのは伏線のようなものです

Dあとがきでも触れていますが、特大のフラグとは15話「デブの川流れ」のに出ています。人質(妹)が血を流して倒れる姿を見て動揺したところを不意打ちで二人はやられています

細かいニュアンスは変わってきますがまあそういうことですね。この時からこういう終わり方にすることは決めていました

Eまだまだ本誌の展開によって変わってくることはあるんですが、第二部は選択の話にしたいです。第一部の最後の辺りで高賀リコは「自分は色々と欲張りすぎだな」と気付いたので、じゃあきょうだいたちか竜胆くんか選ばなきゃいけない時が来てもいいんじゃないの?と思っています

これまでにも散々「リコはオレを選べない」と竜胆くんは言っているんですが、実際に竜胆くんときょうだいたちが直接天秤にかけられたことは一度もないんですよね。間接的にきょうだいたちを選んだことはあっても、直接どちらかを選んでどちらかを捨てたことはありません

Fあとひとつ考えていたのは、散々似てる似てると言われていた高賀祖母と同じ死に方をどこかでリコにはさせようということでしたね。そんなところまで似なくていいんだよという意味で高賀家はずっと地獄です

Gショートパンツやらキャップやらを変装として使ったり髪を伸ばしていたりと、リコは見た目や服装からして関東事変以前以後でかなり変わっています。落ち着いたというよりかは、強さを手放した結果牙を捥がれた獣です。獣性を相変わらず秘めてはいますが、変化は大きいです

牙を捥がれて大人しくなったのに狂信者バキュームは一切変わっていません。芯の部分に強さはあるままですし、結果として美しさやカリスマ性には磨きがかかっています。余計に厄介なことになっているまでありそうですね

Hもうここまで来ると分かると思うんですが、高賀リコには誰かの命を救える力はありません。救えたとしてもどこかしらで結局救った人は死んでしまいます。もしくは救うために自分が死ぬかの二択。シンイチローくんとエマちゃんはリコに命を救われましたが、グレゴリオで巡り巡った死の運命に殺されました

タケミチもしくは竜胆くんが直接的に関わるとそうでは無いのでケースケは救えています。イザナも竜胆くんが庇ったことで死の運命自体は回避したのですが、きょうだいたちに引っ張られるようにして死んでしまいました

己の命を捧げなければ誰かの命を救えないリコですが、そもそもリコ自身はタケミチと関わったことで十月二十五日に死ぬことが「正史」になっています。だから事ある事に死にかけますし、運命の修正力に従っていつも生と死の狭間に立っている状態です

そろそろ誰かが手を引いて無理矢理にでも運命から奪い返す必要があります。とはいえ第二部で1kill確定したようなものなので、笑

I捉え方は人それぞれだとは思うんですが、私としては梵天軸の未来は四人の死をもって彼らにとって心地の良い夢は終わり、否応なしに歪みが是正され、正確な時間を刻まざるを得なくなったのでグレゴリオ暦として喩え、四人が死ぬ以前は依存の末に少し世間との乖離が出ていたのでユリウス暦と喩えています

2008年6月30日以前に彼らに適用されていたのは曖昧で自分たちに都合よく、世間から少し乖離していても幸福なユリウス暦。以後にはその幸福の核であったきょうだいたちが欠けてしまったので現実を向き合わざるを得なくなり、彼らはグレゴリオ暦を用いて生きる。よく分からんのですがそういうことです

ユリウスは比喩というか総称というか、死んだ四人でもありますし、6月30日以前に互いを思い合って生きていたきょうだいたちでもありますし、曖昧な依存と執着と愛をぶつけ合ってそれでも幸せに生きてその先の幸福な未来を信じていたリコと竜胆くんのことでもあります

ユリウスに捧げられたエンドロールは、梵天はあの後唯一神たるマイキーを失って崩壊していったのだろうなという意味でのエンドロールでもあり、それこそ四人にとっての五分間のエンドロールでもあり、うーーーん自分で言っていてよく分からなくなってきました